番外編「フェンリルのグルメ日記」
我が名はフェンリル。誇り高き銀狼の王……であったが、今はここ「カイル農園」の警備主任を任されている。
実に重要な任務だ。
何せ、ここには世界で一番美味い飯があるからな。
今日の朝飯は、主(カイル)が作った「極厚カツサンド」だった。
パンはふんわりと雲のように柔らかく、挟まれた豚肉(ここで育った「オーク豚」という魔物だが、肉質は最高だ)は噛むと肉汁が奔流のごとく溢れ出る。
サクサクの衣と、甘辛いソースが絡み合って、我が舌は歓喜の歌を歌った。
『ウマッ!主よ、おかわりはないのか!?』
「食べ過ぎだよフェン。太るぞ?」
主は素っ気ないが、尻尾を振っておねだりすれば、必ずオマケをくれる。チョロい主だ。
昼間、ソフィアという雌が畑で転んでいるのを見た。
彼女は相変わらず鈍臭いが、主と一緒にいる時は幸せそうに笑う。
最近は、二人で隠れてコソコソと何かをしていることが多い。
顔を近づけたり、手を繋いだり。
見ているこっちが恥ずかしくなるので、見ないフリをしてやっている。我は気の利く狼なのだ。
夕方、新入りのコボルト達に説教をした。
彼らはトマト畑の手入れをサボって昼寝をしていたからだ。
『いいか、貴様ら。このトマトは主の血と汗の結晶なのだ。それを粗末にする者は、我が喰らうぞ!』
コボルト達は震え上がって作業に戻った。
全く、我がいないとこの農園は回らないな。
夜、宴が始まった。
今日のメインは「世界樹の雫鍋」。
野菜の旨味が溶け出した黄金のスープを飲むと、身体中に力が満ちていく。
主がソフィアに「あーん」をしている。
ソフィアが顔を真っ赤にして食べる。
平和だ。
かつて孤独に荒野を彷徨っていた頃が嘘のようだ。
我は満腹の腹を撫で、月に向かって遠吠えをした。
この場所が、永遠に続きますように、と。
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