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その日は、曇っていたり晴れたりと、安定しない天気だった。

報告書を出した後、予約した新幹線に乗って、山奥の目的地に向かった。

今回の依頼、行方不明の遺体を探すというものの為である。



『ざっくりしたことしかわからないが、まず狙うのは海の見える範囲だな。

それから……これは、海外か? 英語の文字が浮かんでくる』

『この辺りにある山のどれかなんだが』

と事前に感じた事を纏めて、

海の近くの山、火山、などから細かい情報を組み立て予測してマップ化して……

それで見当を付けた地域の山を進む。


今は、レンタルした車の中。

よくわからないラジオを聴きながら、俺はハンドルを握っている。


「なぁ、てか、自転車でもいいんじゃないか?」

「うちを利用する人達、異様に自転車嫌いなのよ。だからどこでも車」

「はぁ?」

「俺たちにやらせるか、自転車か、だな」

「意味わかんねぇよ」

まともに会話する気が無いのか、色がトランクのある後ろを横目に笑う。

「いざとなったら、チェーンソーで全部終わらせるって手もある」

「何する気だよ」



木々が生い茂るなかを、ギリギリまで車で進む。

だんだん上りに向かっていたところだった。


「――出て」

急に言う橋引。言われるままに車を止め、ドアを勢いよく開けた。



「どうしたんだよ」

「誰かついて来てる」

「巻いてるはずなのに。いつバレたんだ?」



俺達が何処かに行くとき、特に仕事に関して。

何者かが後をついてくるというのは、実によくある事だった。

超能力者が証明できない事である以上、それを『ビジネスチャンス』として仕事を掠めとるために張り付いている、という考えも出来る。



みんなで壁際に隠れて待機していると、

後を付けていた人物が車の傍に歩み寄った。

目の前に居るのは見かけ、4,50代くらいのサラリーマン風の男性。

さっきから此方を窺うようについて来ている。




山の上から見下ろす形で場所を取っている事もあり、俺達の車が止まると、彼らも止まらざるを得なかった。


 











「色様」

後ろから声。

目の前の男性の更に後ろからも白い車が停車し、同じようなスーツの男たちが寄ってきた。

「やっと見つけた。探しましたよ」

同じような目。髪型。張り付いた笑顔。


「誰にも言わずに出て行くから、心配したんです。どうして危険な場所に行くんですか」

そして腰の低いながら、どこか見下しているような声。

保護者が小さい子供を諭すようでもある。




「お前たちは、未来を否定する事しか能がないからだ」

色は、強い意思を感じる声で反論した。


「はあ?」


「何も始まってない。それに、安全な場所なんか、今更無いだろ。

何基準で、どうして危険で、何処の何が安全なのか明確に言える?」


「ですからそれは」

拒絶されるとは思って居なかったように狼狽える声。


「そもそもそっちが危険なら同じだ。安全な場所をそっちが利用して

巻きこむって事と、何も変わらない。ずっと迷惑してきたからな」








伸ばされる腕。色は反射的に身体を逸らす。

「だから俺は戻らない!そんな奴らは何も信用できない」


「色……」

もしもの為にチェーンソーを持ってきた方がいいだろうか。


彼はまた一歩歩み寄った。

「まぁ、話を聞いてください。あなたがたが、何を調べているかは、だいたい見当がついている。ですから一緒にですね」



「いやだって言ってるだろ」

「色様……!」

白く長い腕が伸ばされた。

振り払おうとしたが、突き放す前に手首を握られる。

まるで拘束のようだった。この空間から逃れたいのに、どんなに振り回しても彼はその手を離そうとしない。

「い……っ!」


手首の皮膚が攣ったような痛みを訴えた瞬間だった。

目の前の男の腕から、濃い青い光が放たれる。

パチッと弾けるような音がして、携帯端末が一斉に鳴り出した。



「え? 着信?」

男が思わず、電話を探して腕を離す。

程なくして、怪訝な顔で「一体誰が……」と言って通話を追える。



その瞬間。さっと橋引が彼の足を払った。

転んだ彼の上に、かいせが乗って、手のひらを背中に当てる。

「俺達にも教えてよ、おにいさん?」



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