引き籠もりニート自室ダンジョンで最強になる~俺だけ最強の装備やアイテムで世界最強に!?
仮実谷 望
第一話 クローゼットの深淵
佐藤蓮(さとう れん)、25歳。職業、ニート。 最後にコンビニ以外の目的で外に出たのがいつだったか、もう思い出せない。
深夜2時。部屋を照らすのは、3枚のモニターから放たれる青白い光だけだ。 積み上げられたエナジードリンクの空き缶と、スナック菓子の袋。これが俺の城であり、世界のすべてだった。
『……お?』
掲示板の「オカルト板」に、奇妙なスレが立ったのはその時だった。 【速報】空に穴空いてねーか?www
「釣りか?」 指先だけでタイピングしようとした時――背後で、『ギギッ……』と嫌な音がした。
立て付けの悪いクローゼットの扉が、数センチだけ開いている。 その隙間から漏れ出していたのは、闇よりも深い「漆黒」だった。
「……親父か?」
いや、ありえない。両親とはもう半年以上、ドア越しにトレイを受け取るだけの関係だ。 俺は椅子から立ち上がり、護身用に置いていた中学時代の木刀を握りしめた。
その時、脳内に無機質な声が響く。
《条件が満たされました。世界で最初の「穴(ダンジョン)」が発生します》 《認識を開始します。個体名:サトウ・レン。役割:先駆者》
「は……?」
クローゼットの隙間から、何かが這り出してきた。 それは、皮膚が緑色で、異常に鼻が長い小柄な生物――ゲームで嫌というほど見た「ゴブリン」そのものだった。 だが、グラフィックではない。生々しい獣臭さと、口端から垂れる粘つく唾液。
「ギ、ギギッ!」
ゴブリンが、手にした錆びたナイフを突き出し、俺の聖域(へや)に踏み込んでくる。
その瞬間、恐怖よりも先に「不快感」が勝った。 ここは、俺が3年かけて作り上げた、誰にも邪魔されない唯一の居場所なんだ。
「ふざけるな……。俺の部屋に、勝手に入るなよ!」
無我夢中で、木刀を振り下ろした。 運動不足の体には酷な一撃だったが、木刀は正確にゴブリンの頭部を捉えた。
ベチャッ。
嫌な手応えと共に、緑色の怪物が霧のように霧散する。 畳の上には、ビー玉のような小さな「紫色の石」だけが転がっていた。
《チュートリアル・エネミーを撃破しました》 《世界初討伐ボーナス:スキル【鑑定】を習得しました》 《世界初ダンジョン発見ボーナス:ユニークスキル【マイルーム・ワープ】を習得しました》
目の前に浮かび上がる半透明のウィンドウ。 窓の外からは、遠くの方で悲鳴とサイレンの音が聞こえ始めていた。
「これ……マジなのか?」
俺は震える手で、クローゼットの扉を完全に開け放った。 そこには服などもうない。 階段状の岩場が続く、地下へと続く不気味な洞窟が広がっていた。
スマホを確認する。ネット掲示板は「外の世界」に出現した怪物たちの話題でサーバーが落ちかけていた。 世界中がパニックに陥り、軍や警察が動き出すまで、まだ時間はかかるだろう。
だが、俺の目の前には、誰にも知られていない「入り口」がある。
「……外(社会)に出るのは死ぬほど怖いけど」
俺は「魔石」を拾い上げると、木刀を強く握り直した。
「ここなら、俺のほうが詳しいはずだ」
25歳、職歴なし。 引きこもりニートの俺が、世界で最初の「探索者」になった瞬間だった。
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