ガチャ廃人の決意
シンがガチャにハマったのは、十五歳を過ぎてからだった。
理由としてはありふれたものだ。スマホを買ってもらって何気なく暇つぶしに入れたゲーム。そのゲームで引いたキャラが当たりだったらしく、学校に行って見せたら友達が盛り上がりそこからのめり込んでいった。
「……初めは純粋に楽しかったんだよな」
ガチャにハマりお金を稼ぐために冒険者になった。
幸いにも義務教育の終わった15歳から冒険者になれた。
その時シンは16歳だったので親の許可を貰い冒険者の資格を手に入れることはできた。
ネットで調べた知識を頼りに、友達を誘ってダンジョンへ潜る。
冒険者としての才能は、確かにあった。
十八歳になる頃、スキルを得た。
【等価交換】
運任せのスキル。
だが幸運にも――いや、不幸にも――
それはシンに、十分すぎる力を与えた。
危険なダンジョン。
成功すれば金が手に入る。
失敗すれば、死ぬ。
何を犠牲にして力を得ているのかは分からなかった。
だが、その“強さ”は、確実に友達との差を作っていった。
次第に距離を置かれ、
溝は、埋められないほど深くなっていく。
そんな生活の中で、
唯一、何も考えずに済む時間が――
ガチャだった。
◆
最初は、無課金だった。
配布石でガチャを引き、
当たれば喜び、外れれば笑って終わり。
「まあ、こんなもんか」
そう笑って友達と過ごし、またダンジョンへ潜る。
そんな日々だったが自分だけが異常に強くなり、それに伴って友達との溝がどんどん深くなる。
最初はちょっとした気持ちだった。
あの頃のように楽しく友達と笑ってガチャを引いて欲しいキャラが当たった時の気持ちが蘇ってきた。
あの頃にみたいに戻りたい……
気付けばガチャを引くために課金をしようとしていた。
◆
課金は、少額からだった。
千円。
二千円。
「飯一回分だし」
だが、引けない日が続くと、
理由は変わる。
「ここまで回したんだから」
「次は来るはず」
「確率的に、そろそろ」
いつの間にか、
ガチャを引くために金が必要になっていた。
「……金、足りねぇな」
その時、
シンの視線は自然と、ダンジョンへ向いた。
その頃には自分でも気付かないうちにガチャそのものにハマっていた。
◆
「潜るか……」
命を懸ければ、金が手に入る。
金が手に入れば、ガチャが引ける。
シンプルで、
歪んだ循環。
最初は、友達との思い出が懐かしかっただけだ。
だがいつしか、
“当たった時の感覚”だけを求めて回すようになっていた。
シンはダンジョンに潜った。
危険な階層へ。
誰も行かないルートへ。
その頃には等価交換がなにを犠牲にしてるのかが分かってきた。
いくら確率が低くてもあれほど課金したのに目当てのキャラが出なければわかる。
確率の問題ではない。
運営に問い合わせても、返ってくるのは
「不具合は確認されておりません」の定型文。
自分が得た圧倒的な力はシンが最も望むガチャ運を犠牲にして得たものだった。
分かってからはもう引くのは辞めてダンジョンに集中しようと思ったが学校に行くと周りで同級生が楽しそうにゲームの話をしている。
その中には離れていった友達の姿もあり前と同じようにゲームのガチャで何が出た、出なかったと盛り上がっている。
その光景を見ると自分もそこに混じりたくなる。だが避けられてる自分が混ざることは出来ない。
だからこそ思い出の中にある友達と盛り上がっていたガチャを引き、懐かしむことしか出来ない。
そんな生活を続けていくしかできなかった。
そうやってシンは強くなっていた。
異常なほどに。
石を投げれば魔物が砕け、
攻撃を受けても傷一つつかない。
「……俺、強くなりすぎじゃね?」
最初は力任せだったが使い続ければより効率的な力の使い方も分かってくる。
だが、それより――
シンにとってはガチャの結果の方が、よほど重要だった。
◆
「……また、か」
スマホの画面に映る、見慣れたキャラ。
星5。
だが、欲しいやつじゃない。
「……もう三体目だぞ」
課金額は、いつの間にか七桁を超えていた。
天井システムがないとはいえこんだけ課金すればほとんどのプレイヤーは欲しいキャラを手に入れることはできる。
だがシンには出ることは無い。
「……なんで出ねぇんだよ……」
ダンジョンでは異常な幸運を引く。
希少素材。
レアドロップ。
伝説級の魔道具。
なのに。
「……ほんと俺なにやってんだろうな……」
シンは、スマホを床に放り投げた。
◆
しばらく、天井を見つめる。
頭の中に避け続けていた考えが
じわじわと浮かび上がってくる。
「……いつまでこんなことやってるんだろうな」
最初はちょっとした気持ちだった。
友達とまた楽しくガチャを引きたい。
それが高校を卒業して何年も経ち、親交などとっくに無くなっているのに思い出に浸ってガチャだけを引き続ける日々
「……もういっそのこと」
シンは、ゆっくりと起き上がった。
「……出ないなら俺が運営する方にいけばいい」
自分が引くから、苦しいし思い出が蘇る。
なら――
「……見る側に回ればいい」
◆
ギルドのホールを見渡しながら、
シンは考える。
魔剣。
魔道具。
魔石。
ダンジョン産の食料アイテム。
伝説とされるエリクサー。
ダンジョンには、
人が欲しがる“当たり”が山ほどある。
「……俺が集めて」
「……俺が並べて」
「……他人が引く」
自分は、引かない。
「……それなら、俺は傷つかない」
異常だと分かっている。
それでも、ガチャから離れられない。
ギルドにいる医者からはそこまで執着するのはスキルによってガチャ運を失ったことが原因と言われた。
人は失った物を本能的に求めるものらしい。
「……よし」
シンは、静かに決意する。
引く側の地獄から、
運営側へ。
ガチャ廃人のガチャ運営 ペロロンチーノ @aiaisama
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