召喚された【関西オカン】たち、異世界でもやりたい放題! 〜突然始まったサスペンス劇場ざまぁ。次代の最強魔法使いはてんてこ舞い〜

野菜ばたけ『転生令嬢アリス~』2巻発売中

第1話 これ、異世界召喚っちゅうやつやろ!



「なんや毒とか、サスペンス劇場かいな」

「よう笑ぅてるはるなと思ったら、私たちを殺そうとしてるなんて」


 異世界から召喚した、救世主――セツコ様とミヨ様。

 『聖女』でも『勇者』でもなかった二人が、大国の外交官に対峙していた。




 事の始まりは、突然やってきた使節団に対する歓迎パーティー。

 そこで先方の国から持ってきたという献上品の酒を飲んだ我が国の重鎮貴族が、急に倒れた。


 勿論あちらが黙っている筈もなく、「我が国にあらぬ疑いをかけるなど、許される筈が!」と怒りを顕わにしたけれど、ここでセツコ様の口から、ビリビリと空気が震える程の怒号が繰り出されたのだ。


「あらぬ疑いじゃないわ、阿保ぉ!」


 誰もが、いつもは何事もガハガハと景気よく笑い飛ばすセツコ様の変わり身に、驚いたに違いない。


「むしろ、小国相手とはいえ一国の政治を担う重鎮に毒を盛っといて拘束すらされへん思うとったやなんて、こちらの事をバカにし過ぎとちゃいます?」


 ニコリと微笑んだミヨ様からも、今までにない圧が出ている。


「証拠は私らのスキルでがっつり押さえとる!」

「ちょっ、落ち着いて!」


 私は慌てて割って入った。


 だって相手は大国の大使なのだ。

 言いたい事は分かるけど、対応を間違えれば大変な事に!


 が。


「あんたが毒盛ったフェイグレス卿はな、せっかくうちが背中を叩きまくって元気にしたったんや! それを寝込ますなんて、一体何してくれとんねん!」

「あの方の出してくれる食材は、どれもえらい美味しかったしねぇ。いーひんようになってもろうちゃあ、困るんよ。私たち」

「セツコ様、ミヨ様……!」


 我が師をここまで思ってくれているだなんて!

 思わずジーンとしてしまった。



 ……けど、違うっ!

 そうじゃない!!


 ボーッとしている場合じゃない!

 このままじゃあ、我が国が一瞬にして消し飛ぶ!

 それくらいの事をできてしまうのが、大国・グレイアスタなのだから。



 ◆ ◆ ◆



「なんや眩しくなったと思ぉたら、なんやの? これ」

「私知っとるで! これ、異世界召喚っちゅうやつやろ!」


 およそ一月前。

 異世界から召喚した我が国の救世主たちの第一声は、コレだった。




 ――異世界召喚。

 それは禁忌の呪法にして、この国を救うための最大の一手。


 余程ひっ迫しなければ術を使う事のないものであり、この呪法を行った人間は魔力回路が焼き切れて、以降魔法は使えなくなる。



 そもそも魔法の使い手自体がかなりの熟練者でなくては発動さえできない上に、再起不能になる魔法だ。

 魔法が武力の一部として数えられるこの世界において、そして国も小さければ有能な人材の数にも勿論限りがあるこの小国・ベルンドラにおいて、正に身を切る思いで行った術だった。



 だから、もっと荘厳で神秘的な物を期待していたのだけど。


「っちゅうかうち、着物に割烹着のままなんやけど」

「あんたの方がまだマシやん。私なんて、庭の草むしりの途中やで? ほれ見ぃ、草の根をほじくるやつ錆びた草刈り鎌と一緒に来てもうたやないか」


 言いながら、「困ったわぁ」と頬に手を当てる変わった服姿の女性と、あっはっはーと豪快に笑う錆びた何かを持った女性。

 お二人の姿は、私たちに馴染みのない姿でありながら、何故かそれがひどく庶民的であると分かるものだった。



 異世界召喚とは、異世界にいる救世主を、魔法で無理やりに引き寄せる魔法。

 そこにあちら側の同意はなく、故にこれを使うと相手にひどく恨まれる可能性がある……と、古文書には書いてあった。


 前回召喚を行った時には、召喚された人間はひどく取り乱し、大変だったという事だ。


 当たり前である。

 当然だ。

 そう思って、ある程度の覚悟を決めていたのだが……。


「異世界召喚ってあれよなぁ? ようアニメやらでやってる」

「小説やら漫画やらでもぎょうさんあるで! なんかの理由で中世ヨーロッパ的な異世界に飛ばされて、そこで悪い奴をギッタバッタとなぎ倒したり、頭脳戦を繰り広げたりすんねん」

「よう知ってはるなぁ」

「うちの息子が好きで、いつも見てんねん。下手したら寝る間も惜しんで見てるもんやから、よう尻蹴飛ばして宿題さしてる」


 今のところまったくその片鱗はない。


 私は思わず拍子抜けした。

 が、どうやら私だけではないようだ。


「よ、よく来たな。お主たち」


 陛下が動揺しながらも、気を取り直して声をかけた。



 二人は揃ってそちらに目を向ける。

 そして初めてその存在を認めたように、若干目を丸くして――。


「あらー、なんかえげつない装飾を付けてる人がいてるなぁ」

「それ言うならセツコさんも、あんまり人の事言えへん思うけど?」

「たしかに私も派手好きやけど、あそこまでちゃうわ。あんなビッカビカの宝石をジャラジャラつけるより、トラ柄の方がカッコええやん」

「好きやなぁ、セツコさんはトラ柄が」


 うちの国王は、見た目の威厳だけはそれなりにある。

 貴族は相対するとまず委縮するのが常なのだけど……二人は、欠片もそんな様子を見せない。


 それどころか、セツコと呼ばれた方の方は、ツカツカと陛下の方にまっすぐ歩いていき――。


「あああっ! セツコ様! ミヨ様も!! 国王陛下のお傍に勝手に寄られては!」


 慌てて制止の声を発するも、お二人はまったく止まる様子がない。



 お二人の元に駆け寄ったのだけど、近衛騎士たちの方が位置的に早かった。


「止まれっ!!」


 流れるような所作で剣を抜いた彼らが、近づく二人の喉元にまっすぐにそれを突きつける。


「待ってください、落ち着いて! 彼女たちはまだ事情が分かっていないだけで……!」


 急に刃を突きつけられて、さぞかし恐ろしい事だろう。

 そう思い、私も怖いけど、「それでも」と両者の間に割って入ろうとした矢先。


「うちは世津子。三人の男兄弟のおかんで、平日昼はスーパーでパート。休日は、決まって遊びに出る。じっとしとかれへん性分でな。あんたは?」

「わ、わしはこの国の国王で、トラジェンド・ベルンドラと言う」

「とら……なんかよう分かれへんから、トラちゃんでええな!」


 剣の切っ先を喉元に突きつけられたままのセツコ様が、驚いた事に顔色一つ変えず、陛下にまさかの声を投げかけた。


 目ん玉がスポーンと飛び出たかと思った。


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2026年1月12日 12:02

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