配送ナビが異世界ルート案内してきたので納期厳守で行ったら、死神として伝説になっていた

@DarthTail

第1話 配送ナビが壊れた日

借金、800万円。


妹の学費、年間120万円。


俺・恵比寿善(エビス・ゼン)は、深夜の配送ドライバーとして働いている。

28歳。愛媛県松山市在住。


6年前、父親が経営していた運送会社が倒産した。その直後、父は姿を消した。

残されたのは、会社の負債800万円と、路頭に迷う家族だった。

母は必死に働いたが、3年前に過労で倒れ、そのまま帰ってこなかった。


妹の澪(みお)は今、国立大学の薬学部2年生だ。学費は年間120万円。

生活費を入れれば、年間180万円は必要になる。


母が最期に言った言葉を、俺は忘れない。


『澪の夢を、守ってあげて』


だから俺は、働く。


配送の仕事なら、学歴も資格もいらない。

体力と時間さえあれば、金になる。


深夜配送、早朝配送、休日配送。


人が嫌がる仕事ほど、報酬は高い。


月の手取りは25万円。


借金の返済に月8万円。

妹への仕送りが月10万円。

残りで自分の生活費を賄う。


あと8年。


8年働けば、借金は完済できる。


あと3年。


3年働けば、妹は薬剤師になれる。


それまで、俺は走り続ける。


納期を守り、荷物を届け、金を稼ぐ。


ただ、それだけだ。



***



午前3時。


スマートフォンのアラームが鳴る。


俺は布団から這い出し、洗面所へ向かう。

冷水で顔を洗う。

鏡に映った自分の顔を見る。


黒髪、短髪、寝癖。目の下に濃いクマ。

そして——口角が上がった、笑顔のような顔。


これが俺の「えびす顔」だ。


生まれつき、口角が上がっている。

笑っていなくても、笑っているように見える。

名字が恵比寿だから、子供の頃からそう呼ばれてきた。


便利なこともある。

接客業なら、いつでも笑顔に見える。


でも不便なこともある。真面目な話をしても、ヘラヘラしていると思われる。

怒られている時も、反省していないと誤解される。


母の葬式の時も、親戚に言われた。


『善は、お母さんが死んでも笑ってるのかい?』


違う。泣いているんだ。

ただ、顔がこうなだけだ。


でも、説明するのも面倒だから、黙っていた。


歯を磨き、作業服に着替える。

紺色の作業服は、もう何年も着ている。

袖口は擦り切れ、膝には穴が開いている。


安全靴を履く。紐を結ぶ。


スマートフォンを手に取る。


画面には、配送アプリが起動している。


『おはようございます。

本日の配送予定は、12件です』


AI音声が流れる。

このアプリのAIナビ、通称「ナビ子」が、俺の相棒だ。


「おう」


短く返事をして、俺は玄関を出る。


外はまだ暗い。

街灯の明かりだけが、アパートの駐車場を照らしている。


軽トラックに乗り込む。

エンジンをかける。


『本日の最初の配送先は、松山市内の24時間営業スーパーです。ルートを表示します』


「頼む」


ナビ子の指示通りに、俺は車を走らせる。



***



午前3時半。


最初の配送を終える。


24時間営業のスーパーに、生鮮食品を届ける。

店員が受け取り、サインをもらう。


次の配送先へ向かう。


ナビ子が、淡々とルートを案内する。


『次の配送先は、松山市郊外のコンビニです。国道33号線を直進してください』


「了解」


俺は国道33号線に入る。


深夜の国道は、ほとんど車が走っていない。

対向車のライトが、時折視界を横切るだけだ。


10分ほど走ると、古いトンネルが見えてくる。


このトンネルは、昭和時代に作られたもので、今ではほとんど使われていない。

新しいバイパスができたからだ。


でも、配送ルートとしては、このトンネルを通る方が早い。


俺は、いつも通りこのトンネルに入る。


その瞬間——


『警告。ルート計算中。警告。ルート計算中』


ナビ子の声が、突然乱れる。


「おい、どうした?」


『エラー。エラー。システム再起動中——』


スマートフォンの画面が、激しく点滅する。


「故障か?」


俺は、トンネルを抜けた。


その瞬間、視界が真っ白になった。



***



気がつくと、世界が変わっていた。


アスファルトの道路が、土の道になっていた。


街灯が消え、月明かりだけが、周囲を照らしている。


「……は?」


俺は、車を停める。


サイドブレーキを引く。

エンジンを切る。


車から降りる。


周囲を見回す。


森だ。


見たことのない、深い森だ。


木々が、月明かりに照らされて、黒い影を作っている。


「……どこだ、ここ」


俺は、スマートフォンを確認する。


画面には、見慣れない地図が表示されている。


『現在地:エルフォード王国領、辺境の森』


「エルフォード……王国?」


そんな国、聞いたことがない。


『申し訳ございません。システムエラーにより、ルートが変更されました』


ナビ子の声が、普段通りのトーンで流れる。


「ルートが変更って……ここ、どこだよ」


『次の配送先は、エルフの森です。直進してください』


「エルフ?」


『はい。エルフの森です。配送先:エルフ族の村。

荷物:イチゴジャム12個、蜂蜜6個、調味料セット2個』


「……マジか」


俺は、軽トラックの荷台を確認する。


確かに、イチゴジャムと蜂蜜が積んである。


「いや、待て。エルフって、ファンタジーの?」


『はい。エルフ族です。現在、この世界では絶滅危惧種に指定されています』


「絶滅危惧種って、お前……」


俺は、深呼吸する。


落ち着け。まず、状況を整理しよう。



1. 俺は、トンネルを抜けた。

2. 気がついたら、森の中にいた。

3. ナビ子は、ここを「エルフォード王国」と言っている。

4. 次の配送先は、「エルフの森」らしい。



「……夢か?」


頬をつねる。


痛い。


「夢じゃ、ないのか」


『夢ではありません。次の配送先まで、あと12キロです。納期は、本日午前6時です』


「納期……」


俺は、スマートフォンの時刻を確認する。


午前4時15分。


あと1時間45分。


「……行くしかないのか」


『はい。納期厳守でお願いします』


「わかった」


俺は、軽トラックに乗り込む。


エンジンをかける——


その瞬間、車体が激しく揺れた。


「うおっ!?」


車が、変形している。


軽トラックのタイヤが変形し、車輪に巨大な鎌が装着されていく。


左右の車輪から、それぞれ3枚ずつの刃が伸びる。


車体が宙に浮き、車輪が黒い光を放つ。


「なんだこれ!?」


そして——車の前方に、黒い霧が現れた。


霧が形を作る。


それは、馬だった。


漆黒の、大型の馬。


金色の目が、俺を見つめている。


馬の蹄から、黒い霧が湧き出ている。


「……馬?」


『我が名は、ナイトメア』


馬が、喋った。


「——は?」


『我は、魔界の災厄の化身。かつて、千の軍勢を薙ぎ払い、百の都市を灰燼に帰した存在である』


低く、重い声。


まるで、地の底から響くような声だ。


「……喋る馬」


『馬だと? 貴様、我を馬などと——』


「まあ、馬だな」


『——ッ!?』


ナイトメアと名乗る馬が、怒りで震えている。


「で、お前は何なんだ?」


『我は、ナイトメア!災厄の化身!魔界の——』


「わかった、わかった。ポチでいいか」


『ポチだとォォォッ!?』


ナイトメアが、激しく首を振る。


「だって、長いし。ポチの方が呼びやすい」


『貴様ァァァ! 我を侮辱する気かァァァ!』


「侮辱してない。ただ、短い名前の方が便利だろ」


『便利とか、そういう問題では——』


「ポチ」


『——ッ!』


ナイトメアが、ピタリと動きを止める。


「……なんだ?」


『……貴様、何者だ』


「恵比寿善。配送ドライバー」


『配送……ドライバー?』


「そう。で、お前は俺の車を引っ張るのか?」


『……引っ張る?』


「この車。お前が引くんだろ?」


俺は、変形した軽トラック——鎌のような刃物がついた馬車を指差す。


ナイトメアは、しばらく黙っていた。


そして、小さく言った。


『……そのようだ』


「じゃあ、頼む。納期があるんで」


『納期?』


「午前6時まで。あと1時間半しかない」


『……わかった』


ナイトメアは、馬車の前に立つ。


見えない繋ぎ紐が、馬車とナイトメアを結ぶ。


「じゃあ、出発な」


俺は、馬車の御者台に座る。


ナビ子の声が流れる。


『それでは、出発します。直進してください』


「おう」


ナイトメアが、走り出す。


速い。


軽トラックの時より、ずっと速いような気がした。


森の中を、まるで風のように駆け抜けていく。


「速いな、ポチ」


『ポチと呼ぶなァァァ!』


怒鳴りながらも、ナイトメアは走り続ける。


俺は、馬車の揺れに身を任せながら、ふと思った。


——これ、夢じゃないのか。


でも、夢にしては、リアルすぎる。


風の冷たさ、馬車の揺れ、ナイトメアの声。


全部、本物だ。


「……まあ、いいか」


納期がある。


考えるのは、後だ。



***



午前5時。


俺たちは、森の奥深くに到着した。


『目的地に到着しました。配送先:エルフの村』


ナビ子の声が流れる。


ナイトメアが、止まる。


俺は、馬車から降りる。


目の前には、小さな村があった。


木造の家が、10軒ほど並んでいる。


村の入口には、木製の門があり、そこに——


人影があった。


いや、人じゃない。


耳が、長い。


「……エルフ?」


『はい。エルフ族です』


『翻訳機能を起動しました』


ナビ子の声が流れる。


「翻訳?」


『はい。異世界の言語を自動翻訳します。会話に支障はありません』


「便利だな」


エルフは、俺たちを見て、固まっている。


若い女性だ。金色の髪、青い瞳、長い耳。


ファンタジー小説で見たような、典型的なエルフだ。


「あの、すみません。配送に来ました」


俺は、手を振る。


エルフは、さらに固まる。


「……恵比寿運送です。イチゴジャムと蜂蜜を届けに——」


『——死神!?』


エルフが、叫んだ。


「え?」


『死神が来た! 村長! 死神が来ました!』


エルフは、村の奥へ走っていく。


「死神?」


俺は、首を傾げる。


『主人よ、お前は気づいていないのか?』


ナイトメアが、呆れたように言う。


「何を?」


『お前の姿を見ろ。鎌を持った馬車、黒い馬、そして——』


「そして?」


『お前の顔だ』


「俺の顔?」


『ああ。お前は、常に笑っている。まるで、死を楽しんでいるかのように』


「……ああ」


俺は、自分の顔を触る。


えびす顔。


常に口角が上がった、笑顔のような顔。


これが、死神に見えるのか。


「なるほどな」


『気づいたか』


「まあ、誤解だな」


俺は、馬車から荷物を降ろす。


イチゴジャムの段ボール箱。


重い。12個入りだから、結構な重さだ。


「とりあえず、配達しないと」


俺は、村の入口に荷物を置く。


その時——


『待て!』


声がした。


村の奥から、老人が歩いてくる。


長い白髭、杖をついている。


「私が、この村の村長だ。死神よ、何の用だ?」


「死神じゃないです。配送業者です」


『配送……業者?』


「はい。恵比寿運送です。イチゴジャムと蜂蜜を届けに来ました」


俺は、段ボール箱を指差す。


村長は、箱を見つめる。


「……これが、伝説の『紅の秘薬』か」


「紅の秘薬?」


『ああ。この村では、100年前から伝わる伝説がある。死神が、紅の秘薬を運んでくると』


「いや、これただのイチゴジャムですけど」


『イチゴ……ジャム?』


「そうです。スーパーで売ってる、普通のジャム」


村長は、箱を開ける。


中から、イチゴジャムの瓶を取り出す。


「……これが」


村長の手が、震えている。


「村長?」


『この香り……間違いない。これは、伝説の紅の秘薬だ』


「だから、ただのジャムですって」


でも、村長は聞いていない。


『皆!紅の秘薬が届いたぞ!』


村長の声に、村人たちが集まってくる。


エルフたちが、ジャムの瓶を見つめている。


「……マジか」


俺は、ため息をつく。


『主人よ、この世界では、お前の持ってきたものは全て貴重品らしいぞ』


ナイトメアが、囁く。


「貴重品って、100円のジャムが?」


『ああ。この世界には、こういったものは存在しない』


「……マジかよ」



***



30分後。


俺は、村長から配送完了のサインをもらった。


「ありがとう、死神殿」


「だから、死神じゃないです」


『いや、お前は死神だ。伝説の通りだ』


「伝説って……」


もう、説明するのも面倒だ。


「まあ、いいです。じゃあ、俺はこれで」


俺は、馬車に戻る。


その時——


村の外から、声が聞こえた。


『おい! 誰かいるのか!?』


「ん?」


俺は、声のする方を見る。


森の中から、人影が現れる。


男だ。


剣を持っている。


鎧を着ている。


「あの、誰ですか?」


『助けてくれ! 盗賊に追われている!』


「盗賊?」


その瞬間——


森の中から、複数の人影が飛び出してきた。


10人以上。


全員、武器を持っている。


『おい、逃がすな!』


『あいつを殺せ!』


盗賊たちが、男に襲いかかる。


男は、剣で応戦するが、数が多すぎる。


「……マジかよ」


俺は、ため息をつく。


『主人よ、どうする?』


ナイトメアが聞く。


「どうするって……」


俺は、盗賊たちを見る。


男が、倒れた。


盗賊たちが、男に剣を向ける。


『警告。前方に敵性反応12名を検知しました』


ナビ子の声が流れる。


「12人か」


「……納期、遅れるな」


『え?』


「盗賊が邪魔だ。ポチ、排除してくれ」


『……我の名は、ナイトメアである』


「いいから早く」


『……わかった』


ナイトメアが、馬車ごと盗賊たちに向かって走る。


黒い霧が、その体から溢れ出す。


車輪の鎌が、高速で回転し始める。


ヒュンヒュンヒュン——


鎌が風を切る音。


『な、何だあれは!?』


『馬が……いや、車に鎌がついてるぞ!?』


『逃げろ!轢かれる!』


盗賊たちが、剣を構える。


しかし——


ナイトメアは、一瞬で盗賊の群れに突っ込んだ。


黒い霧と、回転する鎌が、盗賊たちを包み込む。


ガリガリガリ——


鎌が地面を削る音。


『ぐああああ!?』


『目が、目が見えない!』


『鎌が、鎌が回ってる!』


『逃げろ!こいつは、化け物だ!』


霧の中から、鈍い音が響く。


蹄の音。


車輪が回転する音。


鎌が何かに当たる音。


何かが地面に倒れる音。


悲鳴。


そして——静寂。


30秒も経たないうちに、全てが終わった。


『敵性反応、消失。戦闘終了を確認しました』


ナビ子の声が、淡々と流れる。


黒い霧が晴れる。


盗賊たちは、全員地面に倒れていた。


気絶している者、恐怖で動けない者、逃げようとして足が竦んでいる者。


そして——車輪の鎌には、服の切れ端が引っかかっている。


ナイトメアは、その中心に立っている。


金色の目が、静かに光っている。


馬車の車輪は、ゆっくりと回転を止める。


『終わったぞ、主人』


「おう、ご苦労」


俺は、馬車から降りる。


倒れていた男に近づく。


「大丈夫ですか?」


男は、俺を見上げる。


そして——顔が青ざめた。


『……あ、ああ……』


「立てますか?」


『お、お前は……』


男の視線が、俺の後ろに向く。


ナイトメアが、そこに立っている。


黒い霧を纏い、金色の目を光らせている。


『な、ナイトメア……災厄の化身……』


「ああ、こいつはポチ。俺の相棒」


『ポチ……?』


男は、俺とナイトメアを交互に見る。


そして、俺の顔を見て——さらに青ざめた。


『お、お前……笑って、いる……』


「笑ってない。これが俺の顔だ」


『盗賊を瞬殺して……笑って、いる……』


「だから、笑ってないって」


『死神……お前が、伝説の……』


「死神じゃないです」


もう、説明するのも面倒だ。



***



男を村まで運ぶ。


村長が、男を介抱する。


「助かった。ありがとう、死神殿」


「だから、死神じゃ——」


もう、いい。


俺は、馬車に戻る。


『主人よ、すごかったぞ』


ナイトメアが、興奮した声で言う。


「何が?」


『お前、あの盗賊たちを一瞬で倒した』


「倒したのはお前だろ、ポチ」


『ポチと呼ぶな! ……うむ、まあ、そうだな』


『だが、お前は笑っていた』


「笑ってない。これが俺の顔だ」


『……恐ろしい男だ』


「恐ろしくない。普通だ」


俺は、御者台に座る。


その時、ふと服を見る。


紺色の作業服に、赤い染みがついている。


「……なんだこれ」


『血だ』


「血?」


『いや、違うな。これは——』


ナイトメアが、匂いを嗅ぐ。


『イチゴジャムだ』


「ジャム?」


俺は、服の染みを触る。


確かに、ベタベタしている。


「いつの間に……」


『配達の時に、瓶が割れたのだろう』


「マジか」


俺は、服を見る。


赤い染みが、まるで返り血のように見える。


「……これ、血に見えるな」


『ああ。だから、お前はさらに死神に見えるのだ』


「なるほど」


俺は、ため息をつく。


「まあ、いいか。洗濯すれば落ちるだろ」


『……お前、本当に怖いものがないのだな』


「怖いものはあるよ。納期遅れとか」


『それだけか』


「それだけで十分だ」


俺は、スマートフォンを確認する。


午前5時45分。


「まだ、時間あるな」


『次の配送先は?』


「元の世界に戻る」


『戻る? どうやって?』


「来た道を戻る」


『……そんな単純なのか?』


「試してみないとわからん」


俺は、ナビ子に聞く。


「ナビ子、元の世界に戻る方法は?」


『来た道を戻ってください。トンネルを通過すれば、元の世界に戻れます』


「やっぱりな」


『……本当に、それだけなのか』


「それだけだ。じゃあ、行くぞ、ポチ」


『ポチと呼ぶなァァァ!』


ナイトメアが怒鳴りながら、走り出す。



***



午前6時。


俺たちは、トンネルを抜けた。


視界が、元に戻る。


アスファルトの道路。


街灯。


見慣れた景色。


「戻ったな」


『……本当に、戻ったのか』


ナイトメアの声が、エンジンの音に変わる。


車も、元の軽トラックに戻っている。


「戻ったな」


俺は、スマートフォンを確認する。


『配送完了。お疲れ様でした』


ナビ子の声が、普段通りのトーンで流れる。


「おう」


俺は、車を走らせる。


次の配送先へ。



***



午前7時。


全ての配送を終える。


アパートに戻る。


部屋に入る。


作業服を脱ぐ。


イチゴジャムの染みが、まだついている。


「洗濯、しないとな」


俺は、作業服を洗濯機に放り込む。


そして、布団に倒れ込む。


「……今日は、変な夢を見たな」


異世界。


エルフ。


喋る馬。


盗賊。


全部、夢だ。


そう思いながら、俺は眠りに落ちた。



***



午後2時。


スマートフォンのアラームが鳴る。


俺は、起きる。


「……昼か」


時計を見る。


午後2時15分。


「次の配送、午後4時からだったな」


俺は、起き上がる。


洗面所へ向かう。


顔を洗う。


そして——スマートフォンを確認する。


配送アプリを開く。


『本日の配送予定:残り8件』


ナビ子の声が流れる。


「おう」


そして、画面に表示された文字を見て——俺は、固まった。


『次の配送先:エルフォード王国、首都グランベル。配送物:除草剤、殺虫剤、肥料』


「……マジかよ」


夢じゃなかった。



***



その日の夜。


俺は、再びトンネルを通った。


そして、異世界へ。


ナイトメアが現れる。


『また来たか、主人』


「来たくて来たんじゃない。ナビがこう言うから」


『ふん。で、今日は何を運ぶ?』


「除草剤」


『除草剤?』


「雑草を枯らす薬だ」


『……それが、何の役に立つ?』


「知らん。でも、納期があるから」


『相変わらずだな、お前は』


「お互い様だ、ポチ」


『ポチと呼ぶなァァァ!』


こうして、俺の異世界配送生活が始まった。



***



(第1話:完)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2026年1月12日 19:03 毎日 19:03

配送ナビが異世界ルート案内してきたので納期厳守で行ったら、死神として伝説になっていた @DarthTail

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画