3月の東京

御箸椀

第1話 はるこ

「かしこまりました。お客様から頂いた貴重なご意見は、わたくしが責任を持って記録に残し、担当者に伝えさせて頂きます。」

 40分にも及ぶ通話が、終わりの時を迎えようとしていた。

 コールが鳴ったら、2コールで受電すること。新人研修で習った通り、パソコンの画面に表示された受電の赤いボタンを押すと、右耳に掛けたヘッドホンは、お客様と繋がり、通話が始まる。

「長かったなぁ。」

 と、心の中で呟く。

 お客様がこの番号に架電すると、決められたガイダンスが流れ、該当の問い合わせを番号で押して場合分けする。私が所属しているのは、パソコン操作案内以外の1次応対と言われる部署だ。なにか目的があって架電してきた場合には、その対応が可能なオペレーターに繋がるシステムになっている。2ヶ月おきの研修で、オペレーターは対応できるスキルを上げて、受電範囲を広くしていく。一番最後の選択肢、その他のお問い合わせは、全てのスキルが習得できたオペレーターのみが対応できる。用意されたどの番号にも当てはまらず、その他のお問い合わせに落ちてくるということは、半数以上がクレームだ。大抵、支店の担当者との間になにかあって、担当者に直接言えないから、代表のこのコールセンターに掛けて来るのだ。オペレーターの私に繋がるまでに、かなりの時間をかけてガイダンスと戦ってきたお客様は大抵苛立っている。

「お電話ありがとうございます~」の決まり文句は、詳細まで決まっていて、一語一句違わぬよう最初の研修で叩き込まれる。少しでも文言が違えば、マニュアルに書いてないですよね? と、研修担当の先輩に突っ込まれ、厳しく指導される。私と同じタイミングで採用された4人のうち、初日の研修を終え、翌日に出社したのは2人になっていた。もう一人も今ではいなくなってしまった。

 最初の段階で、オリジナリティとか、創造性は求められていない。マニュアルの内容を理解し、その通りに機械的に対応できるかが焦点となる。なんでこんなくだらないことさせるんだろうと、半年位は思っていた。マニュアル通りなら、誰でもできるじゃないかと、経験した事ない人は言うだろう。だが、マニュアルにないことを発することを許されないというのは、意外に難しい。顧客企業と綿密に打ち合わせされて、練り上げられたマニュアルは、過不足なく出来上がっていて、トラブルの種を未然に防ぐべく構成されている。新人の手習いの、お客様への気遣いは、クレームを呼ぶ対応と呼ばれ、忌み嫌われている。半年位、その意味がよく分からなかったのだが、2年勤めた今なら、それが分かる。

 私たち外注の下請けにとって、現実のお客様は顧客企業である。通話は顧客企業のお客様であるから、もちろん大切にしなければならないが、顧客企業の利にならないトラブルを引き起こすことは、絶対に避けなければならない。マニュアルにあることを発していれば、幾ら理不尽なことを言われても、上司は守ってくれる。逆にマニュアルにないことを発してしまい、トラブルになれば、対応の全てをモニタリングされるお誕生日席に座ることになり、業務の全てを監視されることになるのだ。そして、一定の期間を置いて、その意味が理解できなければ淘汰されることになる。

「ただ、仰って頂いた内容について、どのような対応するかはお約束できません。ご了承ください。」

 一見丁寧なように聞こえるこのセリフだが、とどのつまり、通話内容の報告レポートに記録はするけど、実質的には何もしないということだ。

 クローズの文言を発しながら、SV席を見る。話中が20分を過ぎると、SV席のモニターの席次表に、今日私が座った番号の席が赤く塗られ、通知が行くようになっている。上司にあたるスーパーバイザーは、この点灯を見て、通話内容をモニタリングをしているのだ。

 SV席にいる女性の上司と目が合う。前髪を真ん中に分けたボブスタイルの綺麗な人だ。彼女は私に向かって大きく2度頷いた。それは、もう切ってもいいという合図である。なにか不足があれば、モニタリングしながら、私の横について、指示が飛ぶ。それがないということは、このまま終話して問題がないということを指している。

「この度は貴重なご意見をありがとうございました。」

 最後の決まり文句をいい、お客様が受話器を置くのを待つ。お客様から掛けてこられた通話を、こちらから切ることは許されない。向こうから通話を終えて貰うまで、録音は続いている。ツーツーという音が聞こえたら、やっとヘッドホンを置くことができる。

「長かったね。」

 SV席から私の方に歩み寄った髪の毛をボブに切りそろえた上司が、労いの言葉を掛けてくれた。

「でも、落ち着いてくれて良かったです。」

 上司に顔を向け、小さく笑う。

「今日、お昼何時からだっけ? 後処理終わったら行ってきていいよ。」

 お昼の1時間と午後15分の休憩は、毎日ランダムに3つのグループ分けられ、ホワイトボードに記されている。今日の私の休憩は、11時半からの最初の組だった。時計は12時近くになろうとしていた。通話しながらパソコン上に打ち込んだ、先程の通話内容を頭から確認する。

 〇〇と仰せ、〇〇と回答と、一問一答で簡潔に、誰が見ても分かるようにまとめねばならない。通話しながら打ち込んだ内容を整理していく。顧客企業が見て問題がないように誤字脱字も確認していく。パタパタとキーボードを叩きながら、先程までに通話していたお客様を思い出す。

 こんな平日の昼間から、暇なのかなぁ。

 繋がってからしばらくは、かなり声が大きかった。口調が早い人にはゆっくり数を少なく、あまりにも遅い人には少しテンポを早く多めに、相槌はテンポコントロールの打楽器だ。お客様が不快に感じないように自然に、会話のスピードを支配していく。次第に、相槌に合わせてお客様の喋るスピードは整っていく。

 相槌がテンポコントロールの打楽器だとしたら、オウム返しはメロディラインやリフといえるかもしてない。オウム返しは会話の内容を支配するテクニックだ。大声で理不尽な内容を突きつけられても、否定することなく、お客様が言った通りに言葉にする。そうすると、自分が言ってる内容を反芻させることになり、どんなおかしい理屈なのか、認識させることが出来るのだ。それを、何回も繰り返すことで、段々トーンダウンして、私は内容のあることをほとんど何も言ってないのに、勝手に納得して、受話器を置いてくれる。この2年で自然に身についたテクニックだ。

 40分も通話していたのに、会話の内容は僅か3行ほどで終わった。保存を押して、モニターの画面は初期表示に戻る。受電から離席にタブを変える。両腕を上げて大きく伸びをした。

「よし午前中終わり!」 

 と心の中で呟くと、回転椅子を回しながら、立ち上がる。

「お昼頂きます。」

 少し大きめのボリュームで、SV席に声を掛ける。返事はない。首から下げた社員証には電子キーに反応するカードが入っている。出入口の電子キーにかざすと、ピピッと音が鳴り、ガチャと鍵があく音がする。ドアノブを下にさげ、扉を引いた。ドアの先にあるロッカールームへ向かう。

 157。

 いつもだいたい同じ場所にしている。スチール製のロッカーに鍵を指し1周回す。中からカバンを取り出し、肩に掛けた。コートは置いていこう。出入口に繋がる、もうひとつの電子キーに社員証をかざし、ピピッと音が鳴る。顧客企業の社名の看板を通り抜け、エレベーターホールに向かいながら、カバンの中の携帯を手に取る。情報漏洩防止の為、もちろん携帯は持ち込み禁止だ。無意識に6桁の暗証番号を押すと、携帯の画面はアイコンが並んだいつものトップ画面が表示される。LINEには赤く〇2の通知。

 誰からだろ?

 LINEの緑のアイコンをタップする。エレベーターが1階で停る。ちょうど12時を回った所で、ビルのエントランスは混みあっていた。1歩外に出るとまだ風は冷たかった。

「喫茶店はアーケード内、更に今日は曇り空~♪ 」

 頭の中でカネコアヤノが上機嫌に歌う。

「太陽が居なくっちゃ、上手にターンもできないや~♪ 」

 携帯に目を落としたまま、歩き慣れた外堀通りを東京駅の方に向かって歩く。LINEの相手は本田朱音だった。昨日は早く寝てしまったし、朝慌てていて、チェックする暇がなかったのだ。携帯をカバンにしまい、前を歩くスーツ姿のサラリーマンと歩調を合わせ流れに乗る。

「今日も中華にしよう。」

 お気に入りの上品な中華料理店が1200円でランチを提供している。週替わりのメニューは3つ中から選ぶ事ができ、コーヒーと小さな杏仁豆腐のデザートまで付いているので、気に入っているのだ。12時はタイミングとしては良くない。混雑するからだ。

 信号を渡り、さくら通りを進むと店が見えた。1階は会計になっており、右手で1を作ると、レジの中にいたいつもの店員が笑顔で迎えてくれた。襟に付けたインカムのマイクを口元にあて、小声でやり取りしている。直ぐに指で2を作り、階段に案内してくれる。2階に上がると店内はやはり混んでいた。3方を壁と仕切りで囲われたテーブルに案内される。暖かいおしぼりを渡せれると、手を拭いながらメニュー表に視線を落とす。3つのうち1つは辛いもの、定食、麺類の構成になっている。私は辛いものが食べられない。少し迷うが昨日と同じ、2番の卵とキクラゲの炒めものの定食にした。

「ご飯少な目でいいです。」

 と、一言添える。食べれないことはないのだが、かなりボリュームがあるので、よそわれたご飯を全部食べてしまうとお腹がいっぱいになりすぎて、午後眠くなってしまうのだ。よそわれたご飯を茶碗に残すのは、あまり気分的にいいものではない。

 注文が済むと、カバンから携帯を取り出し、さっき開きかけたLINEの通知に戻る。一番上になっている、朱音のアイコンの横に小さな文字が並んでいる。既読を付けるのがめんどくさいなあと思い、Xの黒いアイコンをタップする。青い鳥から、Xに変わった時には抵抗があったが、いつの間にか慣れてしまった。でも呼び方はなんとなく慣れず、今だにTwitterと言ってしまう。タイムラインを上にスクロールする。携帯から音を鳴らさずに、表示された動画をみてニヤリと笑う。いいねを押すほどの内容はなかった。いつも通り、何かに対する愚痴と、どこかの動物の画像と、びっくり人間のショート動画、知り合いの朝ごはんの画像や、この世を憂う一言で溢れていた。  Twitterを閉じ、1つだけやっているゲーム、モノポリーを開く。1時間で10個溜まるサイコロは、ケージいっぱいの100になっていた。サイコロの倍率を一番上の10倍に上げて、GOのボタンを押す。初期設定のままのシルバーのシルクハットの駒が、ボードの上をぴょこぴょこと跳ね、マスを進める。何も考えずにぼーっとその様子を眺める。

 画面の上からLINEの通知のポップアップが降りてきた。相手は未読のままにしている朱音だった。ふぃーと誰にも聞こえない音量で口の奥を鳴らし、鼻からため息をつく。追いLINEする程、緊急の用事なのだろうか。急かされると、逆に返事をしたくなくなってしまう。天邪鬼なのだ。でもまぁ、朱音に悪いから、LINEの画面を開く。

「やばい」

「見つかっちゃった」

「今日何時に仕事おわる?話聞いて!」

 既読を付けてしまったのだから、返事は早い方がいい。向こうも昼休みなのだろう。

「?」

 と、即レスしたあと、

「5時には出れるよ」

 と返信を打つ。

 私の職場はほとんど残業はない。午前中のような、長い通話にあたらなければ、大体定時ピッタリに終業することができる。朱音の定時は6時のはずだから、彼女の職場の新橋まで、結局私が行くことになるのだろう。私は満員電車が嫌いで、世田谷の自宅まで、職場には内緒で車で通勤している。職場からすぐのビルの地下に、1日2000円の駐車場を見つけ、そこに車を停めている。日の稼ぎの4分の1を駐車場とランチに消えてしまうが、慣れてしまうとこんなに快適なことは無い。朱音はそれを知っている。

 朱音は、私の「?」には返さず、

「今日も車? 私6時に終わるから、いつもの所まで来てくれる?」

 すぐ返信が帰ってきた。お互い1人暮らし。まあいつものようにドライブしながら、話せばいいか、とぼんやり思う。

「分かった、会社でたらLINEして?」

 と、脊髄反射で帰す。

 thank youとディズニー映画の何かのプリンセスのスタンプが届く。私と違って朱音は女子力が高いのだ。男ウケがいいスタンプを使うように、アドバイスを受けた事がある。

「了」

 と一言だけ返すと、ランチのお盆が運ばれてきた。中央の大皿に、卵とキクラゲの炒めもの。ご飯にスープ、小さなサラダが乗せられていた。使い回しのプラスチックの黒い箸が、紙の箸入れに半分程収まっている。朱音、なんの事だろうな。薄ぼんやり考えながら、箸をすすめた。オイスターソースで味付けされた炒めものは、昨日と同じく美味しかった。

 予定通り5時に終業すると、駐車場に向かった。少し遠回りしてコンビニにより、アイスの缶コーヒーを2つ買った。蓋が締められるタイプの、大きめのブラックコーヒーだ。待ち合わせの新橋まで、15分もあれば着いてしまう。コンビニの前で、タバコに火を付けた。ゆっくり煙を吐き出しながら、脇に抱えた2本の缶コーヒーの1つを取り、キャップを捻って蓋を開け、口に運ぶ。仕事終わりのタバコとコーヒーは、文句なしに美味しい。車の中を禁煙にしているので、今のうちに一服しておこう。普段なら、家に着いてから落ち着いて一服するのだが、今日の帰宅は遅くなる。冷蔵庫の食材に意識を向ける。

 昨日買った鶏肉を使ってしまわなければな。鍋をするのは今年最後になるかもしれない。味付けはコンソメでいいか。

 ランチと車の費用で、必要以上に普段からお金を使ってしまっている。自宅での食事はできるだけ中食を避け、自炊するようにしているのだ。

 朱音の話、どれくらい掛かるかなぁ。

 朱音の自宅の笹塚まで送るとして、プラス2時間は考えなければいけない。今日は木曜日。明日頑張って出勤すれば、土日がくる。

 火を付けたピアニッシモをフィルターギリギリまで吸い、ポーチ型の携帯灰皿に捨てた。来た道を戻りながら、駐車場に向かう。私の車は、クリーム色の旧型のマーチだ。ビーンズというカラーになる。中古で初めて購入してから、5年以上大切に乗っている。街で同じ形のマーチにすれ違うことは少なくなった。そろそろ買い替えを考えなければならないが、気に入っているので、ギリギリまで乗りたいと思っている。軽自動車の方が税金も安いし、来年の車検で、そろそろ本気で考えなければならない。

 何をするにもお金がかかる。やっと少し貯金ができたと思えば、すぐ大掛かりな出費があって、なかった事になってしまう。

 エンジンをかけると、ナビに入れっぱなしのCDが回る。古い車のナビなので、CDしか聞くことができない。それでも通勤の間、大音量で音楽を掛け、鼻歌を歌いながら運転するのは気持ちがいいのだ。

 助手席のグローブボックスを開け、裸のままのCDの束を出す。夜のドライブだから、フジファブリックにしよう。アラモルトは志村がきっと東京をドライブしながら作ったのじゃないかといつも思う。車の中でしばし、ぼーっとしていると、17時半を回ってしまった。ギアをドライブに合わせ、サイドブレーキを降ろす。出口を抜けると、すっかり日が落ちようとしてていた。ライトのスイッチ回し、点灯させる。設定したナビは自宅と逆方向に案内を進める。意識を運転に集中させ、待ち合わせの定位置に車を走らせる。

 

 朱音は、1つ前の職場で一緒になった同僚だった。私より2つ年下の26歳。お互い派遣で、別の派遣会社で雇用されていた。同じ仕事内容だったが、私の派遣会社の方が時給が50円高かった。同じオフィスに派遣は5人だったが、他の3人はずっと年上で、家庭があったり子供が居たりして、皆お弁当を持参していた。私と朱音だけ、外食だったので、一緒にランチをとる機会が増え、いつの間にか仲良くなった。西新宿のオフィスの近くには、高層ビルが立ち並んでいて、ランチを提供する店がたくさんあり、2人で色々回った。でも結局、ビルの中の綺麗な店より、路地の昔ながらの落ち着いた店の方がコスパがよく、ゆっくりできるので、お互いそちらを好んでいた。ランチのあと、コンビニでコーヒーを買い、公園や神社の境内で私だけタバコを吸った。

 私の方が少し先にその職場を辞め、朱音も私の少し後に退職した。朱音は明るく職場の潤滑油のような存在だった。私は職場では必要以上のことは喋らず、黙々と仕事をするタイプだが、朱音は私にも人懐っこく懐いていた。私は仕事の後に用事がなければ常にすっぴんだが、朱音は毎日しっかりメイクをしていた。別の階の営業マンの男性社員も、みんな朱音の顔を見にきた。朱音はニコニコとしているものの、2人になると、ウザイと言い捨てていて、内面は私よりずっとドライだった。お互い決まった恋人を作らず、異性関係の価値観もあった。2人とも男性の誰かに人生を託し、主婦になろうとは、はなから思っていなかった。朱音は山梨の出身で、お父さんを幼い頃に亡くしているそうだ。おじいちゃんおばあちゃんに世話されて、大人になったとの事だった。私と違って、年末年始には必ず実家に帰っていた。私達2人とも、高校卒業の後、進学のために上京して以来、ずっとこちらで1人暮らしだった。

 新橋の駅から少し離れた所で、2車線になっていて、停車していても迷惑にならない、いつもの場所に車を停める。大きめの音量でフジファブリックを聞きながら歌詞を口ずさむ。音楽は2周目に入っていた。

「東京の空の星は、見えないと聞かされていたけど♪ 」

もう亡くなってしまった、志村正彦が歌う。

「見えないこともないんだな、そんなことを思っていたんだ♪ 」

 志村の声に合わせて、無意識に声が出る。ぼーっと私を追い抜かす車を見ている。

 左前方の交差点からから、朱音が現れ、手を振りながら走りよるのが見える。私も運転席から手を振る。ガチャっと助手席のドアが開き、朱音はするりと車に乗り込む。

「ねー聞いてよ!」

 朱音はシートベルトを掛けながら挨拶もなく、話始めた。

「ちょっと、うるさいんだけど。」

 朱音はナビに手を伸ばすと下向きの3角を慣れた手つきでポチポチと押し、音楽が全く聞こえない所までボリュームを下げた。

 嗚呼、夜のドライブに合わせてCDを選んだのに、意味なくなってしまった。でもまあ、この遠慮のない感じが、お互い居心地がいいのだ。

 私は、

「お疲れ。」

 と、言って、開いてない方のコーヒーを渡す。

「あっ、ありがとう。」

 朱音は受け取ると、コーヒーの蓋を捻って開けた。

「どこ行くの? ご飯は?」

 と、私はナビの行き先のボタンを押し聞く。時間は6時を20分過ぎ、完全に日が落ち夜になっていた。

「なんか食べたいものある? 今日は奢るわ。」

 朱音が言う。奢るとこいつがいうということは、話したい事がそれなりのボリュームであるのだろう。

「なんでもいいけど、明日も仕事だから、そんなに遅くなれないよ。」

 私は答えた。

「とりあえず、朱音の家の方向行くよ?」

 行き先の履歴の中から、笹塚の朱音の家を選択して設定する。右にウインカーを出し、後ろから車が来ないことを確認すると、アクセルを踏んで走り出した。

 皇居の方向に進む。

「ねー聞いてよ!」

 朱音は繰り返して喋りだした。

「あれ、職場にバレちゃったんだよ」

 私はギクっとする。

「なんで? 」

「それが、別の部署の部長が、来ちゃったんだよ。」

「えっ? 」

 と、私は反応する。

「私も最初気が付かなったんだけど、声で気がついちゃったみたいでさ。」

 私は思わず右手で半分顔を覆う。

「あれ? 朱音ちゃん? とか言い始めちゃって、違います、かなです? って言ってみたんだけど、ダメだった。」

「まじか…。」

 と、私は運転しながら、言葉を失う。

「副業ダメだよねって、詰められちゃって、もー最悪だよ…。」

 私は完全に言葉を失ってしまった。

「強制的にLINE交換させられちゃってさ、店用の携帯のLINE教えたんだけど、終わってから鬼LINE来てて、既読付けてないけど最悪だよ…。」

「そりゃ最悪だわ。」

 私は他に言う言葉が見つからなかった。朱音も私も、昼間の仕事だけでは食べて行くことができず、それぞれ別の場所でいわゆる夜のお店でバイトをしていた。東京の一人暮らしは、とにかくお金が掛かる。セキュリティがそれなりのマンションの家賃を払って、生活をして、人並みに遊んだりしようと思えば、昼間の仕事で賄いきることはできず、どうしても赤字が出てしまう。お洒落もしたいし、美味しいものも食べたいし、人並みに遊びにも行きたい。奨学金も返済しなければならない。私はそれにプラスして、車の維持費も必要だった。どんなに生活を節約したとしても、とても足りない。

「今日朝出勤したらさ、そいつわざわざうちの部署来て、にやにや笑ってるの、もうどうしていいか、わかんないよ…。」

 勢いがあったのは始めだけで、朱音は顔を覆っていた。

「で、どうするの?」

 私はつい言葉が出てしまった。

「わかんないよ。」

 皇居の周りを走りながら、2人して黙りこんでしまった。いつもなら、大好きな気分のいい道なのに、今日はとてもそう感じない。甲州街道を入る為に一番左側の車線にいるが、無理矢理タクシーが割り込んでくる。東京は電車があればいいというが、そんなことはない。車の運転をしていて、こんなに楽しい土地はないと思う。夜景は綺麗だし、幹線道路は余裕のある副車線になっているし、少し走るだけで、何かの観光名所にあたる。

 私は、このまま朱音の家に向かうのが、可哀想になっていた。

「気晴らしに、お台場でも行こうか。」

 朱音の返事はなかった。左手で頬づえをついて、窓の外を眺めている。私は、右車線に移ると、そのまま内堀通りを使って、皇居の周りを走り続けることにした。なんとなく、海が見たいと思ったのだ。

 選択肢としては、夜のバイトを辞めるか、昼間の仕事を辞めるかになってしまう。現実的には昼間の仕事を辞めるより他ない。朱音は夢だったデザインの仕事に、正社員として採用され、働き始めて1年程だった。会社の規模は程々だが、商社の中のデザイン室で、広告や販促物から、社内報などの印刷物まで、一手に引き受けていて、色々な形態のデザインの経験をつめると、活き活きと仕事をしていた。部署の人数は確か5人と言っていた。その中で朱音が1番若く、実務経験なしは朱音だけだった。簡単に割り切って辞められるという訳ではない。

 確かに内容を選ばなければ、東京は仕事に困ることはない。でも、正社員での転職活動がどのくらい厳しいかは、私もよく知っていた。しかも、憧れの同じようなデザイン職となれば、その可能性は一気に低くなる。1年では実務経験としては少ない。少なすぎる。全く同じような職場が見つかるかは、相当なラッキーに恵まれなければ叶わないだろう。

 3月が終わろうとしている。今のタイミングで転職活動をするのも時期が悪い。春入社の採用には、どう考えても間に合わない。かといって夜の仕事だけにシフトすれば、キャリアは育たない。履歴書に書けない空白の時間だけが増え、加齢とともに収入は減り、より条件の厳しい職場に移ることになる。私の方が年上なので、痛いほどその事実を知っている。いつまでも同じ条件が続くわけではないのだ。私だってあと10年後、同じことをして同じだけ稼げるとは思っていない。だから昼間の仕事を続けているし、そちらをメインに、夜のバイトは週に数回程度に抑えているのだ。

 朱音の方を向くことができず、私は正面を向いて運転に集中しながら、色々な事が頭を巡る。夜のバイトを辞めたとして、昼間の仕事に影響が出ないとはどうしても考えられない。例えバイトを辞めたとしても、朱音が不利な立場になってしまうのは、目に見えるようだった。バイトを辞めて、昼間1本にしたとしても、夜のバイトをしていたことが会社にバレてしまえば、退職に追い込まれるだろう。昼も夜も収入を失い、経済的に困窮することが分かりきっている。

 昼間の収入は確か月20万程だと言っていたと思う。昼間の仕事だけでは、今の生活水準を維持するのはどう考えても不可能だ。かと言って、今から家賃の安い所に引越しすれば、引越しでお金が掛かり、引越し貧乏になってしまう。私も朱音に貸せるほどお金に余裕はない。

 いつの間にか皇居の1周を終え、ペニンシュラの前を銀座方向へ左に曲がる。走りながらナビの操作はできないので、大体の記憶を辿りながら、車を走らせる。

「ほら、歌舞伎座だよ。」

 試しに口に出してみたが、思うような優しい声にならなかった。朱音は一言も発しないまま、変わらず窓の外を眺めている。左のウインドウに、朱音の顔が反射している。泣いているわけではないようだった。泣いて解決する問題では無いことを、私たちはよく知っている。東京を、女1人でサバイブすることが、どんなに厳しいか、私たちは身をもって体感している。改装を終え、綺麗になった歌舞伎座は、優しいライトで照らされていたが、いつものような親しみを感じなかった。

 そのまま晴海通りを海の方へ、まっすぐ東京を突っ切る。勝鬨橋を渡ると埋め立て地に入った。新しく東京が延長されているように感じる。計画的に開発された土地は、車線から大きく歩道が設定されていて、余裕を持った作りになっている。「しののめ」なんて、車を持つまで読めなかった。でも今は東雲と漢字をみて、即座に読むことができる。私も東京に馴染んできたのだ。

 お台場に入り、すぐのダイバーシティの駐車場に入る。コンクリートの通路を何度もカーブを登り、上へ上がる。六階のエレベーターのすぐ前に、スペースを見つけることができた。平日なので空いている。ぎこちなく何度か切り返して、駐車場に車を停めると、朱音は黙ったまま、シートベルトを外し、車から降りた。私も、後部座席のカバンを手に取り、後に続く。エレベーターの前の施設一覧の前で立ち止まり、

「フードコートでいいか…。」

 と、朱音に聞くわけでもなく呟いた。朱音も私も、春物の薄いコートのポケットに両手を入れたまま、歩く。こんな季節に合わせたコートひとつも、夜のバイトをしなければ、満足に購入することなんてできない。そんな現実的なことをふと思う。コートだって、パンプスだって、ちょっといいカバンだって、中に着ている清潔感のあるOLに相応しい服だって、化粧に使うデパコス一つだって揃える事はできなくなる。

 フードコートを店を見ながら1番奥まで進み、がらがらの一角に腰掛けた。

「何食べる?」

 一応聞いては見たものの、私も、きっと朱音も、立ち上がって何か食べようという気にならなかった。少し離れた一角で、外国人観光客の集団が楽しそうに声を上げている。中国人だろうか。コロナで少し落ち着いていたが、もう最近は東京のどこにいっても、外国人観光客で溢れている。そちらの方を見るわけでもなく2人で顔を向けていた。二人の子供を囲んで8人ほどの集団だ。笑顔の比率が高い。日本語ではない何かの言葉が、大声を上げた時だけこちらに届く。きっと英語ではない。観光地としての東京は、彼らにどんな風に見えているのだろう。

「先に何か買ってくるよ?」

 いつまでも、じっとしているわけにはいかないので、私から切り出し、椅子を引く。朱音は、

「私も行く」

 と、やっと声を出し、一緒に席を立った。

「何にしようかなー。」

 朱音に話しかけるわけでもなく、空間を埋めるように声にした。

「あたし、ラーメンにするね。」

 1番入り口のラーメン屋に早足で向かう。振り返ると、朱音はそこに立ち止まったまま、ぼんやりしていた。

「朱音もなにか、選びなよ。」

 奢ってくれる約束なんか忘れて、1人店に向かった。

 ラーメン屋の店員も外国人だった。ちょっとイントネーションのずれた日本語で、接客をしている。会計を済ませ、出来上がるとピーピーなる番号の振られた機械を渡されたが、席が遠いので、そのまま店の前でぼんやりと作業を見ながら待つ。母国語ではない日本語を使って、東京で仕事をするのはどんな感じなんだろう。私が彼らの国で、ラーメンを作って働くことを想像してみる。やっぱり現実感がない。飛び込んでみて絶対できないことはないとは思うのだが、飛び込んでみたいとは思えなかった。私は今の東京の生活が気に入っているし、今から生活に困らないだけの語学を勉強するのは億劫だ。偉いな、すごいな、とぼんやりと思う。

 さっきの席に戻ると、朱音はもう席に着いていた。

「韓国料理にした。」

 ラーメンの乗ったおぼんをテーブルに置く私に、朱音が呟いた。辛そうな赤いスープの鍋を前にしている。

「美味しそうだね。」

 私もそれだけいうと、食事に集中することにした。髪の毛を後ろでひとつに結び、少し豪華に注文したチャーシュー麺を啜る。朱音も、とろとろと箸に手を伸ばし、機械的に目の前の料理を口に運んでいる。相変わらず、お互いに言葉はなかった。あんまり、貧しい気持ちにならないように、チャーシュー麺を選んだのだが、何を食べているのかわからないほど、味がしなかった。

 朱音も焦点が合ってないようにぼんやり、食事に顔を向けていた。ある人は東京砂漠といい、またある人は冷凍都市といった、この東京で、私たちは2人だけ切り抜かれて、お互いしか存在しないような気持ちになっていた。朱音の生活の全てを支えるには、私は支柱としては弱すぎる。私たちは、それぞれ、なんとかかんとか、両足を踏ん張って東京に居座るしかないのだ。

「あたし、山梨に帰ろうかな。」

 朱音は、私に言うでもなく、呟いた。否定することも、肯定することもできなかった。一度田舎に帰れば、再度上京するのは、かなり大変になる。学生時代の友人の何人かが、卒業と同時に地元に帰るのを見送ったが、再び上京してきた人を1人も知らない。田舎でお金を貯めて、また戻ってくるよ、とみんな口を揃えて言ったが、地元で結婚して家庭を築いたり、うまく貯金ができなかったり、実家の親に反対されたり、みんな何かの理由をつけて、東京に戻ってくることはなかった。仕事のあてもなく、上京するのなら、200万から300万は余裕を作らないと、生活の拠点を移すのは現実的に難しい。それだけの貯金をするのは大変だし、できたとしても、結婚の費用に使ったり、少しいい車を地元で買ったり、実家の親に生活費をいれたり、家のリフォームに協力したりすれば、すぐに無くなってしまう。田舎の賃金は、東京より悪い。そんな話を腐るほど聞いている。朱音が一度田舎に帰れば、ズブズブと沼に足を取られるように、東京で見た夢もキャリアも捨てることになる。昨日まで朱音は、キラキラした目で、憧れの東京を、まるで昔から住んで居るようにカツカツと大股で歩いて、通り抜けて来たはずだ。おのぼりさんのように、高層ビルを見上げることもなく、早足で進む人の波に乗って、自然に東京の一部に溶け込んで居るのだ。

「あー、就職決まった時に、バイト辞めちゃうんだったな。」

 朱音の気持ちは痛いほどよくわかった。でも、一度手に入れた生活水準を捨てるのはそうとう難しい。憧れの就職が決まっても、現実的に今までの生活水準を維持しようと思えば、何かしらの副収入がないと、支払いは滞ることになる。朱音は今の職場に就職して、ようやく1年。この前会った時には、夏には初めてのボーナスが入ると嬉しそうにキラキラした目で話していたが、それもなんだか遠い昔の出来事のように感じる。

 朱音は、iPhoneを2台並べて、前に置いた。きっと、夜のバイト専用の携帯は昨日から、見てないのだろう。そんな気がする。開いても、絶望しか入って居ないように感じているだろう。

 テーブルに2台並べたまま、朱音はロックを解除した。どちらが夜のバイト用なのか、私には分からない。LINEの左上の赤丸の中の数字は13になっている。きっと、夜のバイト用の携帯のロックを解除したのだ。

「ねえー、怖いから、LINE読んでよ。」

 朱音は私に話を振る。他人の携帯の中を見るなんて、経験がない。どうしたものか、少し迷った。

「分かったよ。」

 私は、朱音の携帯を手に取ると、LINEのマークを押した。

 5人程が未読のまま蓄積されていた。朱音は普段からマメな方だし、返信も早い。きっと夜のバイトの営業も、そつなくこなして来ただろう。そんなに未読の通知を溜めているのは、朱音らしくなかった。一番上の、未読の数字が8になっているのが件の部長さんだろう。その画面から見える最後のメッセージは「連絡をください。」だった。

「なんか疲れちゃった。」

 1台に減った携帯を見つめながら、携帯を触るでもなく朱音は呟いた。明日は華金なので、夜のバイトがある。朱音だって、夜のバイトが入っているはずだ。2月の閑散期がようやく終わって、客足が戻ってきたところなのだ。春の陽気に乗らないわけがない。

 でもなんだか朱音が、このまま霧になって消えてしまうじゃないかと不安になった。それくらい、今の朱音に質量を感じない。元々、線の細い体型だが、足元から消えて来てるんじゃないかと思うほど、朱音にいつもの煌めきはおろか、質感がなかった。白く美しい透き通った肌は、彩度がなく、本当に手が通り抜けてしまうんじゃないかと思うほど、血色が消えて、透明だった。朱音に表情がない。朱音より背が高い私を、いつもキラキラした目でニッコリと見上げていたのに、視線がぶつかることもない。

 朱音は、社会人になってからできた、大切な同志だ。お互いに必死で、東京で生き抜いて行くために、時に愚痴をこぼし、同じ境遇にある者だからこそ打ち明けられる、本音の会話をしてきた。元々東京に実家がある人には分からないし、頼れる太い親がある人にも分からない。自分の足で立って、東京を生き抜いてきた同志だからこそ分かる会話だ。

 決して自分たちだけが苦労をしている、という事は思わない。私たちは好きで東京を選び、両足を踏ん張ってここで生活することを決め、好きで残ったのだ。地方に住んでいても、みんなそこで頑張っているし、東京に実家があっても、親の老後や自分の将来を憂い、ひたすら貯金に精を出している人を知っている。

 みんなそれぞれの場所で、それぞれの境遇で、歯を食いしばって生活していることを知っている。決して私たちだけが苦労しているわけではない。そう、私たちだけが苦労しているわけではないのだ。

 でも私は、朱音の境遇に同情しないわけにいかなかった。私たち二人が座っているこのスペースだけ床が丸く黒く抜けて、どこまでも堕ちていくような錯覚に陥る。私たち二人とも、東京で生き抜いていくために自然に身に着けた、すっと背筋と伸ばした姿勢さえ失っていた。背中を丸くかがめ、所在なさげにテーブルに向っている。このまま二人でわんわん声を上げて泣けたら、どんなにいいだろう。涙と一緒に、いつの間にか問題が解決して、なかったことにできたら、どんなにいいだろう。でも今声を上げて泣いたって、何も事態は変わらない。朱音も私も、それがよくわかってる。子どものようにわんわん泣いて、誰かが勝手に助けてくれたらどんなにいいだろう。でも私たちを助けてくれる人なんて一人も居ない。助けを求められる人が居るなら、とっくに甘えてこんなことにはなっていない。自分たちの力で、何とかしなくちゃいけないのだ。

 朱音を見ていると、私の方が泣いてしまいそうな気分になった。タバコが吸いたいと思ったが、もちろんここで火をつけるわけにはいかない。目の前の朱音の姿は、いつの日かの自分なのだ。

 朱音から受け取った携帯をテーブルに置くと、カツンと大きな音がした。その右手を伸ばし、朱音の左手に重ねていた。朱音の手は熱くもなく、冷たくもなく、そこにあった。

「ねえ、仕事ダメだったらさ、うちにおいでよ。」

 何も考えなしに言葉が出た。いつもよりずっと小さくなった朱音がやっと顔を上げた。

「ねえ、うちに来たらいいよ。一部屋しかないから、二人で生活するには狭いし、ベッドも一つしかないけどさ、一応セミダブルだし、何とかなるよ。」

 朱音のために何か言ってあげようとか、してあげようとうというわけでもなく、なにか考えがあって言ったわけでもなかった。ただ言葉が、口から続けてこぼれる。ベッドがセミダブルだからって、何ということもない。もう何を言っているのか、自分でもよくわからなかった。

「大丈夫だよ…。きっと何とかなるよ…。」

 朱音とようやく視線がぶつかる。朱音も目に一杯の涙をためていた。

「大丈夫だよ…。きっと大丈夫だよ…。」

 私はほかに言葉を知らないように、無意識に大丈夫と繰り返していた。私の方が先に涙が頬を伝う。

「大丈夫だよ…。」

 根拠のない言葉しか見つからなかった。言葉は尻すぼみになってしまう。それでも私の精一杯だった。大きな朱音の二重の瞼が、バチンと落ちる。いつものように、マスカラとアイライナーで大きく縁どられた目だ。

 人は本当にどうしようもなくなった時、音もなく涙を流すのだと思った。   朱音の頬にも大きな水滴が頬を伝い、そのまま下に落ちる。

「私は朱音みたいに正社員でもないしさ…、この先もずっと同じだけ稼げるかなんてわかないけどさ…、でも、大丈夫だよ。うちでゆっくり就職活動したらいいよ。朱音なら大丈夫だよ。」

 朱音に言っているのか、自分に言い聞かせているのかわからなかった。声のボリュームは落ちたまま、独り言のように呟いてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る