低級精霊も積もれば神となる~最弱の俺がいつの間にか最強パーティの中心です~
遖ナリ
1 スライム以下の転生先
俺は死んだ。
それは突然のことだった。
いつもの日常。いつものアパート。いつもの階段。
「……あ」
足が滑った。
手すりに手を伸ばすが、届かない。
視界がぐるりと回転する。
この瞬間、世界がゆっくりに見える。
が、しかし。
ゆっくりに見えていても、思考は回らない。ただただ、その衝撃までの体感時間と浮遊感が引き延ばされているだけ。
つまり。俺の死は一瞬だったってこと。
……あれ?
痛みがない。
苦しさもない。
「俺…生きてる?」
そう思った瞬間視界がひらけた。
緑。
木々。
どう見ても森。
「どこだ、ここ…」
ふと、違和感に気づく。
身体がない。手も足もない。
俺は小さな白い光になっていた。
「魂か…俺…死んだんだな」
周りを見渡すと、俺と同じ小さな光が漂っていた。
白色、赤色、青色、緑色、茶色、紫色。
全部で六色。
「みんな死んでここに来てるのか」
そう思うと妙に安心した。
そのとき。
すり。
「……ん?」
一つの白い光がやけに近い。
というかゼロ距離。
めちゃくちゃくっついてくる。
暖かくて、くすぐったい。
「ちょ、近い近い」
どれだけ離れようとしても、当然のように白い光はついてくる。
「なんでそんなくっついてくるんですか?!」
返事はない。
その様子につられたのか、
他の光も集まってきた。
気づけば、俺の周りは光だらけだ。
「え…俺、死後の世界でモテ期到来?」
そのときだった。
茂みの奥で何かが跳ねた。
半透明で、ぷるぷるしていて、形が安定していない。
「…スライム?ということは…」
ーーここ、死後の世界じゃない??
しかもスライムがいるってことは…
「異世界転生?!」
一気にテンションが上がった。
正直に言おう。
前世の俺は転生ものが大好きだった。
トラックに轢かれたり、過労死したりして異世界へーー
それに比べたら俺の死因ダサすぎるけど…
そういうことならやることは一つしかない。
「ステータスオープン!!」
すると…
視界の前に、ふわりと文字が浮かんだ。
―――――――――――――――
【名前】 なし
【種族】 低級精霊(聖)
【スキル】共鳴核
―――――――――――――――
「これは…なかなかシンプルな…」
レベルもHPも攻撃力も書いてない。
「聖属性の精霊か」
俺はもう一度表示を見つめた。
そこまで悪い転生先ではなさそうだ。精霊王とか精霊魔法とか聞いたことがあるし。
「低級、ってのが気になるけど…ま、そのうち進化できるだろう」
それに『共鳴核』とかいうスキル。名前からして凄そうだし。
俺が低級精霊ってことは、周りの光たちも同じ低級精霊なのだろう。
何をするわけでもなく、ふわふわと空中を漂っている。知能はなさそうだ。
「ん?」
ずっと近くにいた白い精霊が慌てたような動きをしている。
ぷるぷる。
ぷるん、ぷるん。
さっきのスライムだ。
透き通った綺麗な体だ。それでいて、もちもちぷるぷる。
「スライムって結構かわいいんだな。」
しかし、ここは異世界。異世界といえばレベルアップ。
レベルアップのためにはもちろんモンスター討伐。
このスライムには俺の経験値になってもらおう。
相手はスライム。俺は低級とはいえ精霊。
「くらえ!!『ホーリーランス』!!!」
……何も起こらない。
まぁ、予想はしていた。俺が今考えた魔法だし。
だが、俺にはまだスキルが残っている。
「スキル『共鳴核』!!」
ほわほわ~
俺の周りにさらに低級精霊たちが集まってきた。
「…集まるだけ???」
べちゃっ
スライムが赤い精霊に飛びついた。
じゅっ。
嫌な音がして赤い光が溶けていった。
「……え?」
次に青。
じゅっ。
緑も。
じゅっ。
「お、俺の仲間たちがーー!!」
喰われている。精霊が、スライムに。何の抵抗も出来ずに。
低級精霊の速さじゃ逃げることすらできない。
白い精霊が、俺の前に出た。
そしてちょっとだけ、大きく光る。
……いや。
それ、たぶん威嚇のつもりだよな。
やめろ。
お前、絶対勝てないから。
スライムがこちらを標的にする前に、逃げなければ…
俺は、ようやく理解した。
「…低級精霊って」
スライム以下なんだ…
スライムが跳ねた。
俺が後退すると、
白い精霊は迷わずついてきた。
逃げるときも、離れない。
その後ろに数匹くっついてきている。
……なんでだよ。
こんな役に立たないやつのそばにいても、
助からないのに。
俺は必死に逃げ出した。
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