『”怪 談” -Kaidanー』

穂上龍(ほがみ りゅう)

鬼百合

   

 たび武士ぶしきゅう便意べんいをもよおしたので、野糞のぐそをするためみちからそれれてやぶはいった。

 

 猛暑もうしょくさいきれのなかさかべたにはかまこしからろすとかがんで用便ようべんした。

 はなつくにおいいをぎながら、くてたか下痢糞げりぐそがひりおと、をきながら、かれ今後こんごえを多少たしょうおもったが、またした。

 

 とうげにあった茶店ちゃみせ団子だんごでもあたったものかとけたが、不規則ふきそく下痢音げりおといているうちに、どうにでもくなった。

 

 やぶだからる。

 その一枚いちまいって自分じぶんしりいたとき、そのこえがった。


「ああ・・・!いたい!」

 

 何事なにごとかとそこをれば、なにもない。無操作むぞうさいたやぶである。

 

 くそいたてると、かれ無造作むぞうさはかまげると左手ひだりてこし大小だいしょうかるくなでてきびすかえした、その背中せなかまたこえかった。


御恨おうらもうしますぞ・・・、御武家様おぶけさま

 

 かれかたな鯉口こいぐちをきった。あまり殺気さっきかんじない。


だれるのか?」

 

 うたが返事へんじい。

 もう仕様しようがないので、かる気合きあいけるとちで三回さんかいやぶいだ。

 かるおとを立てて、くさが、がとんだ。だれもいない。

 おもごしとしてろうとしたとき。それをた。

 

 いだやぶあらわれたのは、はなだった。はなる。無造作むぞうさひとい。百合ゆりだった。


「・・・わたしにこのよう仕打しうちをさるとは、あまりにも慈悲じひがない。早死はやじいたしますぞ」

 

 しろみょうはなしゃべった。其処そこからこえいた。

 裂帛れっぱく気合きあいかれれをはらうと、はなくびおととした。

 が、こえまない。


「ああ・・・いたい、いたい、いたい・・・。一体いったいわたしなにいたしました。・・・益々ますます御恨おうらもうげますぞ、お武家様ぶけさま・・・」

 

 かつ!と気合きあいれるとさむらいは、くびくしたみじめなくきばすと、渾身こんしんちからでそれをいた。

 くき悲鳴ひめいげたかのおとともに、つちかるくておもいとおとけた。

 

 つられててきたのは、それらにきついたかたちのサレコウベだった。

 ふるびた、土色つちいろの「されこうべ」。


                 ※

               

 あとふもとむらいたところ、もはやびともいないはか一昔ひとむかしほどまでたしかにったという。

 

 旅装りょそう武士ぶしは、ふるびたほねをそのむらはずれの小寺こでらあずけると、多少たしょう金子きんすいた。

 

 むっつりだまったさむらいいた住職じゅうしょくたずねると、かるせて「荒木又右衛門あらきまたえもん」と名乗なのった。

        

                               おわり


                              (2001年・筆)


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