いつも「僕」を否定する。
たち
反省って何だろう、何が正解なんだろう。そんな事を考えると頭が痛くなってくるんだ。大丈夫、平常心を保てば、皆は理解してくれるはず。
僕は反省が得意だ。それに気がついたのは中学一年の冬の頃だった。
反省というのは、悪かった点を正確に把握して、次に同じ失敗をしないために手順を組み立てることだ。それに感情は不要で、むしろ、混ざると精度が落ちる。だから僕は、反省文を書く前に必ず心拍数を落とすんだ。平常心を作り出して、反省してることを伝える。ただ単純なことだ。
クラスメイトの佐藤さんが泣いたのは、僕のせいらしい。僕は、彼女の発表が倫理的に破綻していて、出来ないことを静かに指摘しただけなのに。声も荒らげてなければ、笑ってもいないのに。それだけなのに、彼女はことを大きくしてまで、泣いていた。事実を言っただけだ。
泣く理由が分からなかったから、先生に想定外って言ったのに、「言い方を考えなさい。」って突き放された。そして、反省文を書くようにも言われた。だから、また考えた。次は事実を言う前に三秒黙ろう。嫌味のように捉えられないよう、語尾を下げよう。相手の目をあまり見詰めず、威圧感を与えないようにしよう。改善点は、自分でも分かるほど、明確だった。
家に帰ってから反省文を書いた。「佐藤さんの気持ちを考えられませんでした」これは定型文だ。至って本心ではないが、本心を書く必要はない。反省文は義務や儀式に近い。ただ、機械的に心を殺して書く、単純な作業だ。
翌週、佐藤さんは僕を避けるようになった。それは失敗ではなく、ただ、関係が最小化されただけだ。
僕は今日も反省の練習をする。間違えないために、正しく生きるために。泣かれる理由が分からないままでも、なんの支障も無い。反省というのは簡単な物だ。
僕が平常心である限り、皆は理解してくれるから。
いつも「僕」を否定する。 たち @ier_tachi
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