天国の天気は、いつも晴れている。
さわみずのあん
天国の天気は、いつも晴れている。
お母さんが死んだのは、私が五歳の頃。
幼稚園の送り迎えが。
お父さんに変わってから。
一年くらい。
お家にいつもいたのが。病院に。
お見舞いに行っていたのを思い出すと。
記憶の中で、ぼやけ、くすみ。
なのでなく。
真っ白なはずの病室が、灰色に見えて。
母の頬には、今までなかった、影が。
落ちていた。
そのせいか、お母さんが死んだとき。
やっぱり。と思って。
あまり泣かなかった。
私が初めて泣いたのは、母からの手紙。
私の誕生日は、お正月。一月一日で。
一つ。年と、歳を。経るたびに。
毎年。年賀状が届いた。
おたんじょうび おめでとう
あけまして おめでとう
のあんちゃん げんき?
なんて きかないよ
おかあさん
おそらのうえにいます
いつも あなたをみてます
てんごくは いいところです
おそらのうえだから
いつも はれています
おひさまが
…
…
…
葉書の上に。
落ちる。
いく粒の涙。
インクが滲んでしまうのを。
私は慌てて、袖でぬぐった。
母からの手紙は、
ねずみに始まり。
うし
とら
うさぎ
たつとへびは、苦手な私が。
怖がるだろうと。
ケーキと鏡餅。
門松と誕生日プレゼント。
のイラスト。
うま、ひつじ。
さる、とり、いぬ。
いのしし? これ?
どれも。震える線で。
描かれていた。
干支が一周。まわる。
幼稚園、小学校。
中学校、高校と。
そうして。
父も死んだ。
あっけない。
事故だった。
天涯孤独。
雨の交差点で。
父の亡骸を前に。
そう思った。
天蓋の下。
一人。ならば。
私も。
上へ。
階段を上り。
ビルの屋上へ。
父が死んだとき。
と同じ。
私の涙と代わり。
雨と一緒に。
私は降った。
目を。
覚ますと。
晴れていた。
お空の上だから。
天国の天気は、いつも晴れ。
そして。
地獄の天は、地が蓋を、屋根をしている。
地面の下だから。天気。いや。地気は。
地獄の地気は、いつも晴れている。
天国の天気は、いつも晴れている。 さわみずのあん @sawamizunoann
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