死んだらループする人型兵器を操るパイロット、死んだらトラウマで病んだらヒロインが過保護になってくれるファンタジー

三流木青二斎無一門

第1話



『エネルギー残存率、0%、完全停止状態』


神経に直接繋がれた共感覚プラグ。

脳内で機体を操作しようとするが反応なし。

焦燥感を覚えるのは、巨大な機械を操作するパイロット。

名前を新城しんじょうなおし

彼は優秀な遺伝子から複製されたクローン体・新城型の兵士だった。

天才の血筋を持つ彼は、それでも、機体が動かなければ唯の人間である。


「う、動け……動けッ」


機体のエネルギー残存率は0%。

最早、動く事の無い、鋼鉄の棺桶に過ぎない。


動作しない状態で、どれ程操作しようとも。

新城直は、このまま死を待つのみだった。


突如、衝撃。


「が、ァ!」


鋼を切断する音がコックピットの中に響き出す。

手足を動かそうと必死に脳内で命令を下す。


「く、そっ動けよッ!!なんで、動きさえ、すればッ!!」


新城直。

彼らが戦うのは強大な敵。

ある種の同種とも呼べる地球外の生命体。

肉体を構築する細胞が機械で出来た生物。

人は彼らを、ゼノスティールと呼んだ。

コックピットに熱が入り出す。

既に機体の機械熱を冷ます冷却体液は意味を成さず。


「死、にたくない、嫌だ、嫌だァああ!!」


彼の死に対する恐怖の声。

そして、貫通されたチェーンソーの刃。

新城直の肉体を細切れにする一撃が彼に死を与えるのだった。



……本来ならば。

それで彼の死は確定する筈だった。

だが、新城型と呼ばれる遺伝子には。

ある特殊な能力を秘めている事を彼自身含めて、誰も知らない。

死して発動する、その超能力は。

新城型の元となる肉体が遺した伝説へと繋がる由来と原因を発揮させる。



そして。

新城直の意識は、再度浮上するのだった。




「……」



懐かしい匂いが鼻腔を突く。

大きく目を見開いた状態で、新城直は真正面を見続ける。

教師が黒板に文字を記している。

郷愁を感じ入る木製の教室。

その中で、新城直の脳裏に過る自らの死に様。

巨大なチェーンソーにより、肉体を切り刻まれる苦痛。

思い出すと共に、新城直は鮮明な記憶がフラッシュバックする。


「あ、がッ、!!ああッ!!」


恐怖と共に声を荒げる。

その場にしゃがみ込み、新城直は神経に通じた痛みを覚えた。


「っ?」

「おい大丈夫か?」

「な、なおちゃんっ!!」


クラスメイトが心配する声。

痙攣をする新城直は、奇声を荒げながら、視界が白黒に暗転する。

気が付けば、新城直は意識を失っていた。



次に目を覚ました時。

彼の視界には白い天井が見えていた。

呆然と見続ける新城直は、教室で起きた時よりも冷静だった。


「……あ」


声を盛らす。

顔を横に向けると。

其処には、一人の少女が眠っていた。

少しふくよかな体型をする、彼女の姿を、新城直は見た事があった。


「もも、やま……純恋すみれ


懐かしい名前だった。

桃山純恋、幼少期の頃から、共に育成センターで成長した子供だ。

現在では、育成センターから離れて、中華料理店で住み込みで働いている。

中学生の頃から働き、その時から豊満な肉付きになっていくのを見ていた。


「ん……」


彼女が目を開く。

視界に入る青年の姿に桃山純恋は新城直を見詰めた。


「あ、な、なおちゃんっ」


桃山純恋は、新城直を幼少期の頃からの呼び方で呼んでくる。

それ程までに二人の関係性は密接した仲である事が分かった。


「もう大丈夫?痛みとかない?教室で倒れたのよ、なおちゃんは」


軽い説明をしてくれる桃山純恋に新城直は哀愁を感じ入る。

彼の記憶の中では、既に桃山純恋は死亡していた。

街を強襲する、ゼノスティールと呼ばれる機械生命体によって。

だが、今の彼女は若々しく生き永らえている。

それは嬉しい事ではある、今一度、彼女と喋れる事が、例え夢であろうとも。


(……夢、あの時に見たのは)


脳裏に過る、鮮明な記憶。

あれは決して、夢では語り尽くせないリアルな体験だった。


(あれが、俺の末路……?そんなの、無理だ、俺はもう、あれに乗るのは……)


ゼノスティールと戦う為に開発された機体。

総名称・キルギア。

そのパイロットであった新城直は身震いをする。

あの経験がトラウマとなり……今の彼は、パイロットとして生きる事は出来なかった。


「……なおちゃん」


恐怖に色を染める新城直に、桃山純恋は悲哀を感じた。

昔の様に、桃山純恋は新城直を腕を広げて抱き締めた。

小さい頃から、ゼノスティールによる空襲を経験した。

その度に震える小さな体を抱き締めてくれたのは、何時だって新城直だった。

彼の小さな体に溢れる勇気に、何度も元気づけられたのだ。


彼が何故脅えているのかは分からない。

それでも、彼の為に、桃山純恋は抱擁する。

彼女の柔らかな肉体で抱き締められた新城直は。

彼女の匂いと肉欲に、思春期特有の性の感覚を覚えていた。


(……幼馴染にこんな、感覚)


彼女の行動に新城直は、早々に拒否する反応を見せようとした。

だが、新城直は彼女の抱擁を解く真似はしなかった。

それは、前回の時も、新城直は桃山純恋に抱擁された事がある。


彼女の無償の愛に対して、反抗期に近しい感情を覚えた新城直は彼女を突き飛ばした。

そして心にもない言葉を口にして、それ以降、桃山純恋とは疎遠となったのだ。

後に、街が襲撃に遭った事で桃山純恋は死亡した。


それ以降、新城直には心の内に杭の様な後悔のしこりを感じる事になった。


(……突き放せる、訳がない)


新城直は、桃山純恋の抱擁を受け入れながら、感情の発散が出来ずに昂る。

そして仕方なく、新城直は彼女に声を掛けた。


「純恋、ありがとう、その……少し、恥ずかしい、と言うか、……俺も、男だから、さ」


遠回りに新城直は現状を伝えると、桃山純恋は首を傾げていた。

男、と言う言葉に、ようやく気が付いた桃山純恋はゆっくりと離れる。


(な、なおちゃん、そんな……わ、わたしを、女として、見てるってこと?)


顔を赤らめながら、けれど悪い気はしていない。

むしろ心臓の高鳴りが、新城直に対する好感度を示していた。


(ゼノスティールをやっつける為に、毎日、一生懸命頑張って訓練を続けるなおちゃん、かっこいいって思うし……幼馴染として応援しようと、思ってたけど……わ、私の事が好き、って事で良いのかな……?)


豊満な胸に手を添えて心臓の高鳴りを鎮めようとする桃山純恋。

そうして空気が桃色に変わりそうになった時。

保健室の扉を開く音が聴こえて来た。

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