姫様のペット係の俺、ペットになる😻~姫様の激きもペットのフリをしてモフモフしてたら、宮廷内のいじめを見つけたので、姫様を誘拐して一緒に冒険します!~
ああああ🐙
第1話 姫様のペットにならないかい?
ここが、俺の新しいカモか……。
そんなことを考えながら、王宮の廊下を歩く。
俺の獣医としての仕事はいたって簡単。
毎日、姫様のペットの様子を見て、掃除して、エサをやる。それだけだ。
美人だと有名な姫様のペットである。
犬か、猫か? いや、ドラゴンとか?
……まあ、さぞかし立派なペットだろう。
そんなことを考えながら、ペット部屋の扉を開けると――
「キモォォォォォォォォォォォッ!!!!!」
思わず魂の叫びが飛び出た。
メルヘンな装飾でまとめられた大部屋の中央に、毛、毛、毛。
人間と同じくらいの大きさ、ふさふさクソでかイモムシが
「おや、新しい獣医さんかな。よろしくね」
えッ、しゃべった?
人間以外で普通に会話できる生き物、初めて見たんだけど。
化物は能面みたいな顔を、じっとこちらに向けてくる。
「申し訳ないけど、急いで僕のお手入れと食事をお願いできるかな。あと10分で姫様が来るから」
妙に礼儀正しいな、お前。
まぁいい。
ペットが何だろうと、俺は仕事をして金をもらうだけだ。
そう思いながら、俺は化物に近づく。
「じゃ、体温測定からしますね~」
――って、どこで測ればいいんだ、こいつ。
まあ、この辺でいいか。
俺は適当に体毛をかき分けて、体温計を突っ込む。
表示された数値をそのままカルテに書き写す。
「君……」
不意に声をかけられて、ちょっとビクッとした。
「な、なんですか?」
「いや、何でもない……」
何でもないのかよ!
よく分からんが、次だ次。
「じゃあ、食事ですかね~」
部屋の
中には、山盛りの玉ねぎ。
化物のエサって玉ねぎでいいのか?
まあ、用意されてるってことは大丈夫なんだろ。
「口、開けてくださーい」
そう言うと、能面の口が、ガバッと開く。
怖ッ……と思いつつ、俺は玉ねぎをザッと流し込む。
化物はもぐもぐする。
そして、ゴックン。
からの――
「オエエエエエエェェェェ!!!!!」
急な
化け物はバタンと倒れ、床の上でピクピクと
「ええええ!? 俺、何かやっちゃいましたかぁぁ!?」
「君……」
かすれた声で、化物がつぶやく。
「イヌ科に、玉ねぎはダメでしょうが……」
「お前、イヌ科なの? その見た目で!?」
いや、そんな場合じゃない。
姫様のペットを殺したとか、普通に死刑案件だろ。
これ、逃げたほうがよくないか?
俺が逃げ出そうとした、そのとき。
「君、姫様のペットにならないかい……」
「え?……」
「そこら辺に僕の毛が落ちてるだろう。それを体にまといなさい。今の僕では、姫様の相手ができないよ」
「そんなの、すぐバレて――」
化物が俺の言葉をさえぎる。
「もう来ます。あと20秒」
はぁ!? マジかよ!
俺は必死に床に散らばった毛をかき集める。
気づけば、人一人が隠れられるくらいの毛玉になっていた。
俺はそこに飛び込む。
――ガチャリ。
扉が開く音がして、俺は思わず息を止めた。
コツ、コツ、と床を叩く音が近づいてくる。
いやいや、そんなことより待て、これ普通にバレないか?
俺、でっかい毛玉の中に隠れてるだけなんだけど?
コツコツが、すぐ目の前まで来て――
「モフモフ~~!!」
いきなり、抱きつかれた。
えっ、なにこれ!?
姫様はそのまま、全身で俺と毛玉にすりすりしてくる。
「モフモフ~! モフモフ~!」
いや、どういう状況!?
驚きすぎて、思わず毛玉の中から顔を出してしまう。
目の前には、姫様の顔。
――あ、終わった。
そう思った、瞬間。
「どうしたの? あなたもモフモフしなさい!」
「え? モフモフ……?」
……あれ?
よく見ると、姫様の目は開いていない。
まさか目が、見えてないのか?
姫様の年は15歳くらいだろうか。
どこか幼さの残る表情で、綺麗な金髪がふわりと揺れている。
「ほらほら、みんな大好き、モフモフよ! なに? 飽きちゃったの?」
「い、いえ、そんなことは……」
「なら、レッツ・モフモフよ!」
再び、姫様が俺に埋もれてくる。
「モフモフ~~!」
仕方なく、俺も付き合う。
「も、もふもふー……」
「モフモフモフフ!!」
「もふもふもふ……」
なんだこれ。何の時間だよ。
やがて姫様は満足したのか、俺の横にちょこんと座る。
「よし。今日のモフモフ、ノルマ達成よ! じゃあ、勇者様。お話の続きをしてくれない?」
「ゆ、勇者!?」
「な・に・よ~、今日はずいぶん様子がおかしいじゃない……て、あれ? なんだか声も違う気が?」
や、やべぇ。バレる。
「きょ、今日はちょっとノドの調子が悪くて……」
俺は必死に声色を作って、さっきの化物に寄せる。
こういう誤魔化しは、俺の得意領域だ。
「そ、そうなの。ごめんなさい。呪いで姿を変えられたんですもの、調子が出ない日もあるわよね……じゃあ今日は、もうお休みにする? お茶でもいれようか?」
なんだよ、急に優しすぎるだろ、この姫様。
でも待て。
化物が勇者って、なんだ。
――そう思って化物の方を見ると、あいつ、ニヤニヤしながらウインクしてきやがった。
あの野郎、姫様に自分が勇者だって嘘ついてるな!?
くそ、もうこうなったら、乗るしかない。
「いえ、大丈夫です。冒険のお話をしましょう。えっと……どこまで話しましたっけ」
とたん、姫様の顔が、ぱっと明るくなる。
「ほんと!? 大好き!」
そう言って、また俺に抱きついてくる。
ちくしょう、可愛いよ、この姫様。
「もちろん、全部覚えているわ! えっとね、あなたを犬に変えた大魔王がいるでしょ?」
あ、姫様の中では犬なんだな。
「――その四天王の一人を倒したお話よ。 しかも、小指一本で!」
どんな話だよ!
心の中で全力ツッコミを入れる。
だが、嘘なら任せろ。これも俺の得意分野だ。
「……ああ、そうでした。その続きでしたね。実はあいつ、四天王の中では最弱だったんですよ」
「四天王の中で最弱!?」
姫様が、ごくりと息を呑むのが分かる。
「ええ。本当の困難は、ここからで――」
それから俺は、嘘の冒険話を語り続けた。
姫様は感情表現がやたら豊かで、山場のたびに、
「ウヒャァァ!」
「がんばってー!」
「だ、大丈夫なの!?」
まるでその場にいるみたいに反応してくれる。
なんだよ。
嘘ついてるこっちまで、楽しくなってくるじゃねえか。
――ボーン。ボーン。ボーン。
話がひと段落したところで、ちょうど部屋の時計が鳴った。
姫様が、ピョンと立ち上がる。
「今日のお話ノルマ達成! 勇者様、本当に楽しかったわ。ありがとう。続きは、明日の楽しみにしておきますね」
ぺこり、と頭を下げて、姫様は部屋を出ていった。
俺は、しばらくその場で呆然としていた。
「……結構、うまくやれてたね。姫様も楽しめたみたいで、よかったよ」
化物は、まだ少し体調が悪そうにしながら言った。
「お前な……勇者なんて嘘つきやがって。この先どうするつもりなんだよ」
呆れながら、俺は化物に近づく。
「嘘じゃないよ。僕は、本当に勇者さ」
いたって真面目な顔で、化物は言う。
……こいつ、イカれてるのか?
「いいか。確かに、去年の大魔王討伐のあと、勇者は行方不明だ。まだ、魔族と人間がピリついている中で勇者を名乗る詐欺師も多い……だがな、まさか化物が勇者を名乗るとはな、さすがに信じられんぞ」
「へぇ……嘘を見破るのが得意かい?」
「まあ、そうだな」
「君が、
「そうそう――って、えッ?」
は? ま、まさかあのことがバレてないよな?
「君、本当は獣医じゃないよね?」
――やっぱ、バレてたぁぁぁぁ!!!
* * *
「モフモフ~~!」
「もふもふー……」
――翌日
俺は今日も、モフモフしていた。
「んんっ……」
俺に抱きついた姫様は、目を細めて小さくノドを鳴らす。
まるで、安心できる枕を見つけた子どもみたいだ。
かわいいな、ほんと。
化物には獣医じゃないってバレたが、ある条件で秘密にしてもらっている。
条件はひとつ。
「化物の代わりに、姫様を楽しませること」
俺も生活がある。
給料のいいこの仕事を、簡単に手放すわけにはいかない。
「ねぇ、勇者様。お話の続きをしてくれない?」
「もちろん!!」
化物よ、安心しろ。
俺は嘘つきのプロだ。
詐欺師として、獣医以外にも、商人だの貴族の使いだの、何にでもなってきた。
姫様を
俺はまた、でたらめな冒険を語って、姫様を楽しませた。
やがて話がひと段落したころ。
「ねぇ、勇者様」
姫様が、少しだけ真面目な声で言う。
「あと一か月で、勇者様の呪いが解けるんでしょ? 人間に戻るんでしょ?」
へ? そうなの?
あのクソでかイモムシめ。
また姫様に変な嘘ついてやがる。事前に情報共有しとけよ!
「あー……ええ。たぶん、そうですね」
仕方なく、話を合わせる。
すると姫様が、ぽつりとつぶやいた。
「……私も、冒険に連れていってくれない?」
「エっ」
思わず、変な声が出た。
「ご、ご冗談を。王宮の方が安全ですよ。美味しい食事も出るでしょうし――」
ボーン、と時計が鳴る。
姫様は、ゆっくり立ち上がって、扉の方を向いた。
「……そうね。ごめんなさい。変なこと言っちゃった」
そのまま出ていくかと思ったが、姫様は一度だけ振り返る。
「ではまた明日! 私、他のデイリーミッションもありますので。ノルマ達成しないと!」
そう言って、元気に手を振って部屋を出ていった。
でも、俺には分かる。あれは、完全に空元気ってやつだ。
「冒険には、連れ出してあげないのかい?」
背後から、化物の声がした。
相変わらず、まだ少し体調は悪そうだ。
「絶対しねぇよ。勝手に連れてきゃ
化物は、ハハハと笑う。
「正直でいいね」
何だろう。
何度も嘘をついてきた俺だけど、この化物には、嘘が通じる気がしない。
「それによ、姫様も冒険に
「どうだろうね」
化物は、少しだけ声の調子を落とす。
「君、王宮の人たちの会話に、耳をすましてみるといい。姫様の気持ちが、分かると思うよ」
「はぁ……?」
「食料倉庫のあたりに行っておいで。ついでに、ジャガイモを持ってきておくれ。昨日のダメージが、まだ残っていてね」
「お前、イモ食いたいだけだろ」
とはいえ、体調を悪くしたのは俺のせいでもある。
仕方ない、行ってやるか。
それにしても、王宮の人の会話ねぇ……。
――――――――――――
読んで頂きありがとうございます。
2話完結の短編です!
2話目も本日投稿します。
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