ぼくの誓い
月見つむぎ
ぼくの誓い
ある日ぼくは神さまからお仕事をもらった。
「この子を笑顔にしてやるのがあなたの使命です」
ぼくは尻尾をぶんぶん振って、神さまの周りを走り回った。こんなちっぽけなぼくにだって、出来ることがあるんだと喜んだ。
すぐにその子に会いに行った。その日からぼくはその子とずっと一緒にいた。
ぼくはその子を笑顔にするために頑張った。何だってした。お手におかわり、伏せも待ても出来る。ボールだって取りに行ける。
その子はぼくのことを小さな手でたくさん撫でてくれた。撫でてくれたけれど、笑ってはくれなかった。
言葉は通じなくて、ぼくが冗談を言ってもその子は優しく撫でてくれるだけだった。
ぼくは頑張った。とても頑張った。でもその子は笑顔を見せてはくれなかった。
神さまからもらったお仕事が、こんなに難しいなんて思いもしていなかった。
二人で歩いている途中で、遂にぼくは苦しくなって、その子に唸って大声で吠えてしまった。
その子はびっくりしたみたいに固まって、次第に大きな目から水がぽろぽろとこぼれ落ちていった。
悲しい雰囲気が伝わった。その子は走ってぼくから離れていった。
ぼくは出来損ないだ。せっかくこんなちっぽけなぼくに神さまが作ってくれたお仕事もまともに出来ないなんて。
気付いたらその子は見えないくらい遠くまで行ってしまったようだった。ぼくはその子を探した。
探す途中で綺麗なお花を見つけた。その子みたいに小さくて真っ白なお花。
その子を見つけることは簡単だった。その子は道端にうずくまっていた。ぼくは怖がらせないように小さく鳴いた。
うつむいていたその子が顔を上げ、目と目が合った。その目は真っ赤になっていた。
ぼくはごめんねを一生懸命鳴いて伝えた。咥えていた途中で見つけた真っ白なお花を差し出した。
笑顔にならなくてもいいから、悲しみが消えて欲しかった。
急にぼくの視界からその子が見えなくなった。ふんわり、温かで、優しいお花の匂いに包まれた。ぼくはその子に抱きしめられていたのだと分かった。
小さな手がぼくを撫でる。そっと離れたその子はまた目から水がこぼれ落ちていて、けれど微笑んでいた。
悲しい気持ちはどこかへ飛んでいったみたいで、ぼくも嬉しくなって尻尾をぶんぶん振った。
ぼくのお仕事はまだまだ終わらない。ぼくの命が尽きるまで、ぼくがこの子をいつも笑顔にしてみせるって決めたんだ。
ぼくの誓い 月見つむぎ @tsukimi_tsumugi
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