黒魔法-1

黒魔法-1




ギルドの拠点に戻った俺に、例の丸っこい小さい男が近づいて来た。小さい上に顔がひげで埋まっているので、表情が全く分からない。小男が俺に質問する。

「おい。アルガスはどうした?あと、バズとガロは?」

俺は町で起きた事情を、アルガスとオズロ兄弟が死んでいたことと、冒険者ギルドと揉めそうなことを説明した。小男が驚いたようなポーズを取って、わめいている。

「マジかよ・・・アルガスも居ないのにやるのか」

俺は小男を見下ろしながら、少し気になったことを聞く。

「そう言えば、バズとガロと貴方以外のメンバーを見たことが無いんですけど、どこに居るんですか?」

小男が俺を見上げて答える。

「この拠点に居るのはもう3人だな。それぞれが子分を持っているが、子分にこの場所は教えられていない。お前がいきなりここに招待されたのは例外だ。黒魔法使いだからだな」

まさかのVIP待遇だったらしい。俺は気になったので聞いてみる。

「黒魔法使いって少ないんですか?」

小男が答える。

「そりゃ少ないだろう。契約するにも生贄とか使うし、魔法を使うにも寿命を使う。忌み嫌われるし、真っ当な奴なら手を出さない」

言われてみればそうだ。冒険者ギルドでは関わるのも禁止、とか言われていたのを思い出した。小男が続ける。

「うちの拠点でも黒魔法使いはアルガスとモリガンだけだ。アルガスが居なくなったから、お前とモリガンだけだな」

モリガン、名前だけは以前聞いた気がする。

「モリガンってどんな人なんですか?」

俺の質問に、小男が答える。

「この拠点のリーダーだ。そう言えば、任務が終わったら会わせるって約束だったな。俺についてこい」

そう言うと、小男が歩き出した。俺はその後ろに付いて行く。少し奥の方に場違いなほど豪華な扉があった。小男がノックをして要件を述べる。

「以前話した、新入りの黒魔法使いを連れてきました」

中から女性の声が応答する。

「ああ、今なら大丈夫だから入って貰ってちょうだい」

小男が俺を見て言う。

「くれぐれも変な気を起こすなよ」

そう言ってドアを開けた。

(変な気って、どういうことだろう?)

そんなことを思いながら、俺はドアをくぐる。そして目の前の光景に、小男が何を言いたかったのかが分かった。

ボン、キュ、ボンの恐ろしくセクシーなプロポーションに、首筋から肩の頭まで剥きだしのセクシーな黒色のドレス。胸ほどの長さのプラチナブロンドの髪に、クリっとした灰色の瞳。鼻筋の通った高い鼻。ハリウッド女優みたいな美女がそこに居た。

(へー、凄い美人だな)

と思いつつ、自分でも意外なほどに冷静だった。前の世界だったら、こんな美女が目の前にいたら、怖くて顔もあわせられなかった筈だった。

(もしかして、性欲とかも無くなっているのか?)

食欲も睡眠欲も無くなっているから、あり得る。徐々に気が付いていく自分の変貌に、俺は少し悲しくなった。

そんな俺の表情を見て、目の前の女性は少し気に入ら無さそうな顔をする。マジマジ見たらそれはそれで嫌がりそうなので、面倒な人かもしれない。

「初めまして。つい先日入りました、ドナルドと申します」

とりあえず俺は挨拶をした。目の前の女性がそれに答える。

「私はモリガン。この拠点のリーダーで黒魔法使い。貴方も黒魔法使いなんですってね?ランクはどれぐらい?」

話の進め方が早い人だ。ランクって、契約した黒魔法のランクだろうか?

「12ですね。8の魔法も混じっていましたが・・・」

それを聞いたモリガンが、馬鹿にしたような顔をして言う。

「12なら最下位ね。私は9よ!」

それを聞いて、俺も微妙な感じになった。この辺りで一番優秀な黒魔法使いと聞いて、てっきり3とか4とかだと思っていたので、拍子抜けしてしまった。それが顔に出てしまったのか、モリガンが怒ったように言う。

「言っておくけどね、9なんてそれほど居ないんだからね。王宮なんかに居る黒魔法使いでも、7くらいなんだから」

それを聞いて、俺は気になったことを聞く。

「それじゃあ、最高位の1ってどこに居るんですか?」

モリガンが呆れたように答える。

「1なんて、歴史上を見渡しても居ないんじゃないの?確か最高でも4とかだったと思うけど・・・」

「えっ!?」

俺は思わず声に出してしまった。俺の呪いを解くには、その最高位の1が必要なのだ。モリガンが続けて言う。

「それって多分、神話とかそう言うレベルの話よ。貴方、神にでもなるつもり?」

俺は、頭を抱えたくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る