配信切り忘れた人気Vtuberが「あーあ、早く俺君とエッチな事してみたいなぁ」と晒した結果、大炎上して俺の名前が世界トレンド一位に。火消しでVデビューしたら、何故か俺の人気が爆発した件
神楽
第1話 伝説の配信切り忘れ
朝の教室というのは、いつも騒がしい。高校二年生のGW明け。憂鬱な朝に、会話に花を咲かせるクラスメイトの中でひときわ目立つ女子が一人いる。
「あ、瑠奈ちゃん! おはよう!」
「うん、おはよう」
姫宮瑠奈。色素の薄い金髪に、水色の宝石のような瞳。そこら辺の女子とは雰囲気からして格が違う。そんな彼女は当然、男子たちからの意中の的であり、告白も多くされていると噂。だが、彼女は一度たりとも告白を引き受けたことが無かった。そんな彼女に付いたあだ名が難攻不落の氷の女王である。
彼女は、俺の隣の席なので俺は義務的に挨拶を口にする。
「……おはよう、姫宮さん」
俺の声に、姫宮瑠奈がゆっくりと顔を動かす。 だが、直後に俺を捉え――そして、スッと逸らされた。
「……おはよう」
テンションの低い声。俺の存在など、道端の石ころと同程度にしか認識していない反応だ。
(……うん、通常運転)
これが、彼女につけられたあだ名が『氷の女王』である所以だ。 誰にでも平等に美しいが、心を開かない。特に男子生徒に対しては、鉄壁の守りを誇っている。
難攻不落の美少女。……まぁ、俺には関係ない話だ。
それに俺には推しが居るからな。
故に現実の女なんて、どうでもいい。 俺はこの平穏なモブキャラとしての日常を愛しているのだから。
◇◆◇◆◇
その日の夜。 俺は、自室のPCの前で正座待機していた。
画面の中で輝くのは、俺の唯一の癒やし――Vtuberの『プリンセス・ルナ』だ。
大手Vtuber事務所に所属しており、登録者150万人を誇る人気Vtuberである。p金色のロングストレートに水色の瞳。白いドレスと頭の乗っている黄金の王冠がトレードマークである。ファンは騎士団という愛称があり、俺もそのうちの一人である。彼女の人気の要因は何よりも透き通るような「歌声」である。 普段の可愛らしい喋り声とは裏腹に、歌となると魂を揺さぶるようなハイトーンを響かせる。
今日の配信も歌ってみた配信で、万を超えるリスナーが視聴していた。
今日もコメント欄は盛り上がっている様子だ。
『888888』
『歌姫降臨』
『今日も清楚』
『流石はルナ様』
「ふふ、今日もライブに来てくれてありがとう。良い夢を見てね?では、 おつルナでした~♡」
ルナがエンディング流して、今日の配信は終わりを迎えてしまう。
ああ、終わってしまった。俺は余韻に浸りながら、ブラウザを閉じようとマウスに手を伸ばした。
――その時だった。
「……んっと、はぁ……疲れたぁ」
ヘッドホンから、ドスの利いた溜め息が聞こえてきた。
「……え?」
配信が切れてない? どうやら操作ミスか何かで、音声だけが繋がっているらしい。 教えてあげなきゃ。そう思ってキーボードに手をかけた瞬間、続く言葉に指が凍りついた。
「何か清楚ぶるの、もう限界かも……」
ガタッ、ゴトッ。椅子にもたれかかる生々しい音。 いつもの癒しを与える「姫ボイス」ではない。もっと低く、気怠げな……「素」の声だ。
「……はぁ。これだけリスナーに愛されてても、私が好きな人にはちっとも振り向いてもらえなそうだし」
「あー……猫被るの疲れた。早く犬神くん成分補給したい。ジャージの匂いだけでご飯3杯いける……じゅるり」
『ファッ!?』
『声ひっくww』
『清楚(嘘)』
『これ聞いていいやつか?』
『夢だと言ってくれ』 『嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ』
『ガチ恋勢死亡』
俺以外のリスナーたちも異変に気付いており、コメントが加速している。
そして、当の本人は配信の切り忘れに気が付いていない様子だ。
次の瞬間、とんでもないものが画面に映る。
『ん?』
『画面切り替わったww』
『 え、これPCの画面??』
映ったのはルナのPCのデスクトップ画面だった。
その中で彼女が「フォルダ」を開く。
そのファイル名にはこう書かれていた。
・犬神くん観察日記
・回収済みジャージ画像
『フォルダ名wwwww』
『犬神くん観察日記?』
『観察日記www怖すぎだろww』
『回収済みジャージ画像フォルダって何だよ』
しかも、あろうことかルナがそのフォルダを開いたのだ。そこに一枚の写真がでかでかと映る。それは犬神優とフルネームで書かれたジャージだった。
てか、おい待て。これって俺が最近急になくしたと思っていた奴じゃん。一体どういうことだ???
『うわあああああ開くなww』
『高画質助かる』
『画質良すぎて草』
『フルネームwww』
『犬神優くん、人生終了のお知らせ』
『¥10,000 弁護士雇う準備しとけよ犬神』
「犬神くんのジャージ、いい匂いだったなぁー……。すぅー……。汗の匂い、まだ残ってたし、脳みそ溶けそうだったもん』
「……は? 犬神君って、俺のこと?」
血の気が引く感覚が走る。
「あーあ……、早く犬神くんとエッチな事とかしてみたいなぁ。どんな子がタイプなんだろ」
決定的だった。 間違いようがない。
「はぁ……優くん優くん優くん優くん……好き、大好き……食べちゃいたい」
暗闇の向こうから聞こえるのは、高貴な姫の声ではない。 欲望にまみれ、理性を溶かした、ただのヤンデレの喘ぎ声。
『ヒエッ……』
『壊れた』
『ガチのヤンデレじゃねーか』
『なにこれ、呪詛?』
『怖い怖い怖い怖い』
『【速報】ルナ様、狂う』
直後にルナの声が響き渡る。
「もしもし? マネージャーさん、どうしたの? え? 配信?」
不機嫌そうに応対する彼女。だが、数秒後。
電話の向こうから聞こえたであろう言葉に、彼女の動きが凍りついた。
「……え? 切れてない? ……嘘。嘘でしょ?」
『あ』
『気づいた』
『マネージャーGJ』
『もう手遅れだぞ』
『ルナ様終了のお知らせ』
「ひっ、ひゃああああああああ!?!?」
ガタガタッ!! バタン!! 機材をなぎ倒す派手な音が響き渡る。 ようやく事態を飲み込んだ彼女が、パニックを起こして暴れまわっているようだ。
「やばっ、やばやばやばっ! ど、どうしよ! え、これまだ繋がってるの!? 音入ってるの!?」
入ってるぜ……バッチリと。 俺の鼓膜には、推しの情けない悲鳴と、機材の破壊音がダイレクトに届いていた。
『wwwwwwww』
『あわてすぎww』
『可愛い(錯乱)』
『落ち着け』
『いや落ち着くな、もっとやれ』
『伝説の放送事故』
「き、切らなきゃ! うわあああああん!!! 終了ボタン探してる場合じゃない!! もう強制シャットダウンだ!!!」
ドンガラガッシャン!!
ヘッドホン越しに、何か衝撃音が響いた。
おそらく彼女は、PCの電源ボタンをシャットダウンする理性すら失い、コンセントを物理的に引っこ抜いたのだろう。
直後、騒がしかったヤンデレボイスが途絶えた。
【配信はオフラインです】
画面には、無慈悲なシステムメッセージだけが残される。
「…………」
(お、終わった……のか?)
俺は深く息を吐き、重くなったヘッドホンを外した。
心臓が早鐘を打っている。 推しの放送事故。
とんでもないものを聞いてしまった。
この時の俺は、まだ楽観視していた。
何か俺のジャージが映ったような気がするけど、多分アーカイブは消されるし、最悪身バレしそうになったら同姓同名の別人ってことで押し通せばなんとかなるかと。
だが、甘かった。
俺は震える手でスマホを取り出し、何気なくSNSを開いた。 そして、流れてきたトレンドワードを見た瞬間――。
俺の血の気が、一瞬で引いた。
日本中の「特定班」たちが、獲物を見つけたハイエナのように群がる地獄絵図だった。配信は終わったが、「犬神優」の波乱万丈の人生は、ここからが本番だったのだ。
配信切り忘れた人気Vtuberが「あーあ、早く俺君とエッチな事してみたいなぁ」と晒した結果、大炎上して俺の名前が世界トレンド一位に。火消しでVデビューしたら、何故か俺の人気が爆発した件 神楽 @Akatukikunn
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