第15話 潮の気配と神域への道

「ん~~、楽しかったな~。色々あったけど」


 夜が明け、旅の余韻が残る中で、彩葉いろはは大きく伸びをした。


「ところで彩葉、次はどこに行きます?」


 陽菜ひなの問いに、彩葉は一瞬考え込む。


「あ、決めてない……どうしよう」


「そうだなぁ~……」


 村正むらまさが腕を組んだ、その時だった。


「……ん? 手紙?」


「どうしました? 村正」


 村正は、自分の鎧に挟まっていた一枚の紙を取り出し、目を走らせる。


「……猿夢さゆからだ…………」


「なんて書いてあったんです?」


「――『三重県で陰陽師が伊勢神宮の結界を破壊しようと企んでいるらしい。現地に出動中の怪異警官のメンバーとともに解決してほしい』……だそうだ」


 空気が、わずかに重くなる。


「……悪い……人……」


 エイが、ぽつりと呟く。


「アイツらが……」


 くろも、眉をひそめた。


「どうする?」


 村正の問いに、彩葉は迷わなかった。


「もちろん! 向かうよ!」


 その言葉で、進む先は決まった。


 ――こうして次の目的地が定まると、彩葉たちは異空間移動列車に乗り、三重県へと向かった。


 列車を降り、外に出た瞬間。


「ここが……三重県……」


「三重は初めてですね」


 陽菜が周囲を見渡す。


「……海の匂い……が……します……」


 影が、すうっと息を吸い込んだ。


「ここにも海があるのか~」


 喰が感心したように言う。


「確か三重には、海女あまがおるんじゃったな」


 しおりの言葉に、影が首を傾げる。


「……海女?……」


「何だそれ?」


「海女とはな、潜水器具を使わず、素潜りで海に潜り、アワビやサザエ、海藻などを採る女性たちのことじゃ」


「……すごい……です……」


 影の目が、尊敬の色を帯びる。


「海女を狙う、とても危険な妖怪もおる。それに、苦しい仕事でもある。

 それでも続けてきたのが、この地じゃ。……これも歴史というやつじゃろう」


「このご時世でも、人を襲う妖怪がいるのか……」


 喰が低く唸る。


「……きけんは……ない……んです……か?」


「もちろん危険はある。じゃが、それに備えるのが人の知恵じゃ。

 それに、海産まれの守護者や、優しい妖怪たちの出番でもある」


「……なるほど……」


 影は、静かに頷いた。


「さて、他のみんなが先に行ってしまう。急ぐぞ」


「……あ……はい……」


「お前たち~、待ってくれ~!」


 喰の声を背に、彩葉たちは足を速める。


 やがてバスに乗り込み、目的地へ――。


 ――伊勢神宮。


 神々の気配が色濃く残るその地で、

 彩葉たちは、また新たな“異変”と向き合うことになるのだった。

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