『ボク』は『わたし』に着替えする
水星 透
あの子が急に『着替え』しちゃった!!!!!!!!!!
◆プロローグ――桐生奏1
「なんで急に『着替え』たの!!!!!!!!!!!!!」
「前と全然違うじゃん!!!!!!!!!」
「ワタシのこと嫌いになったってことでいいんだよね⁉︎」
晶が急に髪を伸ばした30センチも。それどころか、全て変えてしまった。
2X26年。人が自らの体を自由に着替えられるようになって数世紀。
今までは男の子に見間違えるようなショートヘアだったのに。
オーバーサイズのTシャツからのぞく健康的に日焼けした肌が好きだった。
薄く目にかかる前髪の、ほんのり輝く月夜の海のような艶のある黒も好きだった。
大きな口で白い歯を見せて笑うのも大好きだった。
全部変わってしまった。
今は病的にも見える透き通る白い肌がゴシックのレースから僅かに覗いている。
綺麗に巻かれた髪は春の花吹雪のようで何時間もコテを当てて作り込まれている。
けれど、それがなんだっていうんだろう。
雪解けの頃のきらめきのようなあの表情も、もう見ることは叶わない。
当然、絶対。どう考えても!大喧嘩‼︎
つまり、絶交状態。
高校入学から三年近く付き合ってきた。
けど、それももう全部終わり。そう思うと涙が止まらない。
連絡先、全部ブロックしちゃおって何度もしようと思っては出来なかった。
どうしても話をしたいと言われて渋々ながらワタシはそれに応じることにした。
『着替え』が出来るようになる前のことは歴史の教科書に詳細な記載がある。
生まれた体を変えることができない時代があったこと『知る』ことはできる。
今の時代『着替え』は日替わりで気に入った姿に変える人もいる。
私と晶のように同じ姿で長く過ごす人たちもいる。
老人も大人も子供も関係なく(成人まではある程度の制限があるにはあるけれど)
性別すらも変えることができる。
ただ、教科書に書いていた
『一目惚れ』
という言葉に妙に惹かれた。
ワタシが彼女と出会ったのは、春も終わりに近づく頃だった。
そう――人は着替えることが出来る。けれど季節は今も昔も変わらない。
変わる季節のように相手に合わせて見た目を決めるのが『今のフツウ』
だから、晶を初対面で好きになった時にのことは今でも覚えている。
『一目惚れ』
で付き合った。
なんてことを人に言おうものなら、きっと頭がオカシイと思われるのは確実。
だからワタシはあの子に、晶にお願いをした。
『幼馴染な二人は物心ついてからずっとお互いの好みの姿で過ごしてきたって』
その後ろめたく感じてしまう秘め事。
それがワタシにとってはどこか心地よく、どこか誇らしく感じられた。
『今』この世の中では理想の相手を見つけることなんてすぐ。
そんな世の中では殊更に
『一目惚れ』
という言葉が特別に感じられたのだった。
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