本当の目的
*** 本当の目的 ***
ほたるさん:まったく、随分と世話を焼かせてくれたな。
私:えっ?
私は璃胡先輩と海に飛び込んだはずでした。気がつくと、どこかの無人島のような場所でほたるさんの後ろ姿を見ていました。
ほたるさん:大学のことだよ。ここまで厄介させよって。
私:ほたるさん! ここはどこですか? 璃胡先輩や塩見先輩は……
ほたるさん:まぁ落ち着け。わしとお主のために、言論空間を展開しておいた。外は無事だ。苦屋、塩見、それから酸田も、わしが責任を取る。それより多匂どの、こちへ来よ。
私はなんだか分からないまま、ほたるさんに連れられ、無人島の奥にある別荘のような建物に入りました。ほたるさんは、お茶でもしよう、と海を臨むガラス張りの部屋に私を招き入れました。
私:あの、訊きたいことがあります。まず、魔法というのはなんなんでしょう。
ほたるさん:魔法、か。人がそれをなんと呼ぼうと知らぬが、それは些細なことだよ。みな、それを持っておる。
私:些細なことって…… 私たちにとっては大変なことなんですよ! あなたはそれを拡散しようと……
ほたるさん:あぁ、そういうふうに知らされておるのか。
私:えっ?
ほたるさん:わしの本当の目的はな、お主だよ。多匂どの。
私:私…… ですか?
ほたるさん:ほれ。
ほたるさんは、なにやら拳銃のようなものを渡してきました。
私:なっ…… なんですか、これ!! 鉄砲!?
ほたるさん:『言論の槍』、そう呼ばれておる。
私:そういえば、言論の炎とかいうのも…… なんなんですか……?! 一体!!
ほたるさん:射風語というのは分かるか?
私:えっ…… あの、人工島射風で話されてる日本語の特殊な方言で、塩見先輩と璃胡先輩が喋ってるっていう……
ほたるさん:酸田もそうだな。
私:えっ、夏蜜柑さんも? てっきり夏蜜柑さんは違う言語の話者かと……
ほたるさん:酸田のは、彼女が入学するときに一悶着あって、復元したものだな。わしが話しておるものに近い。
私:えっ……
そこで私はようやく、初めほたるさんを夏蜜柑さんと見間違えた理由に気がつきました。私がかいだ匂いは、私が感じるもう一つの匂い、言葉の匂いでした。
ほたるさん:お主の勘は素晴らしいな。では、その鉄砲でわしを撃て。
私:えっ!?
ほたるさん:魔法と言ったか? それをわしが使えるのも、お主が今ここにいるのも必然だ。わしの目的は、けりをつけることだ。言論の炎が範囲攻撃だとすれば、言論の槍とは集中砲火だ。これを実行するには、どうしてもお主の捜索技術と、言論の炎の鍵が必要だった。今、全てが揃ったのだ。
私:そんなっ…… ほたるさん……
ほたるさん:大丈夫。これが終われば、わしはお主と共に無事に外へ帰れる。
私:でも、それをしたら……
私はなにが起こるか大体見当がつきました。それをしたら、ほたるさんは言葉が話せなくなってしまいます。
ほたるさん:お主に隠し事は難しいな。花のことも分かっておるのだろう? 花は自分の言葉の力を恐れて、話さなくなっておる。大丈夫、花とわしを救ってくれ。
ほたるさんは私に鉄砲を握らせ、銃口を口で咥えました。
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