まるで名画のようなこの世界

ファシャープ

第1話

16、7時頃だ。


空に浮かぶまだら雲は、下がオレンジからピンクにかけて、上は深く灰に近い青になっていた。


背景は地平線から天にかけて、淡いサーモンピンクから薄明るいブルーに変わっていた。


下を覗けばもう夜の入り口が私を誘っている。


街頭の明かりがポツポツと光り出したと思えば、橋の上で自転車に乗るなんでもない通行人が、何か名画のような登場人物に感じられる。


台車の車輪を引く音が、そこの市場に広がっている。


外の匂いは、冷たく澄んでいて、なぜだか過去と未来と、そして今を生きる自分が共通する匂いをしていて、私はその匂いが大好きだった。


手元に置かれた眼鏡、油彩画の画材、電子キーボード。


カーテンの裾から差し込む、冷たくも緩い光に照らされ、それぞれは輝いていた。


気付けばもう、雲を照らす光は消えていて、閑散とした機械の音が耳に入ってくる。


騒然となる心の中は、まだ、あの景色を求めているようだった。


私たちは、手の届かないあの空に、思いを預けるのだろうか。

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まるで名画のようなこの世界 ファシャープ @Fasharp2

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