毒舌幼馴染に透明マントを渡したらキスされた

@pastry-puff

なんか言った…?




「…はぁ、あんなに教えてあげたのに19点って。私が教えてあげた時間返して欲しいんだけど」

「ほんと面目ないっす…」

「おばさんから頼まれてなかったら教えてないからね」

「マジで感謝してます」

「はぁ…」


ため息をついて席から立ち上がる。

キリッとした目でこちらを睨み、長い髪の毛を耳にかける。


「この結果だとおばさんに悪いから……今日もあんたの家に行くから」

「うっす、おねがいします」


振り返りもせずに自分の席へと戻っていく。

絹のような髪が歩いて靡く。


「くっそ…今回こそ行けたと思ってたんだけどな。最近、あいつにばかにされてばっかだな…いや、俺がバカなんだけども」


自分が悪いことは理解している。だが、どうにも釈然としない。

付き合いの長い幼馴染なんだから、もう少し優しくしてくれても良いとは思う。


「昔はあんなんじゃなかったのに」


ボソッとそう呟く。


———あの頃の夏美は、いつも笑っていた。


夏の夕方、公園の隅で”透明人間ごっこ”をして遊んだことがある。


今思えばよくわからない遊びだが、当時はそれだけで楽しかった。


段ボールを被って『見えてな〜い!』なんて言いながら、お互いに笑い転げて最後に二人とも転んだ。


あんなに可愛かった夏美が、今は目の前にあるような仏頂面に……あれ…?


「なんか言った…?」


席に戻ったはずの夏美が、いつの間にか目の前にいた。


「なんも言ってないっす…なんで戻ってきたんすか?」

「…戻ってきちゃ悪い…?」

「嬉しい、メッチ嬉しい」

「あっそ…」


こちらを一瞥した後、いつも通りの仏頂面で『消しゴム取りに来ただけだから』と言って今度こそは席へと戻っていった。


本当に昔は常に笑顔満面で愛嬌がある子だったのになぁ……今じゃあの通り、笑顔のひとつすら見せてくれない。


透明人間ごっこでもやれば笑顔になってくれるのか。


「…なんか笑わせたくなってきたな」


ふといたずら心が湧いてくる。

今の彼女を笑わすことができたら、一体どうなるのかと。


「今日の放課後、あの仏頂面を笑わせてやるか…」


そう考えが改まると思わず口角が上がる。


一体今の彼女はどんな顔で笑うのか……そのことを考えながら、彼女の方を見つめていると目が合った。


『キモッ』


教室内の喧騒で声は聞こえなかったが、口の動きからしてそう言った。


「…徹底的にやってやる」


こうして、毒舌幼馴染を笑わせる決意を固めた。 





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