はじめてのメガネ
柘ろ
第1話
初めてメガネを買った。
本を読むのが辛くなったのだ。
中学生の頃、洒落気づいて度なしのメガネを買おうと思い、雑貨店の傍に置いてあったクルクル回るメガネの塔みたいなやつの前で初めてメガネをかけたとき、びっくりする程似合わないと思い、慌てて外した。
そして、そこからはずっとメガネに背を向けて生きてきた。
一応カラコン世代ではあるが、友人が着けていたコンタクトを剥がす仕草を横から見てしまい、それはもう、眼球がはがれるなんとも恐ろしいホラーにしか見えず、自分の黒目がカラコン?ってたまに言われるくらい大きめでうっすら茶色いので、着けてる風をしれっと装ってカラコンも付けなかった。
そんな私には知らない事ばかりの初めてのメガネの世界は、とても面白かったので記事にしてみた。
まず眼科に行った。
眼科はもともとドライアイの点眼薬をもらっていたので、薬を取りに行ったついでにメガネ用に視力検査してもらう。
そこで初めて知った衝撃の事実、私は近視、遠視、乱視とフルコンボ。
視力は1.2と悪くないけど遠視もあって、乱視が強いのが本を読む時の妨げになってるっぽい。
先生が言うには、遠視だと視力が良くても遠くを見ていると疲れやすいらしい。
純喫茶のメニューみたいなものを渡され、開くと字の大きさと内容の違う文章が縦に並んでいて大きいのから順に読まされる。レンズ入れ替えたり調整しながらどこまで読めるか確認されるんだけど、その文章が昔の文章なのが不思議。
自分が感じるに大正あたりの古い表記と言葉で、すべてひらがなで書いてある。
「いふ」とかは「いう」って読めばいいのか、そのまま読めばいいのか迷ったけど、検査だしそのまま読んだ。
それで合わせてくれた昔のSFに出てきそうな、かけると透視できるタイプのメカニックなメガネを掛けて5分くらい新聞を読んだ。
せっかくだからめっちゃ細かい字を読んでみる。
株価のところとか。
楽に見えるけど、あんまり楽だと目が甘えて視力が落ちやすくなることもあるみたいなので、もう一個緩めにしてもらった。
他に患者さんのいるところでやらされたけど、誰も笑ってなかったな。
あんなメカニックメガネかけて新聞読んでるとか考えても面白いけど我慢してくれてたのかも。
ありがとう。
とりあえずそれを持ってメガネ屋さんへ。
まず、最初に気付いたのが、一歩足を踏み入れた世界は【私以外全員メガネ】という事。
店員もメガネ。お客もメガネ。背景には並んだメガネ。
メガネばっかり。
私はメガネの国に迷い込んだ、異星人。
そこでメガネ星人が真面目な顔で話しかけてくるのだ。
そして私はその一員になる為に、説明を受けている光景。
もう面白くて、口元が歪むことはあったにしても最後まで吹き出さずよく我慢できた。私えらい。
メガネを馬鹿にして!と憤慨しているそこのあなた。
私は何も馬鹿にしてる訳ではない。
友達に話しても「メガネ屋行ってんのに当たり前やん」と真顔で言われたが、そうじゃない。
もしあなたが、一歩足を踏み入れた世界にいる人が、全員赤いベレー帽を被ってる人しかいなかったら面白くないですか?
どこ見ても赤いベレー帽。
赤いベレー帽を被った客が、また一つ新しい赤いベレー帽を買うために、赤いベレー帽の店員に当たり前に説明受けてる光景をみたら、すごい!って思ってじわじわ来ませんか?
そういう事。
本題に戻りますが、メガネにはブルーライトカットつけるとか、くもり止めつけるとか、レンズにいろんなオプションが付いてくる。
全然わからないので、ちゃんと納得したくて質問するのだけど、私についてくれてたオカッパメガネガールはまだ入ってそんなに経っていないっぽくて、背後からパーマメガネボスみたいな女性がレンズを光らせながらやってきて、的確に説明してくれました。
年末のセールの時期に行ったので、フレームはかわいいのを半額以下で買えた。
レンズのサイズが取り寄せだという事で一週間ほどかかると言われ、レンズがはまったら送ってもらうことに。
フレームは6000円位だったので、そこに送料やらも色々乗っかって全部で15,000円位だった。
届いてからかけてみたけど読書用だからだろう、近いところ以外を見てると酔う。
よく背景のピントをぼかして被写体がやけにくっきりしてる写真があるけどまさにそれ。
リアル雰囲気オシャレ写真メガネ。
そう思って遊んでいたら酔って気持ちが悪くなった。
早くなれないと。
そして、私はまだメガネ星の住人にはなっていない。
そのメガネをかけずに今も目にチカラを入れてピントを自力で合わせ、本と格闘している。
目の前に何かある事がすごく違和感あってなかなかメガネをかけようと思わない。
もう一度自分に言う。
さっさとそのメガネに慣れるんだ。
生粋のメガネ星人になるために。
はじめてのメガネ 柘ろ @karaco
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