転生者なんて負け組だ
荒野旅人
プロローグ
第1話 転生者なんて負け組だ
俺に言わせると転生者なんて負け組だ。
よく聞くだろう?
ある日、突然、異世界に転生する。
転生した世界でチートスキルを得て満足な人生を送る…そんなお話し。
もしかしたらそんな人もいるのかもしれない。
けれど、俺の場合、そうはいっていない。
そう俺は転生者なんだ。
不幸なことに。
転生しても特にこれといったチートスキルを与えられたわけではない。
更に、俺の世界では転生者として生まれること自体が危険なんだ。
姿、年齢もそのままに異世界に転生するパターンや、元の世界の記憶だけを持って異世界で赤子として生まれるパターンがよくあるが、俺の場合、後者だった。
この世界の厄介なことは転生者の存在が知られていることだ。
この世界では転生者が俺だけというわけではない。
稀ではあるようだが、これまでにも転生者が生まれているわけだから、この世界の人たちは転生者の存在を知っているわけだ。
その世界の住人が転生者の存在を知っているとどう厄介なことになるかわかるだろう?
想像してみるがいい。自分に子供ができた。
自分の、或いは、妻のお腹の中で少しずつ大きくなっていく間、お腹をさすりながら、男の子だろうか?女の子だろうか?将来どんな子になるだろうか?どんな名前を付けようか?どんなことをして遊んでやろうか?どんなことを教えてやろうか?どんなふうに育てていこうか?そんなこと考えるわけだ。
それは楽しいことだろう。
生まれてくるのが待ち遠しいだろう。
それなのに、それなのに、生まれてきたその子は自分よりも本当は年上のおじさんだったりするわけだ。
常識的に考えて忌まわしいに違いない。
それまでの楽しみにしていた時間を奪われたような、裏切られたような気持になるだろう。
それどころ生まれてくるはずだった自分たちの赤ちゃんを奪われたと感じるかもしれない。
だから転生者は自分の子供と認知されないのが当たり前だ。
それどころか転生者と知られた途端に殺されることだってある。
この世界の一部の地域では転生者のことを『取り替え子』と呼び、お腹の中で育っている我が子がいつのまにか悪魔に殺され、乗っ取られたのが転生者であると言う迷信がある。
その地域では生まれてきた子供が転生者とわかった途端、悪魔とみなされて殺されてしまう。
その地域は極端だとしても、この世界では転生者であることがバレた子供は養育を放棄され、捨てられたり、売られることが当たり前だ。
無事、大人となっても転生者とバレると差別を受ける。
忌まわしい存在とされているからな。
不気味なんだろう。
だから多くの転生者は、自分の出自を隠して生活をしている。
俺も親しい間柄でカミングアウトすることもあるが、普段は転生者であることを隠している。
まぁ慣れれば、どうという事もないが、不便だ。
な?転生者なんて負け組なんだ。
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