死にたくないと願った俺は、異世界で不死身の呪いを得てしまった件

ikhisa

序章

愚か者の選択-1

愚か者の選択-1




俺は異世界で目覚めた。異世界だと分かったのは、周りの風景を見たからだ。見たこともない木や植物で埋め尽くされている。そして何よりも、俺の目の前には、絶対にこの世にはありえないような、巨大な獅子と山羊と蛇がくっ付いたような生き物が居たからだ。

俺は悟った。ああ、これが異世界転生ってやつか・・・と。



元の世界では、俺は冴えない人間だった。あまりにも冴えなさ過ぎて、思い出すのも嫌だ。それでも気になると言うなら、自分の知る、最も冴えない人間を思い浮かべて欲しい。それよりも、もっと冴えない人間だ。

そんな冴えない人間だった俺は、ある日、交通事故にあった。無機質な衝撃が、筋肉から骨、内臓に達した。その衝撃が通り過ぎる過程で、自分の身体から信じられない音が鳴り響くのが、自分で分かった。

(人間って、こうやって壊れるんだな・・・)

ネットで見た事故現場のグロ動画とかで知っていても、自分の身体で感じるまでは信じられなかった。物理運動は無慈悲で容赦がない。


これで、俺は、死ぬ、らしい。


いくら冴えない人間であっても、こんなに突然に、無意味に死ぬのは嫌だ。そんな俺は、その時に願った。


死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない


その瞬間に、頭に直に声が響いて来た。

「本当に、死にたくないのか?」

俺は、答えた。

「死にたくない」

その声は、念を押すように聞く。

「本当に?死ねないのって、辛いぞ?死にたくても、死ねないぞ?」

俺は、イライラしながら答えた。

「それでも、死にたくない!」

その声は、更に念を押していく。

「後悔するなよ。俺は、ちゃんと止めたからな。最後にもう一度だけ聞くぞ。死ねなくても、良いんだな?」

俺は、うんざりするように答えた。

「それでいい」

その声は、もう何も言わなかった。



それで気がついたら、俺はここで目が覚めた。そして、既に死にそうになっている。目の前に、明らかに俺を殺そうとしている化け物が居るからだ。

「これって、誰かが助けに来てくれるパターンだよな・・・」

俺は涙目になりながら呟くように言った。でも、誰も来なかったようだ。俺は、獅子の形をした手の爪で一瞬で押さえつけられて、獅子の頭に、頭から喰われた。



目を覚ますと、目の前には咀嚼をしている獅子の顔があった。血生臭い香りが、口の周りから漂ってくる。

俺の顔を見て、その獅子は驚くような顔をしていた。他の山羊と蛇の頭も、俺を見つめている。

俺はこの隙に逃げようかと思った、が、それは無理だった。そもそも抑えられている。

咀嚼を終えた獅子が、再び俺の頭にかじりついた。



目を覚ますと、目の前には咀嚼をしている獅子の顔があった。

状況が分かってきた。どうやら、喰われた端から俺の頭が生えてきているらしい。

「これが、ギフトってやつか?」

そう呟いた瞬間、俺はまた喰われた。



目を覚ますと、目の前にはゲップをしている獅子の顔があった。その獅子は、俺を見つめている。

「もう・・・離してください」

俺は涙目でお願いした。獅子は、そんな言葉が分かったのが、俺を開放してくれた。

だが、次は尻尾側に居た蛇が俺に巻き付いて来た。俺の身体を、その筋肉の塊である全身で締め上げて来る。俺の身体から、交通事故に会った時のように、気味の悪い音が鳴り響いて来た。

(痛い、痛い、痛い)

激痛が身体を埋め尽くす。だが、肺が締め上げられていて、声が出せない。獅子の時はいきなり頭から齧られたので気がつかなかったのだが、別に痛みは消えないらしい。俺は、激痛で意識を失った。



目を覚ますと、目の前には欠伸をしている獅子と、ツチノコみたいに身体を膨らませている蛇と、不気味な瞳孔で俺を見つめる山羊の姿があった。どうやら、丸のみにされると、こうなるらしい。

(今のうちに逃げよう・・・)

俺は身体を起こして逃げようとする。それを見た山羊が、何かを獅子に向けて呟く。獅子は面倒くさそうに俺を見つめると、その爪で再び押さえつけた。俺は、逃げられない。

獅子は俺を咥える。今度は喰うつもりは無いようだ。だが、牙が突き刺さって死ぬほど痛い。

「痛い、痛い、痛い」

悲鳴を上げている俺を無視して、化け物は俺を運んでいく。



どこか開けた場所に着くと、獅子は前足で地面を掘りだした。ある程度のくぼみが出来ると、俺はそこに投げ入れられた。体を起こそうとする俺の上に、土砂が投げ込まれてくる。

「うごぉ!」

目や口に入った土でむせている俺の上に、容赦なく土砂が降ってくる。土砂の量はどんどん増えてくる。

俺は、生き埋めになった。息は出来ない。苦しい。でも死ななない。文字通りの、生き埋めだった。俺は、かろうじて意識を失えた。



呼吸が楽になってきた。目を覚ますと、目の前には熱心に土を掘っている獅子の姿があった。俺は何となく状況が分かってきた。ぼうっとしている俺の頭を、獅子がかじりついて来た。



目を覚ますと、目の前には咀嚼をしている獅子の顔があった。満足したような顔をした獅子は、再び前足で土砂を寄せて、俺を埋め立ててくる。


俺は、化け物の保存食にされていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る