第2話 マッチングアプリからラブコメの波動を感じる。


 俺はバイトが終わると、晩飯の食材を買うために途中でスーパーに寄って、その後マンションに帰って来る。


 帰ったらすぐに手洗いうがいをして、冷蔵庫の中に食材を入れた。

 今日は色々ムシャクシャしたし、なんか辛いものでも食べたい気分だ。


「……それにしても、マッチングアプリか」


 俺は部屋着に着替えながら物思いに耽る。


 田村先輩が紹介キャンペーンの賞金が目当てで、半強制的に俺へ入れるよう言って来た『Pair♡ing(ペアリング)』というマッチングアプリ。


 動画サイトの広告とかで見かけても全く関心がなかったが、いざ入れてみるとなんか不思議な感覚がある。

 とりあえず田村先輩には『キャンペーンのために入れるだけですから』と、言ってみたものの……課金した手前、何もしないのは勿体ない気もするな。


「待て待て。冷静に考えてマッチングアプリなんかで友達ができるわけない。仮にできたとしても、ネットでできた友達なんて希薄な関係で終わるだけだ」


 そう呟いて頭を冷やそうとするものの、考えれば考えるほど、大学に入ってからリアルですら友達がいない俺は、ネットの友達に対して文句をつけられる立場じゃないことを自覚する。


 田村先輩が言うには、同性で同じ趣味の人ともマッチングするらしいけど……本当なのだろうか。


 変に興味をそそられてしまう……それくらい俺は今、友達を欲しているのか?


 そりゃ今からサークルに入るよりも、圧倒的にハードルは低い。


「……まあ、あくまで同じ趣味の友達ができるか試してみるだけだ。のめり込むつもりはないし」


 なぜ独り言で言い訳をしているのか自分でもよく分からないまま、俺はアプリを開いた。


 年齢確認や身分証明書の確認はバイト終わりに先輩と一緒にやった(やらされた)ので、一応アカウントは作成済みだ。


 ただ、まだ自分のプロフィールや友達の募集などは書いていない。


 最初の画面にはLOVEモードとFRIENDモードの二つのモードがあり、LOVEモードは婚活とヤリ目(偏見)らしいので、友達募集のFRIENDモードを選び、FRIENDモード用のプロフィールを作成することに。


 性別や年齢、通ってる大学や仕事、住んでる場所、身長と体重など、かなりプライベートな項目がある中で俺は書けるところは書いていき、一番大事な【趣味】の欄で手を止める。


「無難にアニメや漫画って書いてもいいけど……俺が一番語り合いたいのは——」


 ふと、俺は部屋の片隅にある本棚の方へと目を向ける。

 四国にある実家からわざわざ東京へ持って来た、何十冊もあるライトノベルが入った本棚。


 高校の時にWEBで読み始めたのを皮切りに、集めるようになった俺の趣味……それがライトノベルだった。

 自由でなんでもありな小説の数々に、俺は心を惹かれたのだ。


 だからこそ、アニメや漫画よりも、ライトノベルを好きっていう友達を作りたいのが本音だ。


「よし……趣味のところは『ライトノベル』とだけ書くことにしよう」


 あくまでこれは実験みたいなものだし、仮に誰ともマッチングしなくても別にいい。

 俺が欲しいのはライトノベルが語り合える友達なんだからな。


 俺は趣味の欄にライトノベルを入れて、好きなラノベの写真も添えた。


 こうしてプロフィールの作成が終わると、その情報を元にして、自分とマッチしそうな候補者を何人かアプリが提示してくれる。

 次はそれに俺が【OK】か【NG】のどちらか判断することに。

 そこでお互いがお互いにOKを選ぶと、そこでマッチングしてトークに移る、といった感じだ。


 そこから俺は数十分くらい、そのOKとNGの作業をしていた……のだが。


「おいおい……このアプリやってる人でライトノベルが趣味の人、全然いないんだが」


 辛うじてアニメや漫画はいたものの、肝心のライトノベルは皆無。全くいないのだ。


 普通にショックを受けてしまったが、それ以前にこれ、俺みたいなオタク趣味の人間がやるものじゃないのでは?


「やっぱダメ、か……」


 俺はため息混じりに言いながらスマホ閉じる。


 ほんと、少しでも期待した俺がバカだった。

 やっぱアプリでポチポチやって楽して友達作りとか、そんなトントン拍子に上手く行くわけがない。


「はぁ……ちゃちゃっと麻婆豆腐でも作るか。コメもあるし」


 スマホを持って立ち上がった——その時。


『通知:ユーザーネーム「amayuuu♡」さんからコメント付きのOKが届きました』


「は?」


 突然、Pair♡ingから通知が入って、俺が誰かにOKされたことを知らせた。

 しかも月に1回だけ使えるらしい「コメント付き」のOKなのだ。


 より繋がりたいと思った相手にそれを伝える手段としてある機能だが……まさかそれが、俺に対して使われるだなんて。


『amayuuu♡:私もライトノベル好きなんです! 良かったらマッチングしませんか?』


「おいおい、嘘……だろ」


 驚くべきは趣味がライトノベルなだけではない。


 わ、わわ、私!?


 18歳、大学1年の春。

 人生で初めてラブコメの波動を感じた瞬間だった。




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ぼっちの俺がマッチングアプリでオタ友探してたら大学ミスコン1位の美少女とマッチングした件。 星野星野@5作品書籍化商業化 @seiyahoshino

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