元勇者、闇社会の王になりたい!…でも。なぜか元仲間が日本に来ている件
火猫
第1話
「…?…ああ、戻って来たのか?」
意識が戻った時。
戦場ヶ原はじめの目に映ったのは、見慣れたはずの青空だった。
だが、そこに違和感があった。
雲の流れが妙に遅い。
空気が薄く、重い感じ。
何より――世界から漂う魔力の濃度が、異世界とほとんど変わらない。
「……戻った、んだよな」
確かに異世界で魔王は倒した。
仲間たちと別れ、惜しまれながら光に包まれ、日本へ送り返されたはずだった。
はじめは立ち上がり、周囲を見回す。
見覚えのあるはずの街並みは、知らない姿に変貌していた。
高層建築は異様なまでに増え、道路には見たことのない車両が走っている。
人々の服装も、記憶の中の日本とは異なっていた。
混乱の中で、遠くから悲鳴が聞こえた。
空間が歪み、地面が裂ける。
そこから這い出てきたのは、異世界で何度も相対した魔物だった。
「……ダンジョン、か」
理解は早かった。
そして体は、考える前に動いていた。
転移魔法で距離を詰め、剣を振るう。
魔物は抵抗する間もなく霧散する。
別の地点では分身体が同時に魔物を迎撃していた。
都市の各所で魔物が現れ、人々は逃げ惑う。
はじめはその全てに対処した。
火、水、風、雷。
浄化、結界、拘束。
かつて勇者として鍛え上げた力は、少しも衰えていなかった。
数時間後、街は静けさを取り戻していた。
はじめは瓦礫の上に腰を下ろし、荒くなった呼吸を整える。
その時、空を飛ぶ無人機が彼を取り囲んだ。
「こちら国際危機管理機構です。あなたの能力について――」
通信音声が流れ、続けて各国の言語が重なっていく。
事情を説明されるまで、そう時間はかからなかった。
自分が戻ってきた日本は、異世界から百年が経過した未来であること。
ダンジョンは世界各地に発生し、魔物氾濫が常態化していること。
そして――自分の力が、人類にとって喉から手が出るほど欲しいものであること。
その日から、はじめは“使われる側”になった。
討伐要請、視察同行、研究協力。
断るという選択肢は、巧妙に消されていた。
世界のため。
人類のため。
その言葉の裏にある搾取を、彼は嫌というほど理解していく。
夜、誰もいない場所で、はじめは空を見上げた。
「……またかよ」
異世界でも、同じだった。
力を持てば、縛られる。
その時、はじめの中で何かが決まった。
このままでは、いずれ心が擦り切れる。
ならば――世界から消えればいい。
勇者・戦場ヶ原はじめは、そうして静かに“死ぬ”準備を始めた。
それが、
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元勇者、闇社会の王になりたい!…でも。なぜか元仲間が日本に来ている件 火猫 @kiraralove
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