スペースオペラ(大げさ)な世界に転生した私は宇宙船の営業職
木乃末わみつ
一話完結
気が付いたらスペースオペラな世界に転生していました。
嘘です。全然スペースオペラじゃありませんでした。
何万もの宇宙艦隊が集結するなんてことはありません。
海賊団の討伐や騒動を起こした星域へのお仕置きに二桁出陣すればよい方です。
でも果てしないこの帝国支配域にいったい何隻の宇宙戦艦があるのか誰も把握していません。
私はそんな世界で宇宙船を売っているお荷物営業員です。
私は巨大建造物が好きでした。
でも自分のことながら結構好みの幅が狭いので不満も多くありました。
橋なんていくら大きくてもただの橋で、感動はありません。
超大型客船は割と好きで、なんでこんなに大きくしなくちゃいけないのーと、本当の理由は聞こえないふりで見惚れていました。
巨大仏像は好みが激しく、体調によっても好きだったり嫌いだったりします。不思議です。
地下神殿は素敵でした。あれは頭空っぽにして見ると痺れます。存在理由と巨大さの関係性が素人にはぴんとこないので異様な大きさにただ唖然となることができました。
大宇宙時代に転生したことが分かった時には、それはもう大きな期待を抱きました。
期待とは真逆に、このスペースオペラ()な世界には、それほど良い巨大建造物はありません。
無意味に大きなものを建造してやろうという心意気がないのです。
巨大ビルは単なる部屋の集合体です。
メタ大きいはずの宇宙エレベーターは視界に入っているはずなのに何も見えません。
時折何か昇ってるかなーと感じる程度です。
修学旅行で見学にいけると分かった時は舞い上がりましたが、実際見てみると意気消沈しました。
海洋船の錨の形をした巨大アンカーが半分埋まってる状態かもと、妄想マシマシで行ったのも悪かったと思います。
切っ掛けは、級友から外洋宇宙船の全長が3Km以上あると聞いたことです。
大きいです。見てみたいです。でも一般人で、しかも学生の私にそんな機会はありません。
で、短絡的に宇宙船メーカーへの就職を目指しました。
採用されるために宇宙船のことも調べました。
外洋宇宙船の容積の85%がワープ駆動体なんだそうです。
といいますか、ワープ機構を小さくする技術が無い、が正解です。
それはそうでしょう、あんな魔法のように移動する機械がコンパクトに収まる方がびっくりです。
宇宙船を大きくする、とても良い機械です。
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
「はぁー、大きいです」
仕事をさぼり、完全密閉型宇宙船ドックで外洋宇宙戦艦のオーバーホールを見学しています。
ここは私の唯一の癒し空間です。会社にひとつだけしかありません。
呆れるほどとんでもなく広い、柱ひとつない作られた空間に、これまたとんでもなく大きい宇宙船がライトに照らされ横たわっています。相乗効果で感極まります。
外洋宇宙船への愛を語り滑り込み就職を果たした私ですが、失意の連続でした。
宇宙船にシャトルで近づけば黒い湾曲した壁です。
離れて見れば、宇宙空間に浮かぶただの黒い塊です。
お分かりになりますか?
ビルの影を押しつぶすかのように浮かぶ月の大きさにしびれるような高揚を、宇宙船は少しも与えてくれなかったのです。
はるかに大きい宇宙ステーションに係留された外洋宇宙船は、遠目には近くのプラモデルと変わりありません。
揚陸型宇宙戦艦の営業企画を何度も出しましたが、即ゴミ箱行きです。悲しいです。
「また来てんのか、テリアルア」
「こんにちはジトモラフさん」
設計課のジトモラフさんです。揚陸型の企画をお高いランチと引き換えに手伝ってもらったこともあります。
「ドックが稼働する度にここまで来てちゃ仕事にならんだろう」
「まぁ、そうですね」
「おんや?どうした。ついに熱が冷めたか?」
「。。。。ねぇジトモラフさん」
「。。なんだよ」
「大きな棒でしょ?」
「棒だな」
お値段的、軍用的、ワープドライブ的に棒になるという話は何度も聞きました。
規格外品は製造のみならず維持費も跳ねあがります。円盤型なんて的でしかありません。
ワープ経路に不測の大質量物質が近づけば空間波が発生しますが、形がごちゃごちゃしていると吹っ飛びます。
「このごろ、じっと見ていると、かえって悲しくなってきます。私は何を見ているんだろうって。ドック空間が素晴らしいだけに相乗効果がマイナスに働いてきます」
「じゃぁ来るなよ」
「女心が分からない人ですね」
「しるか」
「それで、今度の企画ですが、人型なんていかがでしょう?」
昨日の夜に地球の巨大建造物をいろいろ思い出している時に、大学の友人の笠木さんが「あんた、あれは見たの?」って教えてくれた古いアニメ映画のことも思い出したのです。
都市サイズのロボットを人々が見上げている絵がとても印象に残っています。
思い出補正でかなり美化されているかもしれませんが、これだと思いました。
いっとき流行った原寸大ロボットは何故か現実的すぎて心に響きませんでしたが、この宇宙戦艦サイズのロボットを見上げるところを想像すると我慢ができません。
「ボツありきの企画だが、カノープスのランチで手を打とう」
「ぜひとも手に入れたいとおっしゃるロマンあふれるお方が何人かいるはずです」
「人型は無理だろう。企画を出したら左遷かもよ」
そうなのです。計3回の対アンドロイド生存戦争と対超人工知能生存戦争を経て、人型ロボットは人類から忌避されるようになりました。
両者とも頑なに人型兵器で攻撃してくるのです。意味がわかりません。公式の推論より陰謀論の方が説得力があります。
なので現代には人型ロボットもアンドロイドも超人工知能も表向きには存在しません。
人々も妙に合理的な考え方をします。
「前のバトルが800年前でしょう。もうそろそろ前を向いてもよろしいんじゃないでしょうか?ただのロボットですよ」
「超バカでかいロボットな」
「おもしろそうな話じゃないか」
近くで作業を見ていた開発局長が話に加わってきました。
「トクロナ局長。そうですよね、人型船に興味を持たれる方は沢山いますよね」
「いや、おらんよ。企画なんて出したらタイトルだけでボツだ」
「どうされたのですか局長。際物に目覚めましたか?」
「バカ言え、次の技術展で出す変わり種のネタがもう無くてな、もう人型船でいいんじゃないか? まったくの無意味だが」
「悪乗りですか? 実現の可能性はあるかもしれませんが、物にならないやつを技術展には出せないでしょう」
「できないんですか?」
「短躯型のワープ駆動体は製造施設がないし、作ったとしても船の回転を押さえるための、追加の疑似ワープ回転制御機構もいる。人型でワープするなら天体観測体制のしっかりしている定期航路しか無理だろう。金と実用性で現実味がない」
おっしゃっていることはよく分かりませんが、問題は少ないようです。
「では変形させましょう。そうすればお金の問題だけになります」
「変形?」
「ワープ中は棒、は無理ですけど板になって、ステーションに係留中は人型に変形して、こう存在感を現すのです」
「邪魔だな。係留橋を何本使う?って、そういう問題じゃなく、そんなものを展示したら笑いものになるだろう。そうでしょう局長」
「チラ見で素通りされるよりマシだろ。そのアイデアもらうぜ」
「はいっ、よろしくお願いします」
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
私の横で、尺度10,000分の1、変形速度40倍の自律模型が、板-人型-係留-離発を1分周期で繰り返しています。ステーションの模型もしっかり作りました。
私の目の前では、お供をお引き連れあそばされました第5皇子様が、タブレットに表示された仕様をお読みあそばせながら、時折模型の変形をお眺められておられます。うぅ、話しかけてこないで。
「おもしろい、買おう」
「買うのですか!?」
つい口走ってしまい血の気が引きましたたが、皇子様は気を悪くした様子も見せず笑って下さいました。
「なんだ、作れないのか?」
「いえ、その、お値段がですね、あの、こちらオプション無しのお見積りとなります」
営業の私が絡んだため、見積りも用意することになりました。
とっても大変でしたが作っておいてよかったです。
皇子様が眉を上げて私を見ましたが、必殺定型にっこりでやり過ごします。
そうなのです。製造費はとんでもない金額になりました。
いきなり本番機は無理だとのことで試験機も必要です。
短躯型も船本体も新しい宇宙空間製造システムの展開が必要で、こちらは古いシステムの大規模リニューアルで賄いますが、それでも信じられない金額がとんでいきます。
また板状態と人型状態で、足の補助ワープの向きが180度変わるため私にはよくわからない実働試験が必要とのことでそれも加算されました。
そのほか私がいろいろアイデアをねじ込んだのと、不透明な部分は適当に乗っけておいたので、見るも無残な見積もりとなりました。
ブースにいる社員達は焦った顔でひそひそ話をしています。
皇子様はお供の方と相談されています。
「いいだろう、買おう」
「買われるのですか!?」
またやってしまいました。ペコペコ謝ります。
「短躯型のデータが欲しいと思っていたところだ。前時代に廃れた技術だが利用価値はあると考えている。人型に変形する必要は無いと思うが、一目で私のステーション在留が分かるのが良い。人型に対する帝国民の反応を伺うことも出来よう。後は担当官を寄越すので、よろしくやってくれ」
颯爽と皇子様が去っていきました。
絶対、変形ロボットが気に入られたのだと思います。
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
ついに、巨大人型ロボット変形型外洋宇宙戦艦マクロルアの納品の日です。
あの皇子様お買い上げ宣言の後、社内全員が困惑の渦に巻き込まれました。
そしてすぐに納期が2年と定められた後は、会社の全部署から悲鳴が上がりました。
設計、製造部門のみならず、事務方、営業もスケジュールがめちゃくちゃになって阿鼻叫喚です。
帝室案件なので対外的には何とか収まりましたが、現場はしっちゃかめっちゃかになりました。
私も大変でした。謝ったり謝ったり調整して謝ったり取材を受けたり謝ったり、もう二度と御免です。
納期も本当にぎりぎりでした。
試験機の変形試験で耐えられないほどの音が響きましたので、試行錯誤の後、最終的にブリッジを含めた周辺域は船本体から完全に独立させ、変形動作時の固定を疑似重力固定に変更して本船と非接触にする方法が取られました。
これでスケジュールは押せ押せ、原価も上げ上げ、あれだけ盛った見積もりでしたのに、結果、原価割れしてしまいました。
まぁ設計ミスであり、宣伝効果と定期メンテナンス契約のおかげで私の考課は初めてプラスとなりました。
目の前、と言ってもシャトルから5km先のステーションでは、下から侵入して来たマクロルアが、ゆっくりと時間をかけて人型に変わっていきます。
皇子様のこだわり満載のブリッジでもある顔も出てきました。
変形の最終段階では、最外殻パネルに亀裂が入り、見た目だけ皇子様こだわりの形状に変えていきます。
もちろんカラーリングも変化します。
このあたりのオプションは自社では技術的、納期的に無理でしたので、社外発注となりました。
今、上中下3本の係留橋の係留機に完全に固定され、シャトルに拍手が起こりました。
係留橋の上下間隔は厳密な規定が無いそうで、工夫に頭を痛めたそうですが無事機能したようです。
マクロルアが映っていた大型モニターが、皇子様に切り替わりました。
私、だけでなくシャトルにいる拍手を終えた社員全員が椅子にぐったりと座りこみ、誰も皇子様のお話しを真面に聴いておりません。
もう、3年ほどは働きたくありません。
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
突然、招集がかかりました。
マクロルアから皇子様の通信が届いたとのことです。
いつもの宇宙船ドックから、本社がある星の軌道ステーションに到着したときには、マクロルアも係留を終えていましたが、私の乗っていたシャトルの発着場からは、距離も角度も悪く小さく見下ろすしかなく残念でなりません。
仕方なく、指定されたホールへと向かいました。
「トクロナ局長 、ジトモラフさん、みなさんこんにちは」
「よぉ」
「相変わらず呑気そうだな、おまえは」
「みなさんピリピリしていらっしゃますね。どうして私まで呼ばれたのでしょう?」
「おまえさんが元凶だからだろう。まったく他人事みたいな顔をして」
「私はただの営業員ですよ。何かトラブルでしょうか?」
一斉にみんなの社用デバイスが鳴りました。
データが送られてきたようです。閲覧に秘密保持契約?個人でも締結するのでしょうか?
「はぁ?」「これは無いだろう、計測ミスか不具合しか考えられん」「うちには関係ないな」
「どのような内容ですか?出来れば簡単に教えてください」
「まったく」
内容を聞く前に、ドアが開き皇子様がお供と社のお偉いさんを引き連れご登場されました。
簡単なご挨拶の後、本題に入りました。
「で、見たな。こちらでも検証は行なったが事実だ。明日の正午の出航までに、原因究明のための要員を搭乗させておくように。そこの営業員、君だ、そう君だ、君も搭乗したまえ」
何故かご指名を受けた私は自分を指さしたままコクコク頷くことしかできません。
「殿下、よろしいですか?
ありがとうございます。人型のままのワープはともかく、この腕を上げた状態でのワープは想定されておりません。疑似ワープ回転制御機構が相対的にこの位置にある時の効率化の原因を探るということでよろしいですか?」
「概ねそうだ。理論的な究明は無理だろう。はるか昔のアンドロイドと超人工知能が作り出したワープを理解できているものはいない。何が原因かではなく、どこが原因かを根本的に明らかにしてほしい。船の改造も許す」
「そもそも、何故手を上げてワープできる」
製造部長が工場長に問います。
「それは、足と同じパーツを使用していますので、真逆になっても対応可能ではあります」
「システムは足と同じですので、特に腕だけをロックはしておりません」
ジトモラフさんも答えました。
なるほど、人型で手を伸ばしてワープしたらよく飛んだということでしょうか? なにそれ、見てみたいです。見た目はよく飛びそうですね。
前と同じ担当官を残して、皇子様たちがご退場されました。
残った者たちで打合せですが、搭乗するメンバーは話し合うこともなくほぼ決まっていますので、後はどの資材をどこから持ち込むかの調整ばかりです。
「そんなによく飛んだのですか?」
「データを信じるなら、通常型より短躯型の方が総エネルギー消費量が低いことになる。回転制御の疑似ワープで使う分も含めてだ。あり得んだろ」
「お得なのは良いことですね。波に乗ったという感じでしょうか?」
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
「で、何か気付いたことがあれば言ってみろ」
再現性データを得るためのワープ航行が終わり、みなさんデータを見て唸っておられます。
各部位に測定器を接続し、ブリッジでモニタできるようにしましたので全員ここに集合してますが、私だけやることがなくて船外カメラで捉えた船の人型外観をモニタで眺めていたら皇子様に呼ばれました。
何度もお会いしていますので、もうそれほど緊張はいたしません。
「えぇーとですね。気が付いたことではないのですが、試して欲しいことがありましてですね、でも全然関係ないかもしれなくて、確実に無駄になりそうなので、ご提案するのも躊躇してしまうような、それで」
「全員集まれ」
皇子様が集合をかけ、私に話すように促します。
どうしましょう? まぁ、みなさんの目をみれば、私がいくらおかしなことを言っても私の評価は今以上下がらないでしょうし、いいですか。
「えっとですね、ワープ時の人型の形状をほんの少し変えてほしいのです。
まず、指はまっすぐ伸ばして揃えて、ブリッジは顔をぐっと起こしてください。足首もピンと伸ばしてください?」
「マジで言ってんのか?」
ジトモラフさんが皇子様の御前にもかかわらず、呆れた声を上げます。
「諸君らの様子を見ていれば、これが不可思議な現象であることは分かる。それであれば何事も行なう価値があろう。ほかはよいのか?」
皇子様が、何故か嬉しそうな雰囲気で肯定してくださいました。
「もし出来るのでしたら、外殻可動パネルの設定を変えて、背中が少し反った感じに見えるようにお願いします」
「まぁ頭を冷やすのによいだろう。手早くやっちまうぞ」
トクロナ局長の一声でみなさん動き出します。
その見た目の方が速く飛ぶかなー?程度の提案なのですが、変わりなくても叱られませんよね。
ワープ航行が終わり、みなさんデータを見てとても唸っておられます。
ちらちら私を見てきますが、ブンブン首を振ります。私のせいじゃありません。
「なんとか言ってみろよ」
ジトモラフさんが切れました。
「元々ワープなんて魔法みたいなものですから、ポーズで効果が変わってもおかしくはないかと」
「んなわけあるか」
「疑似ワープ回転制御はエネルギー消費がほぼフラットです。回転を戻すフィードバックが行なわれているわけではなく、ワープ用の見えないガイドレールのようなものを形成しているのではと考えられています。
であれば、よりワープ効率の良いレールが作られたと考えれば、説明にはなるかと思います。言っていて虚しくなりますが」
「まあいい、理屈は分からなくとも、エネルギー消費がこれだけ抑えられるのは非常に喜ばしいことだ。ともかく今はデータ取りを進めてくれ。
おい、ほかのポーズも提案してみろ」
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
皇子様の招集試験から1年半後、マクロルア2世が就役します。
人型外洋宇宙戦艦マクロルア2世。変形機構はありません、最初から巨大ロボット型です。いえ、巨大ロボットです。
招集試験でマクロルアのデータを取った後、マクロルアの製造試験機を引っ張り出してテストを行ないました。
マクロルア固有の現象ではないことが確認できると、今度は試験機をロボット型から板に変形できないように変形装置を取り外し、手足を溶接で固めてからワープさせましたが、同じ不可思議現象が起こりました。
これにより人型ワープ船は最重要技術政策となり、半年後、帝国主導の共同事業体が結成されました。
トップは皇子様です。招集試験のメンバーは全員こちらに出向となりました。
私は皇子様の秘書という肩書をいただきました。そう秘書です、秘書らしいお仕事はまったく行なっておりませんが。
帝国中のワープ船メーカーにも招集試験のデータが公開され、半信半疑で集まった技術者のみなさんからは、私は今でも少し距離を置かれています。
わが社には十二分な補償が行なわれました。
私にも社からアイデア料として何年も働かなくてもよいほどのボーナスを支給されましたが、会社から逃げることはできませんでした。
まぁよいのではないでしょうか。あちこちの星域の巨大建造物を観光するには全然不足ですし。
アイデアが物になれば、相応の報酬をいただける契約を結びましたので、お仕事に励もうと思います。
実は、もう既に3回ほどビッグボーナスをいただきました。
宇宙戦艦の主兵器はパルスレーザーです。船体からニョキッと飛び出してクルクル回りパスッと撃ちます。
レーザー増幅にワープ技術を流用していると聞きましたので、試しにマクロルアの右手上腕に小型のものを並べポーズをつけて撃ってもらったところ、とても品質が良くなり、いろいろ応用実験が進んでいます。やはり手、腕、額、肩での効果が大きいようです。
また、背中に形だけの意味のないウイングを取り付けてもらい飛翔ポーズでワープしてもらいましたが特に効果は現れませんでした。しかし非正規航路で大質量物質の影響を調べたところ、空間波による破壊が起きず、船外機器の格納場所として非常に期待されています。
それと、航路に周期的に近づいてくる小天体の軌道を変えるための物理爆弾、こちらもワープ技術利用のとても大きな爆弾ですが、マクロルア製造試験機を大改造して人型のあらゆる場所からボーズを付けながら小型爆弾を一斉掃射したところ常識を超えた爆発力が生まれました。
もしかして、こういうのが異世界知識チートというものでしょうか?
「ああいやだ、こんな検証はやりたくない。きっと効果が出るんだろう。そして無力感に襲われるんだ」
ジトモラフさんがぼやいています。
「私の提案は必ずしも効果が出るわけではありませんよ」
「そうですよ、ジトモラフ先輩。今回は完全な余興ですよ、楽しみましょう」
「格段に金のかかった余興だな。まぁ結果が出たとしても同型船を作るわけにはいくまい。やって終わりだな」
「そもそもこの共同事業体の目的は、人型外洋船の最適な形状を実験で叩き出すことだったよな。俺たちはいつからロボットの振付師になったんだ? ファンタジーな世界に生きてるんじゃないんだよ!」
「よし、そろそろいいか? マクロルア2世発進せよ」
皇子様が苦笑いの表情をされながら号令を掛けました。
惑星改造用の超大型重機メーカーを招致し、関節がスムーズに動くように設計製造されたマクロルア2世が助走を始めました。
もちろん地面などありませんので、宇宙空間での疑似的な助走の動きです。
「まもなくワープへ移行、ダイビング動作開始します」
ワープ空間へ飛び込む動作で移行し、最適な飛翔ポーズを取ります。
ですが、すぐにGが掛かって通常空間に戻りました。こんなことは初めてです。
「セイフティが起動。オーバーラン予測が発生しました。緊急停止です」
ジトモラフさんは頭を抱えて突っ伏しました。
トクロナ局長は腕を組んで天井を見ています。
皇子様が声を上げてお笑いになっておられます。
??
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
マクロルア2世就役から3年後、3世4世同時就役から2年後に、私に再び招集がかかりました。
特別緊急招集通知です。
現在、私は会社を円満に退職し、あちこちの星系に旅行三昧の日々です。
今日は、この世界ではめったに見ないスペースコロニーの見学に来ています。
シャトル先端の270°展望室を貸し切り、侵入したゲートの大きさに感動していたところです。
特別緊急招集ですので、問答無用でシャトルに方向転換の命令を出してステーションに向かわせる必要があります。
いえ、既にUターンが始まりました。
いったい何事でしょうか? ロボット戦艦の反乱でも起きたのでしょうか?
ステーションに到着して1時間もしないうちに、迎えの最新人型外洋宇宙戦艦が到着しました。
大きくて素敵です。反乱ではないようでした。
ステーションの人に聞いたところでは、この船は、あちこちの交通網を停止してまで最優先でやって来たそうです。
そんな緊急事態にも関わらず、ビデオ通話では、とにかく来いとしか言われません。
ドキドキしてきました。
オペレーションセンターに案内されて入場すると、視線が突き刺さりました。
「よく来た、ここへ」
皇子様のところへ歩き出します。
見知ったお顔も多いです。みなさんとても真剣な顔です。
あのジトモラフさんでさえ別人のように険しい表情をされています。
正面の巨大モニタには、大量の小さな何かが動いている様子が映っています。
「拡大を」
徐々にズームアップしていき、鱗を持ったエイのような機械的生物が3匹?宇宙空間を泳いでる状態が見える範囲で止まりました。
これは大きいです。巨大ロボットエイです。モニタで見ても巨大さが分かります。この独特な動きのせいでしょうか? フォルムのせいでしょうか? ぜひとも生で見たいです。
「やつらはここ帝都に向かってきている」
「あれはいったい何でしょうか?」
皇子様がジトモラフさんに目をやりました。
「暴走した自律兵器という見立てだ。
2つほど星系都市を滅ぼした後、亜光速でこちらに向かっている。たぶん大量の通信をたどったんだろう。
何物かはわからないが、とにかく敵だ。
現在の有効な武器は全身ミサイルポッド仕様の人型戦艦からのミサイル斉射のみ。
ポージングレーザーは部位破壊のみだが足止めにはなる」
「人が作った兵器なのでしょうか?」
ジトモラフさんが映像を切り替え説明を続けます。
「人類ではないと思う。
今回の観測データを元に過去のデータを洗い出したところ、613年前にこのルート、921年前にこのあたり通過していたと予想された。そこを通る理由がない。
また飛翔生物型だからアンドロイドどもとも関係がないと思う。
外から来たやつだろう」
「君のおかげで希望は残された。
全星系の総力を上げてミサイル戦艦を製造、改修中だ。
だがシミュレーションでは3か月後に12%の生き残りが帝都に到達する。
足止めに有効な武器を思いつかないか?」
皇子様の不安そうな顔を初めて見ました。急にそんなことを尋ねられても困ります。
「あの天体破壊用の大型爆弾は効かないのでしょうか?」
「機動性がない。遠距離撃破されて終わりだ」
「逃げるわけにはいかないのですか?」
「この帝国首都星は惑星ではなく人工の星だ。対アンドロイド、超人工知能対策に何重にも防壁処理された情報が集約され、そのまま運用している。ここが落ちれば帝国は崩壊する」
ようやく私にも恐怖が舞い降りてきました。
何か考えなくてはなりません。思い出せる限りのロボット改造案はすべて出したはずです。
眉間にしわが寄ってしまいます。
「今ここで、すぐに案を出してくれとは言っていない。落ち着いて考えてくれ。たとえ結果が出なくても良い。どんな突拍子もないことでも試してみる。
なに、この件に関しては私は皇帝陛下に次ぐ権限を持っている。予算は無尽蔵だ」
皇子様が笑ってくださいます。
「ここへ座れ、ここで一番良い椅子だ。
君、飲み物と何か、甘いものでもたのむ」
皇子様の席を譲られました。確かにこれまで座ったことのない、やたらとしっくりくる椅子です。
皇子様のジェスチャーで皆が視線を逸らしてくれました。
落ち着いて考えましょう。前世の記憶を思い浮かべましょう。そこに希望があると思って。
「第114次攻撃シーケンスを開始します」
正面モニタには、これから攻撃に移ろうとする人型外洋宇宙戦艦が映っています。すごい数です。
「こんなにたくさん製造されていたのですか?」
「知らなかったのか? 既存の戦艦の改修率は50%以上だ。新造戦艦は人型以外は造られていない。君の功績ではないか。
モニタのコントロールを彼女に。
好きに見たまえ」
お代わりした紅茶を飲みながら、ありがたく映像を調整します。
完全に均一ではなく少しずつ個性があるようです。
レーザーは肩と上腕に設置されている艦が多いです。
全戦艦が攻撃編成に移りました。5艦一組で動くようです。
うん、何か思い出しました。何でしょう?
あら、あの組は統一カラーリングされていますね。
そうです!
「殿下! 全艦にカラーリング塗装はできますか?」
「何か思いついたのか? よい、何でもやってやる。攻撃シーケンス停止」
「第114次攻撃シーケンスを停止します」
思わず声を上げてしまいましたが、本当に大丈夫でしょうか? 何の効果も出ないかもしれません。
「1度目で成果を出そうとするな。何も起こらなくても構わん。言ってみろ」
「攻撃は5艦一組で行なうのでしょうか?」
「今は必ずその編成だ」
「では、その5艦を赤、青、緑、黄色、桃色に塗ってください。リーダーの艦は必ず赤です。女性艦長の戦艦は桃色です」
誰も笑いません。真剣に聞いています。
「それだけでいいのか?」
「それと、チームの名前を決めてください。被らないように。あとチーム固有のポーズも必要です」
「ポーズとはどのようなものだ?」
私は絵が下手ですので、棒人間で5人の組ポーズをモニタにいくつか描き入れました。
「ポーズはチームのみなさんで決めてもらってください。
そしていよいよ攻撃という時にチーム名を叫びながらポーズを、宇宙では叫べませんね、どうしましょう?」
「叫ぶのか? チーム宣言だな。全方位通信でよかろう。混線してしまうか?」
「順次発進のシーケンスを組みます」
「よし、全艦の幹部を招集、塗装に関しては直ぐにチームを立ち上げる」
「あの、あのっ、こんな変な方法を艦のみなさんが真面に応じて下さるのでしょうか?」
幾人から笑い声がもれました
「人型戦艦を運用したものは、全員もれなく不思議ワールドに迷い込んだ気分になる。
特に君からの提案だと聞けば大真面目でやってくれるだろうさ」
そうなのですか? 私ってそんなに有名になっていたのでしょうか?
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
帝都、首都星は守られました。
カラーチームの攻撃力が異常な倍率で増すことが分かると、みなさんノリノリで名乗りのやり方を工夫されたりチーム攻撃の型を探ったり、最高値は6倍強の攻撃力が発生したと推定されています。
十分に足止めが適ったあと、登場したミサイル戦艦には、発射時に手足を広げ気張るような動作をプログラムさせたところ失弾が大きく減りました。
今、私は宮殿で皇帝陛下に謁見を賜り、直接お声がけをいただいているところです。
すごく褒められているのですが、緊張で耳を素通りしていきます。
「。。。帝国そのものを守りきった、そなたの祝福された知恵に対し、思いのままの報酬を取らす。皆も依存はあるまい」
えっ、何でも思いのままですか? 何をお願いしても良いのでしょうか?
急に皇帝陛下のお言葉が鮮明になり、頭が回り始めます。
不敬ながら皇帝陛下を見つめてしまいましたが、頷いていだだきました。
隣でお立ちになっている皇子殿下に目を移すと、何ともいえない困ったお顔をされていましたが、そのままの表情で2度頷かれました。
「そっ、それでは、宇宙エレベータを1基、あの、特殊仕様の宇宙エレベータを1基 、設置いただけますでしょうか? 」
「ほう、宇宙エレベータとな? 変わった申し出だな。そなたの定住星には1基もないのか?」
「おい、その特殊仕様を詳しく説明しろ」
横から皇子様のチェックが入りました。
こうなれば引けません。この宇宙エレベータがいかに素晴らしいものか、ご説明いたしましょう。
「まず、地上に置かれたガラス張りのカーゴに乗り込むわけです。それでそのカーゴを大きなロボットが両手でつかみ、ゆっくり立ち上がりながら両手をゆーっくり上げて、カーゴを静止軌道まで持ち上げてくれるわけです。想像してみてください。天をつらぬく超巨大ロボットをあまねく眺めながら、手で運んでもらえるというその一体感。まさしく天にも昇る気持ちになること間違いございません。ぜひ、この感動をみなさまにもお分けしたい。。。」
スペースオペラ(大げさ)な世界に転生した私は宇宙船の営業職 木乃末わみつ @wamitsu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます