彼女いない歴イコール年齢の俺が寝取り先輩などというあだ名がつけられていた件について
みつばち架空
第1話 NTR先輩
俺は高校でうまくやっている方だと思う。生徒会長とサッカー部のキャプテンを兼務し、交友関係もそれなりに多い。ある一つのことを除けば、俺の高校生活は輝かしいものだと皆が同意してくれるはずだ。
そんな俺だが、今日、衝撃を受けた。サッカー部の信頼する後輩の一人、倉持という男が裏で俺についてこう話しているのを耳に挟んだのだ。
なんでも俺こと鈴崎蓮は究極の「寝取り先輩」だというのだ。それを聞く他の後輩たちも同調する。あの人を前にしたらどんな女子も寝取られるし、現に鈴崎先輩は多くの女性を寝取ってきたのだからと。
「だってこの前は体育倉庫に一年三組の女子を呼び出して……」
それからあまりに破廉恥な言葉と展開が続き、話が頭に入ってこなかった。
とにかく唖然とした俺は、同じサッカー部に所属する親友の友塚健斗に問いただすことにした。
場所は駅前のカフェ。俺の率直な質問に健斗は微妙な表情を浮かべた。
「その話は知っているが、そう悪いあだ名でもないらしいけどな」
「いやいや、寝取りってあれだろ。人の彼女を奪ったりすることだろ?悪意のあるあだ名でしかないし、そもそも俺と何の関係があるんだよ!」
健斗は一度テーブルのアイスコーヒーを啜った。
「蓮、お前はモテるだろ?」
その問いには答えを窮するしかない。実際、モテないことはない、というか告白されるのは日常茶飯事だ。ただそれがなんだという?本当に好きな人と付き合えなければなんの意味もないというのが俺の基本的な考え方だ。健斗は続ける。
「整った容貌はもちろん、身長185cmを超えるそのたっぱ。さらにサッカー部で鍛えた筋肉。光沢のある黒髪と、うっすら青みがかった瞳」
「これは仕方がないだろ、元々色素が薄いんだから」
「さらに見た目だけじゃない。グローバル企業を経営する鈴崎一族の長男という恵まれた家庭。姉はCMに引っ張りだこの人気有名女優。これだけ並べ立てたら分かるだろ?」
「いや、全然理解できない」
「つまりだな、フィクションの世界で言うといかにも簡単に主人公の彼女や幼馴染を寝取りそうな悪役要素満載の先輩なんだよ。お前がな」
サッカー部の後輩たちは彼女ができても絶対に部活に近づけないように必死だという話も健斗は付け加えた。
「そもそも寝取りどころか、俺はDOU……」そこで俺は言葉を止めた。
例え親友であっても、この話をするのはかなり気が引ける。俺は元の話に戻した。
「まさか健斗は俺のことそんな目で見てないよな」
「ああ、お前が人の女を奪うような奴じゃないってことはよく知ってるよ」
そんな健斗の話を聞いて一つ気になったことがあった。
「そういえばさ、俺、お前の彼女に一度も会ったことないんだけど」
俺がそう言うと健斗は一瞬慌てた顔をしてからスマホをいじる。「あーあ、明日も暑くなりそうだ」
「俺が不参加だった部内のバーベキューに健斗先輩がすげー美人な彼女連れてきたって後輩が話をしてたけど」
「おっ、鹿島勝利。勝ち点ゲット」
「話を逸らすな!」
健斗はまたコーヒーを口にしてから俺を直視して言った。
「ああ、そうだよ。どうしてもお前を引き合わせると俺が見劣りするからな」
「見劣りなんかしないし、俺たちの関係だろ! 少しは信用しろよ!」
健斗は首を振った。
「親友だからこそもし大事な人を寝取られたりでもしたら心に大きな傷を負うもんなんだぞ。それより、白石カナコって子の話はどうなんだ?」
「白石カナコ?」
「最近、お前が新たに寝とったという噂の女子だよ」
身に覚えのないことで混乱しつつも健斗と話しているうちに、二週間前の出来事が脳裏をよぎった。そういえばラブホテル街で出会ったあの女子は白石カナコと名乗っていた。いやいや、あれは何もなかった、……とは言えないのかもしれない。
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