アカシア書店の日常
あまつゆ うた
ミモザ
ボクの朝はいつも電車から始まっている。
身支度の時は学校に行きたくない気持ちが強くて朝とは言えないだろう。
むしろボク同士の葛藤と言って良いのではないかと思っている程で
それでも学校に行くのは基本週の3日
全日ではなく通信という選択を昔のボクは取った。
大学のように行かねばならないところだけを登校していて
休みの日はいつも本屋で時間を潰している。
お陰で店長とは仲が良い。
この日もいつも通り本屋に居た
古い建物でお客さんなんてほぼ来ないような場所にある。
来るお客さんは大抵神社のお参り帰りの方しか見たことがない。
店長いわく、導かれてきたと言うが信じろという方が難しい。
店長はいつも誰かと話している。
その話は独り言でしかないがまるで誰かと話しているように見える。
「何見てんだ、仲間に入れてほしいのか?」
微笑まれながら店長と目が合う
「いや…またいつ通り話してるんだなって」
「今日の奴はな、お婆ちゃんだ」
「また妄想ですか」
「いつも言ってるだろ妄想じゃなく見えてるんだよ」
店長は幽霊や神様のようなものが見えるらしいが声は聞こえないのだという。
馬鹿らしいと最初は思っていた。
でも今は、少し信じている。
店長の片目だけ見えているその目は何かを見透かすようにいつも見てくるから。
「あいつらが見える方法は店を引き継いだら教えてやる」
これが店長がよく言う言葉だった。
だからボクもよく返す言葉を見つけて返す。
「引き継ぐまでこの店続けといてくださいね」
そういうと店長は少しだけ本当の笑みを見せるように笑うから。
ボクはこの店も店長も守りたいそんな願いが少しだけ
芽生えた気がした本当のボクの願いだと信じている。
あの日の話をしよう。
ガラガラと音がした
開くドアに店長は気づきボクを案内した。
「ようこそ、ここはお客さんの心に似合った本を見つけ出す本屋だ。
ざっくりいうと、俺がお客さんと話して本を提供するそんな店。
まぁ、カウンセリングみたいなことだな。嫌じゃなきゃ入ってみるか?」
店長が手を伸ばす。
店の雰囲気は外よりも良く、温かい。
なにも考えたくなかったのにその時は少しその気持ちが落ち着いた。
「今日の香りはミモザなんだ。嫌いじゃなけりゃいいんだけどな」
「ミモザ…毎日変えてるんですか」
「あぁ、じゃなきゃアイツらも飽きる」
アイツらとは誰だろうか、常連さんでもいるのだろうか。
そんなこと、どうでもいいか
なんて自然と考えるという行為をボクは無意識にやっていた。
アカシア書店の日常 あまつゆ うた @kusuri_3
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