【怪談】人形供養
紅風秋葉
第1話
皆さんの家にも1つくらいは人形やヌイグルミと言った物があるんじゃ無かと思います。
最近は精巧なフィギュアや1体数万円もするドールなんてのもありますよね。
買わないまでもゲームセンターのキャッチャーの景品やカプセルトイと手に入れる機会は沢山あります。
かと言う私も各種数えれば、何万もする様なドールはありませんが、大小合わせて10体はあります。
皆さんは手に入れた人形などはどうされてますか?
箱などにしまっている?飾る?枕元に置く?
最近では推し活の1つとして、ヌイ活なんてのがあります。
お出かけ等で推しの人形を連れ歩き、共に楽しい時間を過ごすと言う行為です。
中には、日々の話し相手にしている…なんて方もいらっしゃるのでは無いでしょうか?
さて、この人形たち…処分に困る時があります。
普通であれば、素材に合わせたゴミに出す。
状態が良ければ中古販売店などに売る。
もしくは、友達に譲るなんてのもあります。
ただし特に永く大切にしていた人形はどうですか?
簡単に、捨てたり売ったりと言う訳には行きません。
多くは物置の奥にしまわれたりしているのでは無いでしょうか?
ちゃんとした処分を望むのであれば、神社仏閣で人形供養をして頂く事になります。
前置きが長くなりましたが、これからお話するのは、そんな永く大切にされた人形の話です。
この話はA子さんの話であり、私はA子さんの息子さんから話を聞きました。
A子さんは幼少期より人形が好きで、たくさん集めていました。
そして、いつしか自分で作るようになりました。
動物やマスコット、さらにアニメのキャラクター物です。
好きこそ物の上手なれと言いましょうか、作られた人形のクオリティは中々なものでした。
作品を見て購入を求める方がいた程です。
ただ趣味で作られていたA子さんは、売る事はせずに譲っておりました。
そんなA子さんも年頃になり、縁もあってご結婚をされます。
そして数年後には子宝にも恵まれました。
ですが不幸な事にその赤子の声は聞く事が叶いませんでした。
A子さんは酷く落ち込み、自室に籠もってしまいます。
部屋の中からは呻くようなA子さんの枯れた声が、昼夜問わず響きます。
それでも旦那さんは、献身的に支えます。
その甲斐あってか、約2月後に自室から酷くやつれた姿で出て来ます。
そして旦那さんは気が付きます。
A子さんの黒く艷やかな腰まであった髪は失われていました。
うなじで痛々しく千切れていたのです。
手入れの行き届いた繊細な指先も、爪が剥がれ乾いた肉が見えています。
そんな変わり果てたA子さんを旦那さんは優しく迎えました。
1年後、ざんばらだった髪も美容院で綺麗にまとめられています。
爪も少し歪ながらも、ほぼ生え揃えました。
精神的にも落ち着きを取り戻し、日常生活にもだいぶ慣れた頃です。
旦那さんはある事に気が付きます。
以前よりA子さんは買い物などで出かける際は、ショルダーバッグを持っておりました。
最近はそれとは別に小さな2㍑のペットボトルが入りそうなリュックを持つ様になりました。
何気に中身を聞くも曖昧にはぐらかされます。
絶えず後生大事に持ち歩くため、こっそりと中身を確認する事が出来ません。
一度、A子さんがお風呂に入っている際にリュックの中身を見るも空。
中身を持って風呂に入っている様でした。
ある日突然にA子さんは行方不明になります。
1週間後に遠く離れた青森で警察に保護されます。
発見されたA子さんは腕の中に身長20cm程の子供の人形を抱いています。
そしてその人形に優しく愛おしそうに微笑みかけていました。
それから3年、A子さん夫婦は新たな命を授かります。
今回は無事に3人の家族となりました。
その後は平和で普通と変わり無い穏やかで幸せな人生を送ったとの事です。
「っと言う事なんだが、どう思う?」っと、この時の産まれた息子のBさんは私に言う。
「A子さんが最後の失踪から戻った時に持っていた人形が結局は何だったの?」と私はBさんに聞き返す。
「そうだよな?そうなんだよ。気になるよな?っでコレなんだ」
そう言うとBさんは、机の下から2㍑のペットボトルがい入りそうな大きさのリュックを出す。
私は思わず引き攣る。
「去年さ、お袋が亡くなったじゃん?っでコレどうするってなってるの…どうしよう」とBさんは続ける。
私は「人形?……話に出た…」と聞く。
Bさんは「ああ…」と言い、目の前の枝豆を食べてビールを一口飲んだ。
私は「一緒に焼いてもらえばよかったのでは?」と返す。
「デカくて無理だって言われた。」とBさんは不機嫌そうに言い捨てた。
「ってかずっと持ってたの?」と私は聞く。
「なんかね…物心付いた頃にはコレがずっと居てさ…」
そうBさんは言うとリュックをポンと叩く
「でもなんか怖くって幼稚園だったかな?泣いたんよ。」
リュックを見ながらBさんは何かの思いをはせていた。
「そう言う時はさ、オヤジが自室にしまってた。」
少しBさんの表情が緩む。
「でもお袋が出かける時はこんな感じの小さなリュックを持っててさ」
うんざりだと言わんばかりの顔になった。
「多分コレが入ってたんだよね…」
そう言うと残ったビールを飲み干した。
「オヤジも死んでるし、俺しか居ないじゃん…」
そう言いながらオーダー用のタブレットを取る。
「捨てる訳には行かないし…っで聞いてみた。」
そう言うと、ビールを追加注文した。
「どうするって…捨てれないなら、ずっと持っておく?」と私が聞く。
「嫌だよ!」
Bさんは即答だった。
私は人形供養の話をした。
「やっぱそれかぁ…実は一度断られてるんだよね…」
リュックを見るBさんの目は嫌悪そのものだった。
「坊さん曰く『重過ぎる』『宿っているのは人の魂じゃない』…それと『人には覗けない』…だってさ…」
Bさんは届いたビールを受け取り一口飲む。
その後、話題を変えてお互いに数杯飲んだ所で解散となった。
Bさんは、小さなリュックを大事そうに抱え、そのまま街中に消えていった。
【怪談】人形供養 紅風秋葉 @BenikazeAkiha78
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