かの山は銀青なりき

加賀倉 創作【FÅ¢(¡<i)TΛ§】

人生に山谷の波動振幅有るを忘れるまじ

 渓谷たにに敷かれた軌道レイルの上、

 舞台演劇さながらに予定調和な座標移動が、

 終わりを迎えようとしている。




 °金属質な運動体は———


 ———断末魔の叫びを。




 静寂しじまなる音なき音の世界を、キィと擬音語表記オノマトピアできそうな金属音が、制動ブレイキと並行して上書きする。




 方舟はこぶねは新天地へ

 雲間に青白光線を浴び

 陰影かげの斜方運動が顕現けんげん

 像、伸長しんちょう極まりて

 瞳の奥、網膜の焼焦やけこげ

 耳の内、蝸牛かぎゅうの絶命


 そうして

 光学と音楽のデュエットが終演を迎える——・・•.




 よわい半世紀を控えた一両編成の鈍行電車が、私という一つの心臓——もはや現世との繋属けいぞくの断絶に直面する人體の急所とも呼ぶべき螺旋らせん発生装置——を、ついにこの地に送り届けた。




 ༄༄༄༄人魂༄༄༄༄

  ༄༄気配༄༄

   …皆無…

    ——

    -

 \  .

  》»ж🧬8水∞*≫≫≫〜∽

 /  .

    -

   ——

   …皆無…

  ༄༄気配༄༄

 ༄༄༄༄人魂༄༄༄༄




 °私はこんなところまで———


 ———片道切符でやってきた。




 我レ、口無キ、蜻蛉カゲロウナリ。




 私は、この長方な鋼鉄の箱の中にたたずみ、箱の内にも外にも、またおのが肉体という容器の内にも外にという意味でも、ほんのわずかな精気せいきすら感じ取ることができないでいる。


 つまりは、世界も私も、気力が果ててしまっているのだ。


 しかしたったこの脚二本🦴🦴と腰骨🦋ひとかたまりとに命じて、逆さ振り子運動を強いれば、箱側面の四角い風穴を通じて、首を、太古の巨体脳小ダイナソウな二足歩行肉食爬虫類みたく不恰好に前傾、外界へとのぞかせることが叶う。


 いつもどこかで、誰かがこんなふうに、説教している。




 ༄私が動けば、空気が揺らぎ、波紋し、風が吹く༄


 ༄弱々しい呼気さえ、現象の連鎖を生み、世界が千変万化せんぺんばんか


 ༄因果は廻る糸車ウィール・オブ・フォーチュン


 ༄蝶蛾舞う波及効果バタフライ・エフェクト


 卍Yourおまえの sawのこ刃が reap刈り取るのさ what何を youおまえが sow撒こうとも. It'sそれが Karmaカルマだ. Keep it in mind覚えておくといい




 知っているのだ。

 これもそれもあれも。

 だからなんだというのだ。

 そんなことより……


 *ж*ж*ж

 ж真横に殴るж

 *白い風が*

 ж冷たいж

 *ж*ж*


 嗚呼…

 あゝ≫»›

 降車したのか、私は。


 私は、私の苦冷深淵クレバスに潜む衝動なる為導イドによって、現世に執着するよりもむしろ来世に駒を進める方が合理的であると口車そそのかされ、突き動かされている!


 しかし一方で、この景色……

 私の中の錐体細胞セロトニアン桿体細胞メラトニアンは、今此瞬間チグミスンガンの網膜刺激に、たいそう感動している!




   この山

  酷く美しく

 銀青ぎんあおである。

❄︎*ж*†※•・。…_✳︎°+♀




 青い海の防波突堤ぼうはとってい灰鼠色グレイブルウなのと相似形式で、白雪しらゆきなプラットホームの一歩外は茫茫ぼうぼう深緑ふかみどり。その深緑が砂糖グレイズであるせいで、さきほど車中、出っ歯でかじったシナモンロール——最後の晩餐か!?——を思い出す。見渡す限りに、上背たっぱのある針葉樹たちが、ご自慢の鋭角刻刻ギザギザ誇示みせびらかしているが、それはあお白銀はくぎん大槍おおやり風体コスプレイ地味じみていて、彼らが乳白の大地に突き刺さっているのには、車窓からの長い長い眺望で、既に見飽きたのを思い出す。さっきの「感動した」なんてのは嘘か。それかこっちの冷め切った感性の所有者は、超自我だろうか。美しいとも感じなければ、癒しもない。この不感症は、尋常ならざる冷たさのせいか、己の調子の問題——自我による為導イドと超自我との均衡調律の不具合——か、わからないし、わかろうとする興味関心も消え失せている。突っ立っていても仕方がないので、私はあてもなく、世界数十億人と仲良く同期中の倒立振子ふりこ歩行を試みるしかない。




   ψ

    ψ

   ψ 

    ψ

   ψ

    ψ


 キックキック。




   ψ

    ψ

   ψ 

    ψ

   ψ

    ψ

 

  トントン。




 雪渡ゆきわたりには、

 耳慣れない沓音くつおとが、

 伴わずにはいられない。

 

 それも、ひどく夢中になって歩みは進められるものだから、見た目にも聞こえにも、等間隔、である。


 この、私の下半身の生まれ変わりとも呼ぶべき秒針の振子ふりこは、何往復しただろうか。


 私の大脳皮質が記憶メモリせずとも、大地ガイア刻刻こくこくきざんでいる。


 しかしながら、頭上より容赦なく後続してくる真白ましろ叡智水葉えいちすいよう——凝固水——によって、白紙に回帰するのはまぬかれない。


 よって私が、私だけの意匠オリジナル点描てんびょうした歩道トレイルは、レコード盤のようなものではありつつも、後に、なぞる者なぞ、いない、一期一会の生的ライブ音楽である。


 剽窃ひょうせつせんと欲したとて

 氷雪、それ許すまじ———




      Ψ

       Ψ

      Ψ

       U

      Ⅱ

       ¡¡

      ••

       ・



      そして

      乂安がいあんなる

      大地ガイアへ。

     /    \

    /      \

   /        \

  /          \

 /            \

 ここでは雪が地に沈みきっている。


 くつ泥水どろみずとで熟熟じゅくじゅくかなでながら、果てしなく彷徨さまようと、私は、偶然にも大海原おおうなばらもどきにありついた。


 それは水溜みずたまりや池や沼と呼ぶには広過ぎた。




 みずうみ、だった。




 湖水のなぎは嵐の前の静けさ。


 私は、これまでよりもやや湿り気の控えめな赤褐色せきかっしょくの土の上で、軽く汚泥おでいまみれるのにはいとわず、水際みずぎわ限界きわのところで、尻餅しりもち着けて胡座あぐらいた。




   жжжж`жжжж

   水の上、氷の欠片




 私は、その似て非なるもの同士の重なりを、何かになぞらえたくなった。


 まず、

 ひとつ。


 外傷治癒の瘡蓋かさぶた

 その色赤黒くして、

 あおい管の走る、

 青白の肌の上に浮いている。


 あるいは、

 ひとつ。


 蓮葉はすばか、

 蓮華れんげ

 睡蓮モネ、とするには寒色が過ぎる、か。


 きっとここからは見えない水面下でも、錚々そうそうたる面々の一酸化二水素たちの青い争いが、静かに繰り広げられているに違いない。


 私は想像を膨らませ続けた。

 ゆがみきった姿勢をよりいっそう正して……


 只管打座しかんだざ——ただひたすらに、座り続けた。

 

 当然私は卒倒そっとうする。


 そうやって、覚醒セロト睡眠メラト輪番りんばんめぐるのだ———




    Θ

   目伏セ

  Θ   Θ




 汞汞汞汞汞汞汞汞

 水銀鏡Φ一面宏漠




    Φ

   目醒メ

  Φ   Φ




 起床。

 私は胡座あぐらのままに、水盆すいぼんのぞんでいた。

 即時、概日がいじつ律動妙リズムと腹のむしとが、ただならぬ時間経過の事実を、私にわからせた。

 湖面にまばらだった氷の膜が、一枚岩の水銀鏡メルクリウスに成っている。


 気づけば、

 震える、

 氷雪ひょうせつ被った、

 私の全身。


 ここの空気は、明らかに、冷たさを増している。




 でも・・・




 でも・・・




 でも・・・




 胡座あぐらいてできた

 くぼみという窪みに

 散乱さんらん累積るいせきした

 氷結晶の橄欖明輝きらめき




 暈暈暈暈暈暈暈  +

 暈今この瞬間暈暈暈

 暈暈暈暈煌金螺きらりんと暈暈暈

    暈暈暈燦爛さんらんする暈

  +   暈暈暈暈暈暈

            +




 私は背に、心地よい温もりを感じた。

 振り返る。

 子どもが母にそうするように。

 そして私はしかと、

 目の当たりにした。




       ねつつぶら


      (((◯)))

——————————————————




 場違いな渋木やまもも赤丸あかまる果実が、乳脂肪にゅうしぼうな地平線からひょこっとがってくる。




 【良氣陽揚いきようよう

 そのような、ありもしない四字熟語が、私の脳内辞書に強制印字された気がした。




 ༄私の心の燭台しょくだいに、魂のほむらワクスほのかに༄


 遥か遠離おんり、お天道様の熱原子核的融合が、四九九の遅延ラグを伴って、世界を熱核あたたかくしてゆく。


 陽光放射は、腐り根性への鞭の連打。


 真白ましろ雪絨毯ホワイト・ラグ伝振励甚ニュークする。


 冷え切って青白あおじろな、この地肌も、同様に。

 

 鞭、無知な、私に!


 動脈静脈、毛細もうさいの管、あらゆる流麗りゅうれいなる河川に、温もりが広がりゆく。


 それは、蚯蚓腫みみずばれの鞭打ち箇所が、忘れかけていた鮮血という存在で真っ赤に染まるのに等しい。


 私は、その命のあかし赫赫あかあかの赤を、非常にありがたがった。


 ふつ。


 フツフツ。


 イムイムイム。


 それは背後からの音。


 私ではない、他な音。


 たぎるのは、この身だけではない。


 共鳴と共振と。


 水面を取り巻く草木の輪。


 葉をれば……


 地盤じばんから水盆すいぼんへと首を伸ばす、平行脈植物の子葉。


 その細長な子葉は、華奢きゃしゃなるも懸命に、全身の水孔すいこうから、溢液いつえきを、漏斗ろうとなるきっさきに集めて・・・••._




   滴下てきかする。


     ∀

     ◯



————————————




 その先、黒く透ける銀鏡面ぎんきょうめんに、おぼろげな、大穴の気配。


 天の誰かが、大口が開いて待っているのが、そこに写ろうとしているのだ。


 迫る閾値しきいち——最低合格点。


 山紫水明さんしすいめいの声が聞こえる。





  。◯。雫が来るぞ! 大粒が来るぞ!°◯°


  °◯°氷柱つららの大槍が来るぞ!。◯。




    落つる雫。


     Ⅰ

     Ⅰ

     Ⅱ

     Ⅱ

     ◯




    その最中。




 ついに、

 一絡げの景色ホオルケイシキが、

 母なる温もりに完全曝露ばくろ


 移動性のいと熱きつぶら

 万物を寵児ちょうじが如く

 長時間のじんわり熱気で

 包み

 皆も

 水面も

 自我忘却じがわすれ

 ㄣ地割れㄣ

       (((◯)))

 ──────┬──────

      ⚡︎

     ⚡︎

    ⚡︎

   ⚡︎

  ⚡︎

 ⚡︎

 稲妻記憶の走る脳内

 最後に食べた誕生日ケイキは

 室温くたびれ生クリイム

 沈む果実のくれない斜陽 

 つれない天気雨垂あまだ車窓しゃそう




    時は、


     Ⅱ

     Ⅱ

     Ⅲ

     Ⅲ

   ((((◯))))




     ・

     ・

     ・




    来たり。


   °∵。.°.。∵° 

  °∵。∧。。∧。∵° 

___Ⅰ\人人ノⅠ___




 しずく

 飛沫しぶき

 王冠かんむりに。




    爽快に、


°∵  °∵。.°.。∵°  ∵° 

  °∵。∧。。∧。∵° 

____Å∧ ∧Å____  

    ∀v v∀

  。∵ v° °v ∵。

。∵  。∵。.。∵。 ∵。   




    弾けた。


(__(_(((・)))_)__)




 私はそれを

 全身の細胞を

 血眼ちまなこにして

 刮目かつもくしてやった。


 そしてぼそり、


「「「なんて綺麗なんだ」」」


 とつぶやくと、永遠ほどに冗長じょうちょうな二、三秒の後で、私自身が久しぶりに発語したことに気がついた。


 むろんこの声は、他の誰かには届かない。


 しかしその喉元からの確かな生命の波動は、私自身の胸に響いた。


 それで充分。

 充分すぎる。




 🌊👑🌊👑🌊👑




 銀青ぎんあお戴冠式たいかんしき即位アセンションしたのは誰だ?


 私だ。


 私は私の王国の王であることを思い出した。




〈〈〈I WISH YOU HELL!!〈〈〈




 Iアイ——過去の私。


 過去に苦しむなら、過去、それは毒性の残滓ざんし


 現在の群像にさえも、現在と思い込んでいる何かが紛れ込んでいる!


 その何かは過去の残像に過ぎない!


 残響に過ぎない!




〈〈〈I WISH YOU HELL!!〈〈〈




 自戒じかいの声を過去へもう一度投擲とうてき


 その請願せいがんにより過去の私は……


 過去の私は……


 死んだ!


 消滅した!


 消え失せた!


 過去の、死者の、うめき声を聞く暇はない!


 しんなる今に焦点せよ!


 石の如く不変硬直の過去!


 そんなものは踏み付けろ!


 下敷したじきにせよ!


 眞我ブラフマへの次元上昇アセンションのため!


 過去を利用せよ!


 過去は

 己を

 次なる高みへと引き揚げる

 金字塔きんじとうの石段!


 過去を段とし

 階上を

 天上を

 目指せ!


 私は次のように叫ばんとした。

「新たなる時代の始まりだ!」

 私は実際にそう叫んだ。



          ❤️‍🔥

 ༄༄༄༄༄༄༄༄༄༄༄༄༄༄༄༄༄

༄私の心臓の炎は再び螺旋の渦を畝らせ始めた༄

 ༄༄༄༄༄༄༄༄༄༄༄༄༄༄༄༄༄

          ❤️‍🔥

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かの山は銀青なりき 加賀倉 創作【FÅ¢(¡<i)TΛ§】 @sousakukagakura

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