初任務-1

初任務-1




縄梯子を降りていくと、広い地下空間に辿り着いた。少しジメジメして換気が悪そうだ。俺が縄梯子を降り切ると、いそいそと誰かがやって来た。なんか妙に丸っこい小さい男が近づいて来た。その男が口を開く前に、俺が口を開いて言う。

「バズの紹介で来ました」

小さい男が口を開く。

「バズの紹介?この場所が分かったのであれば、まあそうなのだろうが・・・お前は何者だ?」

「旅人です。名前はドナルド。黒魔法を使います」

とりあえず簡単に自己紹介をしておく。黒魔法の下りで、小男が反応した。

「お前は黒魔法を使うのか。だったらモリガンにも紹介した方が良さそうなのだが、入っていきなりと言う訳にはいかんな」

モリガンというのがここの黒魔法使いのようだ。小男が続ける。

「ちょうどいい。入団試験代わりにやって欲しいことがある」

小男が喋っている最中に、バズとガロも縄梯子を降りて来た。小男が二人を見て言う。

「おい、バズ!二人を連れて、アルガスのところに行って来い。そろそろアイツがここに必要な頃合いだ」

それを聞いたバズが小男を見て言う。

「もうそういう段階なのか。それなら捕まえてくる」

そして俺とガロを見て言う。

「アルガスは別の町に住んでいる。明日早朝に出発するから、雑魚寝部屋で今のうちに寝ておけ!」

ガロが頷いて別の部屋に行く。俺もそれに付いて行く。その部屋にはいくつかのハンモックが吊るされていた。下っ端用の寝室らしい。ガロがその一つに潜り込んだ。俺も適当なハンモックに潜り込む。

眠くないので目は冴えている。ハンモックに揺られながら、今日一日で起きたことを振り返っていた。




翌日の早朝、俺たちは馬車に乗り込んだ。俺たち三人だけを乗せて、馬車が出発する。ガロが口を開いた。

「俺たちだけですか。アルガスって辺鄙なところに住んでやがりますね」

バズがそれに答える。

「なんでもその方が黒魔法の研究がしやすいから、らしい」

それを聞いて、俺も口を挟む。

「アルガスって、黒魔法使い何ですか?」

バズが俺をみて答える。

「ああ。そこそこやり手の黒魔法使いだ。これからギルド間闘争が始まりそうだから、兵隊を集めなきゃいかん。それで俺たちはアルガスを連れて帝都に戻る。これが今回の仕事だな」

ギルド間闘争、という剣呑な言葉が飛び出してきた。気になったので聞いてみることにする。

「ギルド間闘争って、どこと戦うんですか?」

バズが答える。

「冒険者ギルドだな。仕事柄、アイツらとは揉めることが多い。俺らが何かをして、その解決にアイツらが出てくるって感じだ。それが積もりに積もって、時々ドンパチやることになる。今までもそうだった」

ガロがそれに付け加える。

「黒魔法使いはそういう時の戦力になる。魔法やら契約やらで生贄とかを使う黒魔法使いに、俺らがそれを提供する。その見返りに、戦争の時に俺らに協力する。こういう関係だな」

俺は納得した。見ず知らずの俺がサクッと採用されたのは、その戦争の兵隊が必要だったという背景があったらしい。バズが言う。

「アイツは黒魔法だけでなく、毒薬なんかにも詳しいんだ。だから、こういう時には最適なヤツだ」

毒薬、という言葉を聞いて嫌な思い出が蘇った。それこそ何度も死ぬほど飲まされたのだ。そういう意味では、俺も毒薬には詳しくなったかもしれない。

思い出して嫌な顔をしている俺に、バズが言う。

「ただ、気難しいから連れて帰るのが大変かもしれない。そこで、黒魔法が使えるお前が、アルガスを牽制するんだ。最悪、ガロにやったように拘束魔法なんかも使ってくれ!」

(それって拉致では?)

思わず内心で呟いたが、よく考えたら、そう言うギルドだったと思い出した。

(エライところに入ってしまったかもしれない・・・)

俺は自分の選択に少し後悔をして、目を逸らすように馬車の外を見つめる。その光景は、帝都に行く時に歩いた街道と似た風景だった。




目的地に着いた馬車が止まった。俺たちは降りて、その周りの風景を見渡す。俺は既視感を覚えた。

(あれ?この町、見覚えがあるぞ)

バズが俺たちを連れて、アルガスの家に向かう。その道中は見たことのあるものばかりが並んでいた。

(アルガス・・・黒魔法使い・・・毒薬に詳しい・・・もしかして・・・もしかすると・・・)

俺は脇から嫌な汗が出てきているのが分かった。バズの向かう方向には、覚えしかない。その場所に到着したバズが叫んだ。

「オイオイ、マジかよ!?アルガスの家が、火事になったのか?」

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