第13話「世界樹の木の下で」
万博の大成功により、僕たちの農園は「独立特別農業区」として、各国から承認されることになった。
あの虹色果実の種から芽吹いた若木は、瞬く間に天を突くような巨木へと成長した。
世界樹だ。
かつて世界を支えていたと言われる伝説の樹木が、この荒野で復活したのだ。
その根は大地深く広がり、枯渇していた地脈を潤し、大陸全体に豊かな実りをもたらし始めている。
万博のフィナーレ。
世界樹の花が満開になり、光の粒子が雪のように降り注ぐ中、僕はソフィアを世界樹の根元へと誘った。
「綺麗ですね……」
「ああ。でも、僕にとって一番綺麗なのは、この景色じゃないよ」
僕はソフィアに向き直り、ポケットから小さな箱を取り出した。
中に入っているのは、世界樹の枝を加工して作った、シンプルな指輪。
中心には、あの時のトマトのような鮮やかな赤い宝石(これも畑で採れた)が埋め込まれている。
「ソフィア。君がいてくれたから、ここまで来られた。君と一緒に作ったこの場所が、僕は大好きだ」
「カイル様……」
「これからもずっと、僕の隣で、一緒にご飯を食べてくれませんか?」
ソフィアの大きな瞳から、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。
彼女は何度も強く頷き、飛びつくように抱きついてきた。
「はい……!はい、喜んで!私、カイル様のお嫁さんになります!」
周囲で様子を伺っていたフェンが、『ウォォォン!』と祝福の遠吠えを上げる。
それに呼応するように、ベルナルドや村人たち、そして招待客たちからも割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった。
「おめでとう!」
「末永くお幸せに!」
「よし、祝いだ!宴の準備をしろ!」
世界樹の光の下、僕とソフィアは誓いのキスを交わした。
不器用な聖女と、植物オタクの農民。
ちぐはぐな二人が始めた開拓生活は、こうして世界を巻き込む幸せな結末を迎えたのだった。
これから忙しくなりそうだけど、まあいいか。
美味しい野菜と、愛する人がいれば、人生はいつだって豊作だ。
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