第11話 一人分の音

夜更けに、

部屋の灯りを落とした。


机の上に、

紙。

スマートフォン。

古いイヤホン。


準備は、

揃っているはずだった。


喉を鳴らす。

息を整える。


旋律の入口。

言葉が乗る場所。


出来るところまでは、

出来た。


確かに、

鳴った。


でも、

途中で止まった。


そこで、

気づいてしまった。


この音は、

一人分だ。


悪くない。

でも、足りない。


ここで、

誰かの音が必要だ。


昔は、

それが当たり前だった。


一人で完成させる、

という発想自体が、

なかった。


出来ないのだ。

一人では。


努力の問題じゃない。

才能の話でもない。


構造的に、足りない。


それを、

ようやく認めてしまった。

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