中学生という多感で、高校生ほど自我の確立できていない時期、「部転する」という重大な決断を真正面から描いている点が印象的です。
中学生の世界では、部活は人生の大部分を占めますが、特に部長であった主人公の凛ならなおさらです。その重みを軽視せず、誠実に描いている点が本作の強さです。
凜がテニス部を去る理由が、単なる実力不足ではなく、むしろ努力しすぎたがゆえの孤立である点が切ないです。嫉妬やひがみという、どこの学校にも潜む目に見えない暴力に追い詰められて、行き場をなくしてしまう。
暗い序盤があるからこそ、中盤からの音の世界のきらめきが一層まぶしく映える構成になっています。幼馴染で大親友の綾音の存在は、(私としては)この作品の核です。
時々はったりを言ったり、ピンチの時にはかばってくれたり、努力を後押ししてくれたり。本当に掛け替えのない親友で、彼女の存在は清涼さと友情の素晴らしさ、必死さと愛情を作品に注ぎ、読者の胸を掴んで離しません。
また、本作の大きな魅力の一つに、金管バンドの描写が驚くほどリアルで、ひたむきさに満ちている点があります。マレットの重さ、打面の感触、リズムが合った瞬間の高揚感――それらが単なる説明ではなく、凜の心の動きと連動して描かれています。音楽経験者には懐かしく、未経験者には新鮮に響く、絶妙なバランスの作品です! 中学時代に部活に打ち込んだ方は、懐かしさと切なさを感じ、あの頃の情熱やひたむきさを思い出すと思います。
一生懸命走ってきたのに、ある日突然、プツンと糸が切れちゃった。
そんな主人公の「痛み」や「焦り」がすごくリアルで、冒頭から「わかる…」って何度も頷いちゃいました。
でも、この物語はそこからが本当に温かいです。
立ち止まってしまった彼女の手を引いてくれる親友の存在が、とにかく眩しくて優しい。
強引だけど愛のあるその「お節介」に、主人公だけでなく、読んでいる私まで救われた気持ちになりました。
まだ吹奏楽部に入部したばかりで演奏シーンが少ないですが、これからの展開に期待です。
あと、作中に出てくるご飯の描写がすごく美味しそう!
読んでいてお腹が空くし、家庭の匂いに包まれているような安心感があります。
人間関係に少し疲れちゃった時や、逃げ出したくなった時にこそ読んでほしい作品。
心温まる物語を探している方に、全力でおすすめです!