誰其 〜首のないスーツ男(ゆるふわ)が見えるOLの話〜
外並由歌
出会い編
1. はじめに
はじめにその人を見たのは社員寮の大浴場の脱衣所だった。スーツだった。
次に見たのは寮玄関。雨は降ってないけど星のない夜で、帰宅する社員に紛れて当然のように寮に入ってくる。そのときもスーツだったが、銭湯に向かう人のようにタオルを垂らした洗面器を抱えていたからまた大浴場に行くのかなと思った。
そして今。会社は休日の夕方の寮食堂内。スーツ姿の彼がふらふら歩き回っている。いい加減おかしいと思うので同期の
「芽里…あれ……」
「なによぉ
「いや、あれ……」
「フォークだいなり葉仁ちゃん」
「一瞬でいいから見てよ! フォークはどれも変わんないよ!」
彼女は渋々といった様子で私が指差す先を見た。その方向には例のスーツ男がいる。
彼のおかしなところは二点ある。第一にあんな人間社員にいない。
私の勤める職場はそこそこに大きいので一々人なんて覚えてないのも確かだけど、スーツはこの会社の制服ではない。制服は別にあるのだ。万一着用していたとしても式典のときだけで、しかもストライプ柄は許されていないから彼は少なく見積もっても部外者になる。
そして第二に。頭がない。
いや比喩でもなんでもなく。首から上がないのである。
なんか変なものでもある?と不満げな芽里の声がするけどどう考えたって変じゃないか。
「えと。見えない? ……スーツ」
「葉仁ちゃんスーツそんなに好きなのぉ? あっ、トマト要らないです」
「好きじゃないよ別に」
「でも禁断症状で幻覚見えてるんでしょ?」
「えー…、」
三点目が追加された。彼は私にしか見えないらしい。
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