おなかがすいた

日比野 英次

第1話「焼き魚の朝食」

 何かが焼ける匂い。

 焦げた脂?これはおそらく――そう、魚。

 お呼ばれした先で、普段嗅ぎ慣れない食事の準備の香り。

「お待たせ」

 とん、と置かれたのは焼き魚、ご飯、そして濁った⋯⋯これは御御御付だ。

 湯気が食卓の日差しに映える。

 お箸が添えられている。右手で取り、両手を添えて一礼。

「いただきます」

 まず左手で御御御付を取り上げる。

 小指から、お椀の下に手を添える。

 ふんわりと鰹の香り。

 湯気が視界を過ぎり、大きめに千切られた豆富が味噌の中に見える。

 口をつける。

 そこまで熱くはない。

 ゆっくり口の中に注ぐ。

 舌を刺激する、やや辛めの麹味噌󠄀の味と、強い出汁の味。

――うまい

 普通の朝食の御御御付だ。

 椀を戻して、焼き魚に箸を伸ばす。

 これは、ほっけ、じゃない。

 箸をいれると血合いからほろりと身が全て解ける。

 一度そのままかじる。

 小骨が柔らかい。まとめて噛む。

 あまり強い旨味はないが、脂が舌の上を滑らかに滑る。

 鱈だ。

 添えられている大根おろしに、食卓の上に置かれた赤い蓋に左手を伸ばす。

 『醤油』と自己主張しているそれを、左手の人差し指と親指でつまんだ。

 大根おろしの上から、あっという間に染み込む醤油。

 ご飯と焼き魚は、いつ食べても良いけど。

 朝食が一番。

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