シャルロッテは諦めない ~ 婚約破棄されましたが、だからなに?
風風風虱
第1話 シャルロッテ、婚約破棄を言い渡される
「シャルロッテ。君との婚約を無かったことにしたい」
セドリック王子の言葉が、シャルロッテ・ベルガモンド伯爵令嬢である私の鼓膜に突き刺さった。
秋の涼やかな日差しが差し込む
私は生暖かい笑みを貼り付けたまま、持っていた
「えっ……と、すみません。
セドリック様の顔に見とれていて、どうやら私、お言葉を聞き間違ってしまったようです。
今、何とおっしゃったのでしょう。
式の日取りのお話でしたでしょうか?」
「いや、違う。
そのぅ、君との婚約を破棄したいのだ」
破棄……
破棄って……婚約?
婚約を破棄?
私とセドリック様の、こ、こ、こ、こ、婚約、破棄ですって!!
一体なんで? なんで?!
私のお誕生日に贈っていただいた詩を皆様の前で朗読したから?
いや、だってマジに嬉しかったんだもん。
後でカルディナに「極プライベートなものを公開するとは何の罰ゲームですか」と注意されたけど、だって貰ったとたんに舞い上がってしまったのですから……
そうよ、あれは不可抗力よ!
ああ、それとも砂糖と塩、シロップと酢を取り違えて作ったパイを食べさせたあの件?
いえ、だって一口食べて不味いと言っていただければ、すぐにとめましたのに。
表面上はニコニコして食べられるのですもの。二枚目をお勧めしたのは決して悪意ではなかったのです……。
作った本人が言うのもなんだけど、二枚完食したセドリック様は神ね。私なんて一口含んだだけで卒倒しかけたもの。
このまま呑み込んだら命が危ないと思って本能が拒否したものね。
それとも……それとも……。
い、いけない。思い当たる件が多すぎる。
いえ、落ち着け私。
怒ったり、慌てては駄目。ここは伯爵令嬢として優雅に穏やかに理由を問いただすのよ。
良いこと。まず深呼吸をして。
すー、はー
すー、はー
うん、落ち着いた。
穏やかに行くのよ。
私、頑張れ!
「なんですとーーー!!」
秒、もたなかった……
私は堪えきれず大声を上げて立ち上がる。
立ち上がる時、膝でテーブルを蹴り上げて、派手にティーカップをひっくり返した。
「わぁ!」
セドリック王子は私の剣幕に驚き、文字通り椅子から飛び上がったが、お構いなく私は王子に詰め寄った。
「なんで、なんで。
わ、私の何がいけなかったのでしょうか。
おっしゃっていただければ、如何ようにも直します。
母にはよく大口を開けて笑うなと常々言われておりますが、それでしょうか?
直します。直します!
必要なら口を縫い合わせても構いません!
それから侍女のカルディナからは食べ過ぎとよく言われますので、これからは自重します。
半分、いえ、さ、三分の一にします。ひもじくてもセドリック様が喜ぶのであれば、私、頑張ります。
それか、それとも……」
「シャルロッテ様、シャルロッテ様、落ち着いてください。
僕はあなたの笑顔が大好きだし、
本当に美味しそうに食事をする姿も好きです。
それらの事と今回のことは関係ありません。あなたには全く非はないのです。
全ては僕の不徳の為せる業なのです。
……
本当にただ、ただ、申し訳なく思っています。
賠償については、既にあなたのお父様であるグラフ侯爵には申し出て、了解をいただいております。
もちろん、今後の社交界でのあなたの評価に傷がつかないように、丁寧な説明もしていく所存です。
ですのでシャルロッテ様は、私のことなど忘れて、幸せになっていただきたいのです」
「私の幸せは、セドリック様と結ばれる以外にはあり得ません」
私の言葉に、セドリック王子は目を伏せ、首を横に振った。
「僕はもう、死んだと思って諦めてください。
では、失礼いたします。
もう、二度とお目にかかることもないでしょう」
――もう、二度とお目にかかることもないでしょう。
その言葉に、私は血の気がすーっと落ちるのを実感した。視界に薄いもやがかかったように暗くなる。
もう、二度と 二度と ……
お目に かかることも お目にかかることも ……
ないでしょう ないでしょう ……
私の頭の中で、セドリック王子の言葉がリフレインする。
「し、しかしセドリック様!
あ、あれ?
セドリック様? どこへ行かれましたか?」
どれくらいの時間がかかったのか。
本日二度目の
しかし、さっきまで目の前にいたはずのセドリック様の姿は、どこにもなかった。
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