崩壊未来のバッドエンド・ブレイカー ~異世界を救った元勇者、少女の信頼を力に変えて滅びの未来を書き換える~

いたむき

第一章 元勇者と桜花の少女たち

第1話 絶望の帰還

 緑に覆われた廃墟の都市が、人類文明の墓標であるかのように、静かに佇んでいた。


「……どこだよ……ここ……」


 異世界に勇者として召喚された少年・会崎あいさき斗悟とうごは、確かに魔王を倒して世界を救った。

 仲間達に見送られ、女神の手によって現実世界に――西暦2025年の日本に帰還、するはずだったのに。


 こんなの悪い夢だ。

 そう信じたい。


 だが、眩暈がするほどの日差しが、流れ出る冷たい汗の感覚が、これが現実であることを斗悟の心と体に言い聞かせてくる。


 がたん、と。


 不意の物音で振り返った先に。


 化物が、いた。


 体長は4メートルを超えている。

 生物の屍肉や金属を鋳型に入れて、無理矢理人の形に固めたような――一目で強烈な嫌悪感を覚える醜悪極まりない姿。


 そして何よりも斗悟を戦慄させたのは、

 頭部の大半を占領する、巨大すぎる『あぎと』であった。


「女神様を襲った奴らの仲間……⁉︎

 追って来たのか⁉︎」


 構えようとして、武器を失っていることに気づく。


 ――学生服に戻っている。


 咄嗟に魔法攻撃を試みる。


「フレイムアロー!」


 斗悟の叫びが、虚しくこだましただけだった。


 ――予感はあったが、やはり発動しない。


「魔力が……なくなってやがる……!」


 魔力がないのは、おそらく斗悟自身だけではない。

 この世界そのものについてもだ。


 ――唯一の例外は。


 この化物のみ。


 後ろ脚をたわませて跳躍した化物が、異様に肥大化した両腕を振りかぶり、斗悟を狙う。


「うおっ……!」


 横に跳び、辛うじて避ける。

 一瞬前に自分が居た地面が粉砕される様子を尻目に、斗悟は全速力で逃げ出した。


 ――なんで……なんでこんなことに……!


 魔王を倒せば、幸せな日常に戻れると信じていた。


 家族がいて、友達がいて――

 そして、何より大切な人が待つ、かけがえのない日々に。


 それが――どうして。


「……桜夜さくや……!」


 呟いた最愛の少女の名に、応える声はなかった。

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