アンダーワールド
@Gfatt664
第1話
産まれも全て統治下に置かれていた。
意思を持って歩き出す頃には自分が日の光を観ることは二度と無いのだと悟った。
生まれた時から番号をつけられ、多くの子供達の中から管理された適当な名を付けられている。
己には東洋史の名簿録より考志と言う名がつけられた。保育機関が過ぎ運動する事がままなる頃には流れ出てくる無限の石の感触を掌が覚えた。
コンベアに流れる地下資源の魔晄石を餞別する。
含有量がある程度で仕分けなければならないが時折というかまぁまぁな頻度で別の分子体が混じって高度な結晶を精製する。
それが手袋越しでも刺さる位鋭い時が目が覚める程の激痛でだから男がする仕事に運んで積んでそれの繰り返し。安価で卸されたその器具の黒ゴムの取っ手には血液と砂埃が混じった染みが残った。
年が積み重なり17になる頃、浮遊する魔素を自然吸収しマントルから滲み出る粒子を含有する物質が産出する岩石を価値を落とさぬよう筋肉と器具を使って採掘する作業を任されるようになる。
辺りに鉱脈が無くなると次を巡って自分が矮小に見える程の人型凡庸掘削機が耳を劈く轟音響かせ鋼鉄の高度を誇る土を削り広大な空間を開拓する。その繰り返しだ
他の仲間達も女子供が出来ない力仕事に汗水流し得られた賃金で地下街に出かけ欲求を満たす。
暑苦しい空間を抜けた先で行き交う人間を縫って進む俺の背中に誰かの声が呼んだ。
「お疲れ考志」
聞き慣れた女の声だ。
振り向き彼女の姿を眺めた。年相応に着こなし化粧をした母性を感じる顔立ちが何処か懐かしさを感じさせる。中々悪くない他と比べても見劣らない可愛さの少女だ。
識別番号0100741(端数は除く) 名を177人目のマナの彼女は主に食料品店やレストランを掛け持ちして働いている。
たまたま同じ養育所で育った仲だ、知り合いではあるが別に深い関係では無い。
「あぁ、今暇なのか 飯食いに行くからその後な」
「私も行く お腹空いてるから さっきシフト終わったばかりだし」
隣に立ち腕を抱き寄せ、じっと此方を見つめる。
「どうせ無料支給のレーションでしょ?たまには美味しい物食べようよ」
「俺はいいよ別に」
「ねぇ、もしかしてまだ貯めてるの?」
「....お前には関係ねぇだろ」
自分達は空の景色は夢物語であると教育されていた。リストに埋め込まれたチップは地下市民であると位置づけ無断に外に出る事は死を意味する。
自分達には地上人との人権が存在しないのだ、そして保障された生活で死ぬまで労働をこき使われ続け世界を開拓し高純度の資源を運ばねばならない。
しかしながら市民権を得る方法が金だ。おおよそ途方も無い程の資金があれば地上で買うことができる。晴れて人として認められる、日の光と自然の緑透る空気を味わえる、此処では空調された人口の空気と仕事場の粉塵と鉄の匂いだけだ。
いつか味えるのか分からないその世界に想いを捨てきれずに働いては金を蓄え続けている。
「あのさ考志が外の世界に出たいって思うのは皆一緒だけど此処には植物が育つ場所だってあるし水源だって地下から出てくるから何も困らないと思う、だから我慢出来てる。十分に生きられるんだよ 態々危ない世界に出てまで此処を捨てる必要なんて無いそうまでしてどうして出たいの?」
「息苦しいんだよ俺が何しても大して評価されない世界で永遠としたくもない力仕事をさせられ続けるのは、夢を見たっていいだろ」
「皆そう思って頑張ってるよ」
腕を握りしめる力が強くなる。
「私も色んな疲れてる人相手してキツイけど頑張ろうって思える」
「....」
「一旦落ち着かない?最近美味しいとこ見つけたんだ」
肩ほどで切りそろえた髪が允志の感触を刺激し心地よい香りと均整な顔立ちの瞳が見上げ身体の深くをほんのり温めた。
食事はマナが伝えた通り中々美味しかった。等級の高い培養肉を安価に提供出来る伝は本物かステーキや串焼きに味付けのタレに舌鼓を打ち唾液を飲んだ。
そしてジョッキグラスに写るマナの火照る頬と潤う唇と涙袋と瞳が会話する俺の高揚を高めた。
うつつ俺が見上げた頃には桜色の明かりが照らす歓楽街に立っていた。
「来ちゃったね」
深酔いのせいか余り大して考える言葉が見つからず頷くだけで済ませてしまう。だからマナは身を任せお互いに手頃な宿を探す。
コンクリートの合間の階段を登り木製のドアを開き無人の受付で会計を済ませた二人はエレベーターで下り装飾品が照らされカーペットが敷かれた廊下を進み番号の部屋に入った。
スタッフが事前につけていた部屋の香料の香りが鼻腔を掠める。
一面のムードにまた入ってしまったと後悔する自分が居た。
「さっきさ、世の中がどうとか言ってたよね 私も仕事をこなしてお金稼いで済む場所にお金払って好きな物買って友達と遊んでそれだけしたのに時々寂しくなるなんて贅沢だと思わない? なんか可笑しいよね」
元地上人で借金を背負わされ此処に売られてきた者が言うには此処は賃金の割には物価が安いと割と好印象に話してたのを思い出す。
それでもいつか地上をと懸命に働いていた彼は作業ロボットの操縦ミスで崩れてきた岩盤に巻き込まれて死んだらしい。
俺もいつか働いていればそういう運命を辿るのだろうか?
親の居ない俺を悲しむ奴なんて居るのだろうか?
硬くなった掌をマナの手が覆う。
「どうするの?」
悲しむのか聞くべきか?そんな事して慰めて貰ってどうなるのだろうか。
俺が何した所で結局したい事なんて見つかりはしないのに。
やがて考えても無駄だと悟り彼女を抱いた。
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