月の女神とドジな便利屋
桜井 サクラ
第1章
第1章 第1話 「町の便利屋さん」
王都から遠く離れた、時間の流れが淀むようなのどかな町。
その裏通り、ひっそりと佇む古びた建物の二階。ネコミミ属のルーラは、学園を卒業してこの町に移り住んだものの、なんとなくでやり始めた「町の便利屋」を惰性のように続けている。
今日も一日が終わりを告げようと、窓から差し込む夕日の光はほこりを含んで重く、彼女の髪に孤独な影を落とす。ルーラは椅子にもたれ、今日の反省点を反省しつつ外の光をただ見つめていた。
「んっ、ん……」
ルーラは、窓からじっと女の子を見つめていた。5歳くらいだろうか。泣き出しそうな顔で、何かを探している。ここから声をかけることもできた。しかし、ルーラの「人見知り」な性格が、今すぐ声をかけることをためらわせた…
しかし、ついに女の子は耐えきれなくなり、小さな声で「たまぁーーー、どこ行ったのぉーーー、びぇーーん!」と泣き出してしまった。
その瞬間、ルーラの耳元で、ひそひそと声が聞こえる。光の精霊、ルクの声だ。
「ねぇ、ルーラ。あの子、猫を探してるみたいだよ」
ルクの声に、ルーラは
(でも、私には関係ないでしょ…)
と、心の中で呟いた。
「ねぇ、ルーラ。ボクも手伝うから探してあげようよ」
その一言が、ルーラの心を動かした。観念したかのように、ぎこちない足取りで女の子の方に向かった。
突然現れた見慣れないネコミミ少女に警戒したのか、泣き止んでルーラをじっと見上げる。
ルーラは、その様子にさらに緊張し、どもりながらも勇気を振り絞って口を開いた。
「ね、ねぇ。その…猫、さ、探してるの?」
ルーラのぎこちない問いかけに、女の子は少し驚いた顔をしたが、すぐに涙目で応えた。
「おねーちゃん、だれ??」
女の子の純粋な瞳に、
「わ、私は……便利屋よ!」
と、目を反らしながらも力強く言い放つ!
「ホントに探してくれるの?」
「ホントにホント!!待ってなさいっ!猫探しは、私の得意分野だもの!」
ルーラは女の子が持っていた猫の写真を見て、探索魔法を使う。両手を広げ、町全体に魔力を広げるように集中すると、微量な生体エネルギーを探知した。ルクがその中から猫の生体エネルギーにシンクロすると、ルーラに映像を送る。
「見つけたぁ!そんなに遠くないわ」
ルーラは、女の子を連れて猫がいる場所へと向かった。そこは、小さな公園の奥にある高い塀の上だった。ルーラがそっと手を伸ばすと、怖がったタマが突然ルーラの胸元に飛び込み、よじ登ろうとする。その拍子に、彼女の服が、ビッと派手な音を立てて裂けてしまった。
ルーラの服は、タマによって、肩から胸元にかけて大胆に破かれてしまう。
「ひゃぁああ!!」
ルーラは慌てて破れた胸元を片手で抑えながらも、無事にタマを捕まえた。
女の子は、タマを抱きしめて満面の笑みを浮かべる。
夕暮れ時、ルーラは女の子を家まで送っていくことにした。
家に着くと、女の子の母親が心配した表情で二人を出迎えた。
「どこ行ってたの!ミア!心配したんだからね!」
母親の言葉に、ミアは笑顔でタマを抱きしめる。
「おねーちゃんが、タマを探してくれたの」
それを聞いた母親は、ルーラを温かい目で見つめ、心から感謝の言葉を口にする。
「そうだったの。探してくれてありがとう」
「ありがとう!」
ミアも満面の笑みで、ルーラに礼を言った。
その瞬間、母親はルーラの破れた服に気づき
「あら、服が破れてるじゃない。私、この町で仕立て屋をしているの。ステラよ。よろしくね。ミアがお世話になったから、綺麗に直してあげるわ」
ルーラは、恥ずかしさで顔を赤らめながら、言葉にならない声で断る。
「けっっ、けっ、けっこ、結構ですぅー」
だが、ステラはルーラの様子にお構いなく、優しくもきっぱりと言い放つ。
「さっさと脱ぎなさいっ」
その一言に、ルーラはとうとう、大粒の涙を流しながら叫んだ。
「い、いやぁぁーーっ……!!!」
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