第3話
小さな正方形の部屋の中、出口の扉も光もなく、真ん中に一人のぽっちゃりした少年が座って泣いていた。まるで世界そのものが彼に壊れてしまったかのようだった。
この乾いた場所は、ルーカスの心の中の世界だ。砕けた彼の心が映し出すのは、暗く閉ざされた、壁もない部屋。
「くっ、くっ、ジュリアナ……俺は……俺はお前を愛してるのに、どうしてこんなことをするんだ!!」
ルーカスの心は、過去の悲しい出来事を思い出し、深い悲しみに沈んでいた。しかし、この乾いた世界の中には、もう一人、背の高い痩せた少年の姿も立っていた。
『なぜ俺はここにいるんだ!?』
彼の心の中で、荒れた空気とこの乾いた空間は、少年に不快感を与え、理由もなく落ち着かなくさせる。
ルーカスが泣いている姿を見ると、その存在は即座にこの世界がルーカス本人と関係していることを少年に伝えた。そして、なぜルーカスがこの世界に引き寄せられたかも——それは、今のルーカスの魂が肉体と一体となっているからかもしれない。
『俺は何とかしなきゃ……ルーカスが消えない限り、この世界に何度も引き込まれる……』
その考えが浮かぶと、少年は思わず口を開いた。
「……ルーカス」
ルーカスの声に、泣き叫ぶルーカスの魂は、すぐに泣き止み、彼の目の前に姿を現す。目には深い悲しみと止まらない涙が溢れていた。
「教えてくれ……なぜこんな目に遭ったのか!」
ルーカスは、レオンと共に歩んだジュリアナの残酷な行為を思い出す。それは心を痛め、まるで呪縛のように彼を縛りつけていた。
少年は、ルーカスがまだその状態に縛られていることにただ頭を振るしかできなかった。ルーカスを愛しながらも、彼を救えずにいる。
しかし、ルーカスを慰める言葉をどうしても紡げないなら、少年は強引に言葉を吐き出した。
「これが、お前が裏切られた理由だ!
……どういう意味だって?
奴らは神ではない、ルーカス!悪者たちは、ただお前と愛を試す障害に過ぎない!そしてお前は、報われない愛に耐える代わりに、自分を愛する時間に使うべきだ!」
その言葉を聞いたルーカスは、以前よりも激しく泣き崩れた。
しかし、少年はためらわずにルーカスの前に手を伸ばし、強く叩いた。
「痛っ、な、何で殴るんだ!」
「お前に思い知らせるためだ!ルーカス、お前は誰かを本当に愛したことがあるか?過去はただ、自分を見ていただけだ!」
少年は怒りと情熱を込め、ルーカスを叩き、叱責し続けた。
ルーカスは泣きながらも、少年の言葉に従い、痛みに耐えるしかなかった。ルーカスの体は震えていた。涙と鼻水で顔はぐちゃぐちゃになっていたが、心の奥底にある痛みが少しずつ、少年の言葉で揺さぶられた。
「お前、ずっと一人で抱えてきたんだな……」
少年の声は冷たくもあり、優しくもあった。その複雑な響きは、ルーカスの胸に突き刺さる。
「一人じゃ耐えられない……でも、誰にも頼れない……」
ルーカスは嗚咽を漏らしながら答えた。心の中の孤独と絶望が、体を震わせる。
少年はため息をつき、ゆっくりとルーカスに近づく。そして手を差し伸べた。
「……俺がいる。お前は一人じゃない」
その一言で、ルーカスの涙は止まらなかった。涙は悲しみだけでなく、救いを求める声でもあった。少年の存在は、絶望の底に光を差し込むように感じられた。
「でも……ジュリアナは……」
ルーカスは震えながら言葉を続ける。愛されたいのに裏切られた痛みが、胸を締め付ける。
少年はルーカスの肩に手を置き、強く抱きしめた。
「過去は過去だ。お前は今、ここに生きている。誰かに愛される価値があると信じろ」
その瞬間、乾いた空間に小さな光の粒が舞い始める。ルーカスは驚きとともに、それを見つめた。光は少年の言葉と共鳴し、暗闇を少しずつ溶かしていく。
「……信じる……俺は、もう一度、誰かを愛せるのか?」
ルーカスの声は震えていたが、希望の光が混ざっていた。
少年は微笑み、ルーカスの髪を撫でながら言った。
「愛することは怖い。傷つくこともある。だが、それでも愛する価値はある。お前の心が強ければ、必ず幸せを掴める」
ルーカスは深く息をつき、心の中の痛みと向き合う決意を固めた。
乾いた世界はまだ完全には消えていないが、少年と共に立つことで、少しずつ現実の世界への道が見え始めた。
「……ありがとう」
ルーカスは涙を拭いながら、少年を見上げた。
「俺……もう一度、生きてみる」
少年は頷き、静かに微笑んだ。
「そうだ、それでいい。焦らなくていい。お前のペースで進めばいい」
ルーカスは初めて、心の奥底から安堵を感じた。絶望の中にあった自分が、少年の言葉で少しずつ救われていくのを実感する。
乾いた空間の中で、光はますます強くなり、ルーカスの心を包み込む。悲しみは完全には消えないが、希望と勇気が新たに芽生え始めた。
そして、ルーカスは深く息をつき、涙を拭いながら前を見た。
「もう一度、やり直す……」
少年は静かに頷き、彼の背中を押すように手を置いた。
乾いた世界はまだ残っている。しかし、二人で歩む未来への一歩が、確かに始まったのだ。
ギャルゲー世界の生活は、思っているほど簡単じゃない 二兎 @aomman
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