最後の一服

かんざし こころ

第1話 最後の一服

 ほぼカートンであったタバコも最後の一本。

 名残惜しいな。

 すっかり慣れてしまった手つきで火をつける。

「久しぶりじゃん。」

 彼女が声をかける。

 僕は味わうように肺に溜め込み、吐き出す。

「これ、最後だったから勿体なくて。」

「どうせ、また吸うでしょ?」

 いたずらっぽく笑う。

「んー。それはないかな。あんまり美味しくないし。」

「それにしては旨そうだったぞ。」

 私にも寄越せ、と言わんばかりに手を差し出す。

「もう、ないんだってば。」

 必死に笑顔を取り繕おうとしたがダメだった。

「なに、泣いてんの?」

「……目に煙が入った。」

「そっか。」

 ボロボロと泣き崩れる僕を見て彼女は続けた。

「タバコはモテないから、これでやめなよ。」

「……うるせぇよ、ヤニカス。」

 あはは、と笑った彼女は小さく手を挙げる。

「ごめんね。でも、この3分間はいい土産になったよ。」

 持つ指に熱が伝わってくる。

 もう、終わりか。

「……気が向いたら、そっち行くよ。」

「まだ、はえーよ。」

 灰皿に押し付けた火が消え、彼女も煙と共に消える。

 墓参りは、タバコでいいか。

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最後の一服 かんざし こころ @kokoro_kanzashi

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