雨の匂いに誘われて

クリトクらげ

第1話 雨の匂いに誘われて

「いいか?晴は俺達の言うことだけを聞いてればいいんだ」


「はい、」


「じゃあ、それが終わったらはやく寝ろよ」

そういい親父は扉を閉めた。


「ちょっと、あなた、」


「いや、これはあいつのためだ。」


「、、、」

窓を閉めても微かに聞こえる母と親父の会話。


(俺のためってなんだよ)


息が詰まりそうな部屋の空気を変えようと、俺は部屋の窓を少し開け、机に向かった。


しかし俺はむかつきながらも親父に渡された問題集を解いていた。


ここまでが俺の日課だからだ。


親には迷惑をかけたくない。

かといって反抗する気力もない。

なぜ反抗したいのかもわからない。


自分のやりたいことが、俺は自分でもわからない。


(ほんとの自分て、なんだろ)

そう思いつつ、わからない問題と向き合っていた。


その時、微かな風と共に入り込む独特な匂い。


好きでもないし嫌いでもない。


でもなぜか、いつもとは違う匂いで少しだけ気になった。


俺は窓を開け、外を見た。


窓を開けた外には、大量の雨、ではなく、霧のような軽い雨粒が降っていた。


(、、、)


なぜか僕はその時、暗闇の中に降る霧の世界の中を歩きたい。


そう思った。


僕は耳を澄まして、バレないように慎重に靴を取りに行った。


幸いなことに、俺の家は平屋で、窓から降りれるようになっていた。


ガラガラ、


網戸を引く音が微かになる。


「よっ、」


砂利を避け、コンクリートのある場所に飛び乗った。


そして窓を閉め、僕は上を向いた。


(あれ、なんか変な感じ、)

霧が目に入っても、痛くない。


いつもなら目を閉じているのに。


(あれ、月見える、)


雨だったら見えないことが多い月が、今日は隠れることなく、僕らを照らしていた。


(夜はちょっと冷えるな、)

午前との気温の差を感じていた


少し震える体。


そして、霧と言っても降っている量はそこそこだったため、少しづつ鼻先に水が垂れてゆく。


(傘、忘れてきちゃったな、)

あまりにも家の中を警戒していたため、他のことを忘れていた。


(どうしようかな、)

家の影に隠れていても、どこか落ち着かない。


僕はそう思い、ある公園を思い出した。


(あ、あの屋根のとこ、)


その公園というのは、昔、保育園や小学生の頃、生き物を取りに行くために授業で行っていた公園だ。


学校からも遠すぎず、あまりいくことはなかったけど、いい思い出が残っている公園だった。


俺の家からは10分程。


住宅街の坂道を下ると、どんどん人気がなくなる。


そして、街灯もなくなり、木々のせいで月の光も見えず、俺は暗闇の中歩き続けた。


そしてその公園に近づくにつれ、ある匂いが気になった。


(この匂い、なんか懐かしいな、)


そう思いながら、僕は歩く。


そして、公園に着き、その匂いの正体がわかった。


公園の入り口には、金木犀が咲いていた。


(もう10月か、)


時間の経つ早さを感じながら、ベタベタと軽く張り付く、服をパタパタと仰ぎながら屋根のあるベンチに入って行った。


「ふぅー、、」

屋根の下に立ち、俺は一言。


「え?」

どこからか、声がした。


「うわ!」

俺は結構暗闇がすこし苦手だった。それに加えてどこからか声。


僕は思わず声が出た。


「あ、いや、すいません」

声がする方を見ると、制服の上にパーカーを着た高校生。


見た目は同い年くらい。


けれど容姿は月とスッポンという言葉が似合うほど、その容姿は美しく、少し濡れた髪の毛、モデルのような体型に、整った顔。


誰もが人目見てこういうことだろう。


(可愛いな、)


これを一目惚れと言わないのなら、この心臓の鼓動は嘘をついている。


そう思わせるほど、僕は目が合ってから緊張していた。


「あ、すいません」


しかし、それとこれは話が違う。


どれだけその人が可愛いくても、こんな夜中に相席するのは、どこか違うと感じた僕は逃げるように去ろうとした。


しかし、冷たく小さな手が、僕の腕を掴んだ。


「まって、」


俺は振り返りまた名前の知らない彼女と目が合った。


再び速くなる心臓。


「ど、どうかしました?」


俺は焦ってしまい、一言言った。


「いや、せっかくなので、」


(、、、え?)


「せっかく?」


俺は思わず聞き返した。


「せっかく。」

そう言いながらうなづく彼女。


(な、なんだ、せっかくって、)


(でも、まぁ、この人が言ってるし、)


「わかりました」


俺がそういうと、腕を離し、彼女は座った。


「じゃあ、失礼します、」


そして俺も続き、少しスペースを開けて座った。


その人が僕との間を見つめた後、俺の目を見た。


(あ、あれ?もうちょい?)


僕はそう思い、もう少し離れた。


そしてまた目を合わせる。


少し不満そうな顔をするその人。


(え、え?もう少し?)


僕はまたスペースを広げた。


そして、その人の方をみようとした時。


トン


軽い何かがあたるような音と感触。


そして微かに香る、いい匂い。


また僕の心臓が速くなった。


その人は僕との距離を無くし、話し始めた。


「君はなんでここに逃げてきたの?」


その人は、膝を組み、手で頬を支えた顔を覗き込むように言った。


その瞬間、ここにきたのがなぜか、自分でもわからなかった自分の気持ちが、少しわかったように感じた。


「多分、逃げたかったんだと思います。」


「言われたことをやるだけの生活を続けてきたせいか、何がやりたいのか自分でもわからなくて、」


「多分、そんな自分から、何者でもない人になってしまいそうな自分から逃げたかったんだと思います。」


そう口に出した瞬間、心が少し軽くなった気がした。


初対面の人にこんな話をするのは失礼だと思う。


けれど、俺は思わずその言葉達を吐き出してしまっていた。


「すいません、こんな話、きかせ、、」


そう言いかけた瞬間、その人は話し始めた。


「そっか。」

「それは怖いね、」


「私もたまにあるよ、そういうの。」


「どんどん変わって行く周りの人達と変わることのできない自分を比べちゃったり、自分の一番大切な物を失いかけた時、それを実感する」


共感なんか求めてない。


そう思っていた。


でも、話を進めるうちに、自分だけじゃない。そう気づかせてくれたようにも感じた。


それと同時に、俺はそう話す君の顔を見て、心が締め付けられるのを感じた。


そして、少し経ち、俺は口を開いた。

「君の名前は?」


少し考え込むその人。


「んー、こうしよっか」


そう言いいながら少し楽しそうに笑う。


「お互い、名前を出すのは無しで」


(なんでだろ?)


(まぁ、楽しそうだし、可愛いしいっか、)

という理由で俺はそのことについて何も言わなかった。


「じゃあ、なんて呼べばいい?」

俺は言った。


「んー、」


「君、高校何年生?」


「高1です」


「ふーん、」

そう言いながら、その人はニヤつき始めた。


「私はね、高校2年生なんだー」

嬉しそうにそう話すその人。


(年上だったんだ)


「じゃあ先輩って呼んでいいですか?」


「いいよー」

「じゃあ私は後輩君って呼ぶことにするね」


「はい」


呼びなれていないその言葉、それに加えて目が会うたびに緊張する心臓。


俺はいつばれてしまうのか。

そんな不安の中話していた。


プルルルルルル、プルルルルルル


先輩の携帯がなった。


「あー、もうこんな時間か、」


時間は3時20分


(ほんとだ、だいぶ経ってる)


俺が家を出たのは大体12時30分くらい。


(そろそろ帰ろうかな)


「じゃあ、俺も帰ります。」



「おけ、じゃあ解散しますか」

先輩がそういい、屋根の下から出た時、霧が止んでいたことがわかった。


(霧いつのまに止んでたんだろ、)


そんなことを思っていると、先輩は僕がきた方向とは真逆のもっと暗い道から帰ろうとしていた。


しかし突然振り返り、手を口に当て言った。


「後輩君!」


その声はよく聞こえた。しかし、それと同時に晴と呼ばれたいとも思ってしまった。


「次の雨の日も、ここに来る?」

その言葉に、ドキッとした。

先輩に誘われている、そんな気がした。


そして、僕は心の底からの言葉を伝えた。


「行きます!絶対に!」


そういうと、先輩は振り向き、暗闇の中へ歩いて行った。


先輩が暗闇の中に溶け込むまで、俺はその後を目で追ってしまっていた。


先輩が見えなくなった後、俺は振り向き再び歩き始めた。


そして家につき、僕は飛び出した窓に手を掛け、音のならないように登った。


そして、靴を玄関に置きにいき、手をつけていない問題集に手をつけた。


幸いなことに、俺は夜に強い。


少し時間はかかったけど、5時くらいに終わり、寝るとこにした。





































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