俺にだけ無意識えちおねムーブしてくるハーフアップおっとり美人家庭教師(♂)との超ド健全授業:ラブコメに降る雨って都合が悪そうに見えてめっちゃ都合が良い
貴葵 音々子🌸カクヨムコン10短編賞
第1話
~めちゃくちゃ雑な導入~
このお話は健全な高校一年生男子の白井マシロくんがハーフアップおっとり美人家庭教師(♂)であるアオイお兄さんの無意識えちおねムーブに翻弄される超ド健全ラブコメライトBLである――!
前話はこちら。全て超ド健全です。
①『全問正解のご褒美はふたりだけの秘密』
https://kakuyomu.jp/works/822139840594329398
②『妹が隣の部屋にいるのに……』
https://kakuyomu.jp/works/822139841882765348
③『ウェーイ!マシロくん見てる~?』
https://kakuyomu.jp/works/822139842398382639
◆◇◆
今日は一年の不運を一日に凝縮したような最悪な日だった。
朝、いつもの時間に家を出て駅に向かう途中、ぶつかりおじさんとエンカウント。俺タッパある方なのに、なんでわざわざぶつかってくるかな。ぶつけられたのが女の人とか老人じゃなくてよかったけどさ。
モヤモヤした気分で登校すると、朝練をしていた野球部の暴投が後頭部を直撃。そんな漫画みたいなことある?
勉強して備えていたはずの小テストでは範囲を間違えて赤点。絶対に先生の勘違いだと思って指摘したら、違う範囲を勉強していたのは俺だけだったらしい。すみません。
午後の授業になると、それまでなんともなかったシャーペンの軸が突然真ん中から割れて折れた。親に買ってもらったばかりのちょっとお高いやつなのに。
なんか本調子じゃないなと思いながら参加した部活は、案の定いつもの調子が出せずに先輩から怒られた。やる気がないなら帰れって。でもそういう日もあるじゃんね。
具合が悪いのかと思って早めに帰らせてもらって電車を降りた時、財布とスマホを入れていたカバンがないことに気づいた。
定期券も一緒に入っていたので改札を出られず、駅員さんのお世話にならなきゃいけなくて。親に連絡しようにもスマホがないと電話番号がわからないと言う俺に、おじさんの駅員さんはちょっと呆れ気味だった。ごめんなさい。
でも一番最悪だったのはそのあとだ。
学校名と名前と連絡先を控えられ、ようやく解放されて駅を出ると、外は土砂降りの雨。折り畳み傘なんて気の利くものは持ち歩いていない。スマホも財布もないのでコンビニで傘を買うお金もない。
それまで色々ありすぎてとにかく早く家に帰りたくて仕方なかった俺は、土砂降りの中を走り出した。頭から靴下まで余すところなくびしょびしょになりながらマンションに着いたが、玄関扉の前ではたと気づく。
――家の鍵もないじゃん!
なぜ今の今まで気づかなかったのか。
さらにさらに、両親は昨日から長期出張、妹のモモカは塾の追い込みで合宿に参加中。
詰んだ。完全に詰んだ。悪いことは立て続くっていうけど、何もここまで重ならなくたっていいじゃないか。
ずんと気分が沈んだところへ寒さと空腹の波が押し寄せ、俺は玄関扉に背中を預けてずるずると崩れ落ちた。
しんどい。もう何もかもがしんどい。そう思ったら目の奥がツンとしてうるうるしてくる。
初詣のおみくじ、大吉だったのにな。神様のうそつき。
膝を抱えるように座り込んでいじけること、数分――いや数十分、数時間? 時計がないからわかんないや。
とにかく、階段を上る足音が聞こえてきた。
俺は顔を上げて自然とそちらを見てしまう。ご近所さんだったら泣いて頼めば助けてくれるかも。そんな期待を込めて。
だけどそこに現れたのは――。
「――……マシロくん?」
濡れネズミの俺を見て絶句する同じく全身びしょ濡れのアオイさん。どうやら通り雨の餌食になったのは俺だけじゃなかったらしい。
神様、うそつきだなんて言ってごめんなさい。最高の救世主を遣わせてくれてありがとうございます。
◆◇◆
「ごめんね。もっと早くに帰って来れたらよかったんだけど、スーパーのバイトが長引いちゃって」
「全然! むしろ突然変なこと頼んですみません……」
「ううん。災難だったよね、ほんと」
びしょ濡れで冷え切った手に両肩を掴まれて「今日、泊めてくれませんか⁉」なんて詰め寄られて、アオイさんだって驚いたに違いない。しかも俺、べしょべしょに泣いてたし。
なのにぱちぱちと数回瞬きして一拍置いてから「いいよ」と微笑んでくれたアオイさんは、マジで天使に見えた。人間って嬉しくても泣けるんだとその時初めて実感した。
「殺風景な家だけど……」なんて言いながら開けられた玄関は、四人家族の俺の家と比べたら当然がらんとしていて。同じ間取りのリビングダイニングに通された先も、必要最低限の家具が理路整然と置いてあるだけの、生活感を感じさせない空間だった。
写真立ての中でご両親が微笑む小さな仏壇に飾られた花だけが、この家の色みたい。
失礼にならない程度に室内を見渡していると、アオイさんが隣の部屋から持ってきたバスタオルに頭から包まれた。ふわりと香る優しい柔軟剤の匂い。つま先立ちして俺を見上げるアオイさんと同じ匂いがするタオルで、濡れた髪をガシガシ拭かれる。大型犬にでもなったような気分だ。
「身体冷えちゃったよね。お風呂のスイッチ入れたから、シャワー浴びてきな」
「い、いやいやっ、家主なんだからアオイさんがお先にどうぞ!」
アオイさんだってずぶ濡れなのは同じ。濡れて素肌に張りつくTシャツや長い毛先から滴る雫をなるべく視界に入れないようにして(なんか見ちゃいけない気がしたから)、俺は遠慮気味に後退る。
「もう、遠慮しないでお兄さんの言うとおりにしなさい」
「でも……」
「なら一緒に入る?」
「エッッッッッ!?」
別に、男同士だから一緒に風呂に入るのは何も問題ない。むしろ効率的だ。
なのに俺が挙動不審な反応をしたせいか、アオイさんは髪を乾かす手を止めて、ぱちりと瞬きした。そして何やら含みを持たせた蠱惑的な笑みを浮かべ、タオル越しに俺の耳元を指がなぞる。
「マシロくん、何考えてんの?」
「なっ、ななななな、何も……⁉」
「ふふふっ、えっち」
ど っ ち が だ よ !
「~~~~ッッッお風呂借ります!」
「突き当りを右ね~」
「知ってます!」
同じマンションの同じ間取りだから、迷いなくドカドカ進んで脱衣所に逃げ込む。
突然雨に降られるアクシデント。
お互い冷え切った身体。
家にふたりきり。
ここがご都合主義ラブコメの世界で平凡な俺がなぜかS級美少女にモテまくる無自覚イケメン主人公だったら完全にフラグが立つところだった。あっぶな……!
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