俳句と散文 「御歳魂(おとしだま)」

よひら

年玉の時代変われど子は同じ

あけましておめでとう、はい、お年玉


ありがとう


姪はそのままポチ袋の中身も確認せずにポケットにしまった


義兄さんありがとう 

と姪っ子の父親であり、妹の夫である義理の弟が礼を言う


兄さんありがとう 

同時に母親である妹が礼を言った


かつては江戸時代以前では神様の宿ったお餅を配ったとされるお年玉の風習も近世や近代になると現金に変わり、やがて電子マネーやポイントのおとしだまも登場した。しかし、現在では、、、。


義兄さん ありがとう ありがとう ありがとう


また始まったか、やれやれ


妹は、手慣れた仕草で動作の止まった義弟の瞳を覗き、瞳に映ったエラーコードを読み取ると、情報端末を操作してエラーの修整を試みた


程なくサイボーグである義弟は正常になり、何食わぬ顔でお雑煮を口に運んでいる。サイボーグである弟には食品は一口で十分であり単に食べる真似事をしているだけだ。


姪っ子は既にもらった年玉のコードから得た情報を自身の端末に補充していた。彼女は、人口受精で授かった子供で、このご時世では貴重な存在だ。


姪っ子は、端末の操作を終えると元気よく叔父様ありがとうございますと挨拶すると自分の部屋に戻ってしまった

多分友達とリモートでゲームなどで遊ぶのだろう


ひとしきりお互いの健康状況や近況報告、何気ない世間話をして、ひとときを過ごす

我々は注意深く政治にかかわる話は避けていた


じゃ、そろそろ帰るとするか


兄さん、元気でね


ああ、お前もな


お義兄さん、また何時でも遊びに来てください


ありがとう、お互い健康と安全には気をつけよう

なんせまだ東シナ海では戦闘状態が続いているから


そうですね


じゃ、さよなら


お元気で


姪っ子の部屋からは大きな笑い声が聞こえる


ああ、子供たちは変わらんなあと思いつつ

俺は妹夫婦と別れ帰路についた


いつまで穏やかな正月を迎えられるのかは不透明だが、とりあえず当面は大丈夫かな、と思いつつ2046年午年の元日が終わろうとしている。


了(fin.)



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