第2話 どきどき!グループデート

どうして悠馬ゆうまくんがここにいるの?


聞いてないし。いや、聞いてたら来てないし……。


私が固まってると、真白ましろがちらっと私の顔を見て、声をかけてきた。


「……大丈夫? 帰ろうか?」


その言い方は、いつもより少しだけ静かで、やさしかった。


「……平気。たぶん」


そう答えたけど、心臓はバクバクしてる。

顔、赤くなってないかな。メイク、崩れてないかな。

ていうか、なんで悠馬くんがここにいるの……?


更衣室を抜けて、プールサイドに出ると、美幸みゆき先輩が手を振ってくれた。


「ななみちゃん、真白ちゃん、こっちこっち~!」


先輩は水着の上にラッシュガードを羽織っていて、髪は高めのポニーテール。

明るくて、いつも通りの“先輩感”がある。


「紹介するねー。こっち拓海たくみ、男子テニス部の二年。一応、彼氏。

 で、こっちが拓海のダブルスの相手、颯太そうた。」


「で、こいつが弟の悠馬。ななみちゃんは知ってるよね。

 家でダラダラしてたから、人数合わせで連れてきた。こいつ、私に逆らえないから」


悠馬くんは、先輩の後ろでちょっとだけ気まずそうな顔をしていた。

私とは目を合わせない。


「で、こっちが、ななみちゃんと真白ちゃん。テニス部の一年ね」


「よろしくお願いします」


真白は笑顔で返した。


私は、うまく声が出せなかった。




***




プールサイドのベンチに荷物を降ろすと、男子たちはさっそくプールの方に飛び出して行く。

美幸先輩がその後に続く。


波の出るプールで、美幸先輩たちがはしゃいでいる。

人工の波がざぶんと押し寄せるたびに、キャーキャーと声が響く。

拓海先輩と颯太先輩は、浮き輪を持ってふざけ合っていて、悠馬くんもその後ろで笑っていた。


私は、真白と並んでプールサイドのベンチに座って、それをぼんやり見ていた。

水しぶきがきらきら光って、目を細めるほどのまぶしさだった。


真白は、足を組みながらペットボトルの麦茶を飲む。


しばらくして、美幸先輩が一人だけ戻ってきた。

濡れた髪から、水がぽたぽた落ちてきてる。


「はー、疲れたー」


ベンチの背にもたれて、息をつく。


「でもさ、馬鹿だね~、男子は。ほんとに。浮き輪でサーフィンとかやろうとしてるし」


大きなタオルで、髪の毛を拭きながら笑った。


なんか、すごく楽しそうで、ちょっとだけうらやましい。


そのすぐあと、拓海先輩と颯太先輩、そして悠馬くんも戻ってきた。

みんな髪が濡れていて、顔が赤くて、テンション高め。


「真白ちゃんたち、泳がないの?せっかく来たのに」


颯太先輩が聞いてくる。


真白は答えず、いたずらっぽく言った。


「拓海先輩と颯太先輩って、どっちが速いんですか? 泳ぐの」


その一言に、二人は顔を見合わせた。


「え、どっちだろ」


「よし、競争だな」


拓海先輩が立ち上がり、颯太先輩もすぐに続いた。


「じゃ、競泳プールで勝負しようぜ」


「負けた方、ジュースな!」


二人はそう言って、競泳プールに向かっていった。


美幸先輩が笑いながらタオルを肩にかけて立ち上がる。


「じゃ、審判やる~。真白ちゃんも行こ!」


気づいたら、悠馬くんと二人きりになってた。


やだっ! どうしよう! 急にどきどきしてきた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る