鷹眼の祓魔師(エクソシスト)
秋乃楓
Episode1 悪魔と噂話
突如としてそれは生まれた。
いや、生まれるのは必然だったのか...それとも決められていたのか。
その者が生まれたのは古く、そして遠い時代。
己が行く道は必ず死体の山が気付かれ、数多もの血が流れた。
そしていつしかその血は自らを染め上げ...より多くの獲物を求めて戦場を
駆け巡って大勢の物を葬り去った。
悲鳴が聞こえようが、逃げ惑おうがお構いなしに次々と自らの手で
潰し、その手を血で染め続けた。
やがてその者は自らを吸血鬼と名乗り、歯向かう者を容赦なく殺戮し
残酷の限りを尽くしたのだ。
だがしかし...1人の男がその者の運命を断ち切った。
神の名の元に神罰を代行する者...その名はエクソシスト。
吸血鬼とエクソシストによる死闘は3日3晩も続き、漸くその吸血鬼を討滅し
跡形も無く屠ったのだ。そして二度と現世へ甦る事が無い様に様々な術を掛けられた上に身体を拘束され棺の中へと封じ込められた。
だがそれから約3000年の月日が経過した現代......
──それは再びこの世に甦った。
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人の運命はちょっとした出来事で大きく変わってしまう。
例えば会社をリストラされたとか...大切な人が亡くなったとか...他にも沢山。
それは年代を通し、変わる事はない事実。
そして今宵もまたその運命に翻弄された人物が居た。
「...どうか私に力を下さい!アイツらを...アイツらを殺したいんです...!!アイツらが居るから私の...私の人生は滅茶苦茶なんです!! 」
真夜中の学校...誰も居ない筈の空き教室に1人の女子高生が佇んでいた。
その近くには赤い絵の具で描いた魔法陣が記されていて、その手には
5人の少女の写真が握られている。
そのどれもがアングルは不自然、正しい向きなど1つも存在しなかった。
全ては秘密裏に盗撮されたモノでやったのは彼女。
他の子と比べて地味で顔も普通で身体も色気は無いし髪型もただヘアゴムで
おさげに結んだだけ。
彼女の名前は神崎静花、聖心中央高校に通う1年生で同じクラスの女子5人から
毎日過度な虐めを受けていた。
教室にも居場所は無く、担任に打ち明けても解決はしなかったし
何だったら見て見ぬフリをされた。
他のクラスメイトも同様に彼女には関わろうとはしなかった。
そんな中...助けを求めたのは併設された教会のシスターで担当してくれたのは
自分より歳が2つ上に見える若い女性。
名は確かマリアと言っただろうか、彼女だけは真摯に向き合って話を聞いてくれた。
だがそれでも状況は変わる事はなく...悪化した。
そして月日が流れ...苦しんで苦しみ抜いた末にとあるSNSサイトで見つけた
悪魔を召喚する儀式とその手法という何とも歪で不気味な物を試す事にした。
もし上手く行けば悪魔の力を我が物に出来、あらゆる不可能を可能としてしまうらしい。写真を一旦しまうと左手に持っていたカッターナイフで右手人差し指を切って
その血を捧げる。
「......此処に血の契約を。我は汝の力を欲し、我は汝を求めん。我が身、我が魂は汝に捧げる......故に我にこの者らへ天罰を下す為の力を──!! 」
そう叫んだ瞬間、再び写真を魔法陣の中へ放ると赤い光が室内へ迸った。
魔法陣から現れたそれはヒトでも無ければ動物でもない...黒色の肌に赤く吊り上がった目、生え揃った鋭利な牙を剥き出しにし静花を見て嘲笑う。
そして彼女の身体へ乗り移るとゆらゆらと立ち上がり、にたりと笑った。
「あぁ...これがニンゲンの身体...クックックックッ、安心しろ...お前のネガイは俺がちゃんと叶えてやる......!! 」
教室を出た静花が廊下を歩いていると白い光で照らされた。
目の前に居るのは巡回中の警備員で声を掛けて来る。
「おいキミ!一体こんな時間に何やってるんだ?早く寮に帰りなさい!! 」
この聖心中央高校は学生寮があるのだがその問いに対し返答はしなかった。
「......すぞ 」
「...?おい何か言ったか?悪いがもっと聞こえる様な声で── 」
「気安く話し掛けるな...ぶち殺すぞ下等生物めが!! 」
そう叫んだ瞬間、警備員の喉元へ噛みついて押し倒すとその血と肉を空腹の犬が餌を貪り食うが如く喰らいだした。
喉笛をちぎられた事で空気の漏れる音と血液を零しながら痙攣を
起こした状態の警備員は瞬く間に残骸と化して血溜まりの中に
肉片だけが浮かんでいる。
「やはりニンゲンの肉は美味い...血も美味だ...... 」
立ち上がった静花は口元を拭う事もせず歩き出し、
赤い瞳を爛々と輝かせながら眼前の暗闇へと消えてしまった。
様子を見に訪れた仲間の警備員すらも喰い殺して。
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騒ぎがあった日の翌朝、1人の少女が教会にある
ステンドグラスの前へ祈りを捧げていた。
肩まで伸びた黒い髪を持つ彼女の名は織川舞冬。この聖心中央高校へ通う
1年生でごく普通の何処にでも居る女子高生だった。
「あ、此処に居たんだ舞冬。探したよ? 」
声を掛けて来たのは彼女の友人である笹川祈里、首元までの長さを持つ明るい茶色髪をした同学年の少女で志音とは中高と友人同士だった。
「おはよ、祈里 」
「またお姉さんの事でお祈りしてたの? 」
「うん...もう暫く会えてないから 」
「失踪してもう3年経つんだっけ? 」
「私が中学1年生の時に居なくなってるから...それ位経つかも。警察の人も捜査を打ち切っちゃったし、お母さんもお父さんもそれきりお姉ちゃんの事は話そうとしないから 」
舞冬は何処か寂しそうな表情を浮かべ、祈里へ話した。
彼女の姉である織川汐音は突如として失踪し自宅へと帰る事はなく
当初は家出かと思われていたがそうではなかった...事件や事故の可能性も視野に入れて捜査されたがそれでも行く宛は掴めぬままだった。
教会を出て歩いていると黒い修道服へ身を包んだ同世代と思われる
薄茶色の髪を持つ女性と目が合い、舞冬は彼女へ向けて会釈した。
「おはようございます、シスター・マリア 」
「...おはようございます織川さん、笹山さん 」
そう話すとマリアは小さく微笑む。
彼女は教会に勤めていて、話によれば幼い頃に両親を亡くし
教会を運営している修道院長により引き取られたのだという。
また一部の生徒の話によると彼女は学校へ特待生として入学するも
教会の勤めに身を置いている事からあまり授業にも出られない為に
欠席しがちなのだとか。
「それにしても今日も良い天気ですね! 」
祈里がそう話すとマリアは再び頷く。
「...えぇ、そうですね。澄んだ青空に穏やかな日差しは学びの精神にも、そして私達の心にも良い影響を与えて下さるでしょう 」
その後に舞冬も彼女へ声を掛けた。
「そう言えば...マリアさん知ってますか?夜な夜な変な人が街中を出歩いているって話 」
「噂話?...申し訳ありませんが、そういうのには疎くて。ごめんなさい 」
「あ...いえ。実は私も気になってて、ネットもそうだしクラスでも有名なんですよ。深夜に出歩くと霧の向こうから気味の悪い人がフラフラと歩いて来て...それでもし目撃したら返って来られなくなるって...... 」
「...そうなのですね。織川さんは物知りですね、尊敬します 」
「あはは...実は私、そういうオカルト系が好きなんです。祈里が私に教えて来たっていうか...? 」
話しているとチャイムが鳴り、祈里が時計を見て声を上げる。
舞冬と彼女はマリアへ「それじゃ!」と話すと立ち去った。
マリアもまた「主のお導きがあらん事を」と呟いて見送る、そして
その足で向かったのは教会の中にある院長室でドアを開くと奥に腰掛けていた
黒紫髪を持つ女性スカーサの元へ歩み寄ると声を掛けた。
「...修道院長様、また例の話を生徒から聞きました。やはり── 」
「
「...やはりかの者が甦ったと? 」
「既に教団には連絡済です。貴女は引き続き、先日発生した事件の調査をなさい。もし本当にそうだとするのなら......そうなのであれば...必ず災いが起こる 」
重苦しい空気の中でマリアは固唾を飲んで小さく頷く、そのかの者というのは
隠語にしか過ぎない。いつからかそう呼ばれ、いつからかそれが共通認識となっていた。
「万が一の場合、対処する許可は下りています。そうでなくては我々...機密執行機関の意味がありません 」
「...畏まりました。神の名の元に必ずや然るべき罰を 」
「......頼みましたよ 」
マリアは会釈し院長室を去る、彼女が次に向かったのは
自身の部屋で窓側に置かれている机の引き出しから鍵を取り出した。
その鍵には銀色のタグが付けられていて[No.007]と刻まれている。
それを手にした彼女は教会の裏手に配置されている倉庫へと足を運ぶと
ドアノブへ鍵を差して開錠し室内へ入る。
そこは一見すれば単なる倉庫だがそうではなく、物が置かれた中を歩み寄って部屋の最奥にある十字架に象られた小さな窪みの前で足を止めた。
首から下げていた十字架をそこへ当て嵌めると何の変哲も無い壁が左側へスライドする様に動くと自動で明かりが点灯、長方形を象った室内の左右にはガンラックに飾られた多種類の銃器があり床にはそれらに見合った弾丸が入った幾つかのケースが置かれている。ハンドガン、サブマシンガン、アサルトライフルからスナイパーライフル、ショットガンにグレネードランチャーやロケットランチャーと至れり尽くせりで何だったらナイフやマチェーテ等の刃物類も同様にラックへ飾られていた。
無論だがグレネードやスタングレネードもそこには存在しその数は戦争でも始めるのではないかと思われる程。
黒い長机には部品が入った引き出し付きの箱とその傍らには工具が置かれていて
調整すらも可能としている。
「...遂にこの日が来てしまった 」
歩み出した彼女は徐に掛けられていた銃を見ながらそう呟いた。
来るべき日に備え、鍛錬を積んでいたのは事実、だが出来る事なら避けたい事柄でもある。だが自分に科せられた使命は身寄りのない彼女自身を引き取ってくれた
教会への恩返しにも繋がるだけでなく神に仕える身として邪な存在を裁く
者として貢献出来るのであればと思い立って決めたのだ。
それから彼女はラックから銀色のフレームを持つ44口径のデザートイーグルを手にしそれに見合った弾をケースから取り出す、弾の色もまた銀色で予備のマガジンも
用意しそこへ弾を詰め始める。
それは銀の
悪魔でさえも通じる代物。
他にもイングラムMaC-10を2丁、ダガーナイフをそれぞれ装備すると共に
もう2つだけ近接武器を手にした。それは黒い柄と白い柄を持つ2本の両刃の剣で
黒い方がガブリエル、白い方がミカエルという。
約90cmもあるそれは装飾が施された鞘に収まっていてさながらファンタジーに登場しても可笑しくはない見た目をしていた。
「...現れるとすれば日没。それまでに何も起きなければ良いのですが 」
MaC10にマガジンを装填したマリアはそう呟いた。
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1人の少女が駅のホームで柱に寄り掛かりながら佇んでいた。
左胸に十字架が付いた黒い長袖の服と同色のミニスカートに対し両足は
くるぶし丈の黒いヒールが付いたブーツ。
外へ跳ねた髪は首辺りで切り揃えられている他に髪色も黒で唯一違うのは赤色の瞳に対し左目だけを前髪で隠している事とその上にフード付きのパーカーを羽織っている事だけ。
「さて...もう少しで日没かな? 」
取り出した時計で時刻を確認する、時刻は午後16時45分で
ホームにはスーツ姿のサラリーマンや学生が大勢居る中で10両編成の電車が到着し
それに彼女も乗り込んだ。
ドアが閉まって動き出すと吊り革へは掴まらず、奥の車両へ進んでから
車両と車両を繋ぐ中間で足を止めてから首から下げている髑髏型のペンダントへ話し掛ける。
「クロ、どう? 」
[へへへッ匂うぜ...結來。それも飛び切り血生臭ぇ! ]
「指令書通りか...トンネルに入ったら向こうも動く筈 」
時計を再び見ると時刻は16時58分、そして1分ともう1分が経過し
トンネルへ入った段階で17時丁度を迎える。
同時に異変が起きたのは結來から右に見て8番目の車両の中で
灰色のスーツを着た中年の男が急に立ち上がって周囲を見回していた。
そこにはまだ乗客も居るし中には眠っている人も居て、結來はそこへ足を踏み入れて開口一番にこう言った。
「電車が動いている最中に立ったら危ないよ?おじさん 」
「何だお前は...一体何処の── 」
結來の方へ振り向いたと同時に十字架の付いた鈴を数回鳴らすと
男は突如として苦悶の表情を浮かべた。
「ぐッッ...な、何だ突然...!? 」
「これ?さっき寄った雑貨屋さんで買ったんだ、良いでしょ?音綺麗だし十字架のアクセが何よりカッコ良いんだよねー 」
幾度も左手で鳴らし続けると男が大声で叫んで結來を睨み付けた。
額には脂汗が浮かんでいて動機も挙動も何処か可笑しい。
「う、五月蠅い...!その不快な音を出すのを止めろ!!耳障りだ!! 」
「不快?そうかな...そんな事無いと思うけど? 」
再度それを鳴らしたと同時に男が結來へ喰って掛かって来る、
だが結來がそれに対し差し向けたのは鈴ではなく赤い鞘を持つ剣だった。
それが喉元へ当たる寸前で男が足を止める。
「ぐぅううッ......! 」
「この鈴は雑貨屋さんのじゃなくて悪魔祓い専用の鈴、一般人には単なる鈴でしかないけど特定の存在には通用するんだよね 」
「と、特定の存在...?まさか俺がそうだって言いたいのかい?お嬢ちゃん......! 」
「勿論。それにおじさん── 」
そして結來はこう言った。
「...人間じゃないでしょ? 」
鋭い眼差しが男を見据える、だが彼は強引に結來を押し退けて後方の車両へ逃走を図った。ドアが勢い良く開くと彼女の背後で突然悲鳴が上がり、乗客がパニックに
なると後を追ってから彼女が叫んだ。
「早く一番前の車両へ逃げて!女の人、子供が居たらその人達が最優先!! 」
男が更に逃走を図るのを止めるべく背後から駆け寄って追い掛ける、
その足で6番目の車両へ差し掛かると結來は男へ目掛けて背後から飛び蹴りを喰らわせて転倒させる。払い除けた男は振り向き様に鋭い牙と赤い目で彼女を見て
襲い掛かるが結來は平行に構えた剣でそれを防いで払うとその場で剣を回転させて
先端で相手の腹部へ刺突、怯んだ所へ今度は左手で顔面を殴打し正面から右手で顔を殴り付けて追い込みを掛けた。
「ぐふぅうッ!?ッ......貴様...何者だ!! 」
「お前らの天敵だよ 」
再び襲い掛かって来ると柄を持つ右手を素早く振り抜いて鞘から抜剣、
左逆袈裟と左一文字でそれぞれ斬撃を浴びせて肉体を斬り裂く。
斬られたワイシャツとスーツから垣間見える地肌は血で赤く染まっていた。
「や、やられるものか...こんな所で......俺は死なない...死んでたまるか!! 」
斬られた男は鋭利な詰めを武器に結來へ再び襲い掛かる、
左右のそれを振り翳し荒々しく迫り立てるが彼女はそれを
右に左にと身体を傾けて躱しては男が放ったハイキックを
後方へ宙返りし躱してみせる。
立ち上がると同時に鞘を傍らへ手放し様子を窺っていると
男は自身の左側の座席を見るや否や突然そこへ向かったかと思えばガラスを割って外へ飛び出したのだ。バラバラとガラスが座席へ散乱し線路へ落下すると
駆け出して行く。
「アイツ...!! 」
結來もまた電車の速度が弱まったのを感じ、鞘を手にしそこから同じ様に
飛び降りて後を追い掛ける。相手が逃げた先は木々が生い茂る外付けの大きな駐車場で足を止めた彼は振り返った。
「...追い掛けっこはもうお終い? 」
「......あぁ、もう飽きた。どうして俺が此処へ来たと思う? 」
「...あたしに殺される為? 」
「いいや...ハズレだ。此処がお前の墓場になるからだ!! 」
彼が振り返って声を上げる、すると格子状のフェンスの向こう側にある暗闇から現れたのは無数の赤い目でそこから呻き声を上げながら死人の様なすがたをした
連中がフェンスを越えて現れた。彼等は皆、正気を失っているだけでなく
服も裂けてボロボロ...顔や手足等に裂傷を抱えていた。
「
「へへへ...ちょっと力を使えばこんなモンさ......さぁ!あの小娘の血肉を喰らってその渇きを!飢えを!存分に潤すが良い!! 」
男の掛け声で駆け出した生屍人、その数はざっと10は越えていて
どれもが鋭い牙と爪を持ち荒らしい吐息も相まって気味が悪いとしか言い様がない。
だがどういう訳か結來は剣を納めた。
「おいおいおいおいおい、どうした!?この数に怯えてブルっちまったか!?それとも小便垂れて命乞いか、カミサマにお祈りする気にでもなったか!? 」
だが彼女はそうではなかった。
腰の後ろから取り出したモノ...それは銀色のスライドカバーと同色のシリンダー、黒色のグリップ双方を持つ銃でそれも2つ。銃声が闇夜に響き渡ると同時に仰け反る様に生屍人が数人倒れて蒸発する様に消えた。
「......対化物専用44口径カスタムオートマチック拳銃、サクリファイス。使用するのは同様の口径をした銀の
「...!?や、やはりお前は...エクソ...シスト......!! 」
「そう、あたしは
襲い来る生屍人達に対し迎え撃つ様に駆けて行く、闇夜に少女の身体が舞い上がったかと思えば銃声と共に降り注ぐは弾丸の雨。1人また1人と確実に数を減らしていく。敵陣の真ん中へ降り立てば正面へ、今度は左右へと次々に発砲し
次々と屠る。赤黒い血液が飛散し、衝撃で頭が腐ったトマトの如く潰れれば
掠めた弾丸が頬肉や腕を削ぎ落す。弾が切れれば銃を振り抜いて左右に再び弾丸を装填、先に完了した左手の銃で迫って来た生屍人の頭部を吹き飛ばすと続いて背後から来た生屍人に対してはノールックで右手を後ろへ向けて発砲し首を撃ち抜いて
転がって来た頭を左足で潰してみせる。
気が付けば既にその数は減り続け、男だけが残されていた。
十字を描く様に構えた結來が左右の銃口を男へ向けて着実に距離を詰める、
後退した彼は冷や汗を滲ませながら出口の方へ一目散に走って向かうとそこへ偶然居合わせた学生服を着た少女を人質にし結來へ見せつける。
「う、う、動くな!!少しでも動きゃ...このガキ殺っちまうぞ? 」
「...... 」
結來はそれでも銃口を男へ差し向けるが彼は更にこう続ける。
「大人しく銃を捨てろ!ほらどうした...早くしろ!! 」
「...人質を取ったつもりか?悪魔の癖に低俗らしい真似事をする...お前に誇りや意地というモノは無いのか? 」
「だッッ...黙れ!たかが小娘の分際で!! 」
「たかが小娘?そのたかが小娘相手に態々人質を取らなければ張り合えないお前は何なんだ?今のお前はヒトでも無ければ...ましてや悪魔ですらない...狗か?それとも薄っぺらい紙の様なプライドしか持たぬ下等な生き物か?いいや違うな......お前は── 」
風で前髪がゆらり靡くとそこから覗くは赤い右側の瞳と異なる目。
金色をしたもう左側の目が鷹の様に鋭い目付きで獲物を捉え、引き金へ指先を掛けると少女が僅かに左を向いたと同じタイミングで発砲した。
「ただのクズだ 」
銃声と共に放たれた銀の弾丸が男の眉間を的確に撃ち抜いた。
血を撒き散らしながら仰け反り、地面へ倒れた彼は消え入る様な
嗚咽混じりの声で痙攣した末に煙を上げて燃え尽きた。
「
そう呟いて人質にされた少女には目もくれず立ち去ろうとした、だが
呼び止められて振り返ると銃を先に収めた。
「あんた...どうして銃なんか持ってんのよ!?下手すれば当たる所だったじゃない!! 」
「どうして?それが仕事だから 」
「仕事...? 」
「さっきの化け物を倒す事、それがあたしの仕事...早く帰った方が良いよ?夜は貴女が想像するより危ないから 」
それだけ言い残すと結來は去る、そしてこの時に助けられた少女こそ
が織川舞冬だった。だがまだ全てが終わった訳ではない...夜はまだ
開けてはいない、もう1体の倒すべき獲物は既に闇夜に紛れて動き出していた。
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