第5話 公式Q&Aを出したらAIっぽいって燃えたんだが

「ひよりさん、今の状況、Q&Aで言うとこうです」


新人文官セナが、さらっと言った。


「Q:この国、何がしたいの? A:炎上を止めたい」

「雑」

「Q:でもみんな何してる? A:炎上してる」

「雑」

「Q:じゃあ誰が片付ける? A:ひよりさん」

「雑すぎる!」


セナはにこっと笑った。


「バズる要約って、だいたい雑なんです」

「それを国政に持ち込むな」


運用改革室(仮)。

皇帝カイゼルが言う。


「門は開けた。転売も取り締まる。だが、民が理解していない」

「理解してないというか、読みません」


セナが即答した。


「長文はスキップされます」

「やめてくれ、現実の話は刺さる」


皇帝は私を見る。


「ひより。短く、分かりやすく、炎上しにくい“公式”を作れ」

「無理難題」

「できるだろう」

「期待が重い」


隣で運営神官オットーが、紙束を抱えて青白い顔をしていた。

炎上で徹夜すると、人はだいたいこの色になる。


「ひより様……規約は……」

「改定しない。まず、改定しないことから始める」


オットーが泣きそうになる。


「でも、みんな言うこと聞いてくれないんです!」

「聞かせようとするな。読める形にしろ」


セナが真顔で言った。

「形式が命です」

「形式が命の国、嫌だな」


視界の端がチカッとした。


```

【THINKING...】

目的:鎮火/詐欺↓

制約:短い/読み飛ばされない/箇条書きは燃える(前回学習)

候補:A 長文声明 B 俳句 C 3行Q&A

採択:C(Z世代向け)

```


「……神までZ世代向けとか言い出した」


騎士団長リオンが腕を組んだまま言う。


「Z世代とは何だ」

「説明すると長い」

「長いのはスキップされます」

「正義が短いの、怖いな」


監査官レンが淡々と言う。


「短くすると誤解が増える」

「だからQ&Aにする。誤解されそうなところを先に潰す」


私はペンを走らせた。

「まずは三つだけ。三つならギリ読まれる」

「四つだと?」

「長いって言われます」


セナが即答した。

「数字の圧で」


数字の圧で人生が決まるの、嫌すぎる。


```

【公式Q&A(暫定)】

Q:人間味証明書、必要?

A:任意。門は止めません。

Q:神託(自動筆記みたいなやつ)、使っていい?

A:使ってOK。詐欺と盗みと嘘はアウト。

Q:「魂がない(AIっぽい)」って何?

A:定義:気分。だから文体で裁かず、行為(詐欺)を裁きます。

```


オットーが顔を引きつらせた。


「“定義:気分”って書いたら燃えませんか」

「燃える」


レンが即答した。

「だが、事実だ」

「事実で燃えるの、やだな」


皇帝が紙を覗き込む。


「最後の一文、良い。文体ではなく行為」

「はい。文体で裁くと冤罪が増えます」


レンが小さく頷いた。

「正論だ」

「正論回です」

「自分で言うな」


皇帝がオットーに命令する。


「これを掲示板の一番上に固定しろ」

「こ、固定すると、コメントが……」

「コメントは燃える」


セナが即答した。

「燃える前提で設計します」

「設計とか言うな、運営が偉く見える」


十分後。

吟遊掲示板の広場に、私のQ&Aが貼られた。


燃えた。


「この文章、整いすぎ。自動筆記だろ」

「“詐欺と盗みと嘘はアウト”って、逆に魂がない」

「定義:気分って逃げじゃん」

「ひより本人が自動筆記人形(オートマタ)なんだが?」


ミミが大声で叫ぶ。


「それ禁術(AI)でしょ!?」

「燃料を投下するな!」


セナが紙束を捲っている。


「スクショ(写し)回ってますね」

「もう?」

「もうです。拡散速度は正義です」

「正義が速いの、怖いな(二回目)」


オットーが青ざめた。


「やっぱり規約を……!」

「改定するな」

「改定したら死にます!」


その瞬間、私は気づいた。

レンも気づいた。


「……これ、炎上が本体じゃない。詐欺だな」

「うん」


セナが紙を出す。


```

1位:#公式Q&A_魂がない

2位:#人間味係数5_在庫あります

3位:#公式のやつ買えた

4位:#ひより本人がオートマタ説

5位:#温かみ盛り

```


「二位と三位、明らかにやってるだろ」


リオンが低い声で言う。


「誰かが“公式”を売ってる」

「はい。“人間味証明書”も、“公式Q&A”も、“公式っぽい安心”が転売されてる」


オットーが叫ぶ。

「そんなの禁止です!」

「禁止しても売れます。需要があるので」

「現実の友達すぎる」


私はリオンを見た。


「現場、押さえられます?」

「今すぐ」


レンが続く。


「私は証跡を取る。摘発は“気分”じゃなく“詐欺”でやれ」

「はいはい、ログ出して」


私はミミを見た。


「ミミ」

「はい! 通報なら!」

「通報じゃない。買うふりして、場所を聞き出して」

「潜入!?」

「そう。通報は後」

「分かった!」


ミミ、こういう時だけ賢い。情熱の方向がズレてるだけで。


市場の裏手。


「はいはい、こちら“人間味係数5”です。今だけ“温かみ盛り”付き」


怪しい男が、小さな紙束をちらつかせた。


「これ、公式ですか!?」


ミミが目を輝かせる。


「公式です! “公式っぽい”です!」

「自分で言うな」


「しかもQ&Aの“解説版”付き。読まなくていい。雰囲気で分かる」

「雰囲気で分かるのが一番危ない」


背後からレンの声。

男が振り向いた瞬間、リオンが前に出た。


「盗品と詐欺の現行犯だ」

「えっ、でもこれ、紙だよ!? 紙は人間だよ!?」

「紙だからこそ詐欺ができる」


私が言う。

「“人間味”を売るな」


男は連行されながら叫んでいた。


「だってみんな欲しがるんだもん! 係数5! 推しに勝てる!」

「推しに勝つな」


セナが小声で言った。

「推しは推すものです」

「また名言が出た」


摘発は終わった。

でも、鎮火はしない。燃える場所が移動するだけだ。炎上ってそういうもの。


私は運用改革室(仮)に戻って、皇帝に報告した。


「転売屋は押さえました。でも、根本は“安心を買いたい”のが原因です」

「つまり?」

「Q&Aを増やします」

「増やすのか」

「でも、増やすと読まれません」


セナが即答する。

「なので“毎日一問”がいいです」

「毎日投稿……」


私は遠い目をした。

異世界に来てまで、毎日投稿の運用アカウント……。


皇帝が笑う。

「お前に向いている」

「向いてないです」


レンが静かに言う。


「今日の収穫は一つ。文体で裁くと、詐欺が笑って儲かる」

「うん。だから私たちは“詐欺”を潰しながら、“読める説明”を出す。地味に」


リオンが頷く。

「地味は強い」

「なにその名言」


セナが小声で言った。

「今回の話、なんかちゃんと分かる回でしたね」

ミミが被せる。

「モデルのバージョン上がったからだろ」

「違う! 人間が要約した!」


私は机の紙を取り直した。


(公式Q&A、毎日一問。社畜の異世界運用、始まります)


---


## 生成ログ(架空)

- 使用モデル:ORACLE-神託 v3.12(宮廷カスタム:Q&A最適化)

- 消費:prompt 1620 / output 1060

- temperature:0.6(燃えるので無難寄り)

- 幻託率:低(レン談「詐欺を摘発」)

- 運営注記:魂なき言葉は禁止です。

- AI自己レビュー:公式Q&Aが燃えるのは想定内でした。次回は“毎日一問”が連投扱いで通報される予定です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2026年1月12日 03:00 毎日 03:00

AI禁止の異世界に召喚されたけど、本作はAI生成物なんだが? @hoshiha_rei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画