名の残像と厨二病
藍空スピカ@FNW&NEON
NAME
朝起きたら、俺の名前が置き手紙を残して消えていた。
「俺っちはもっとカッコいい人に使われたいんで出て行きやすわ。」
…。
あーあ。めんどくさいことになった。
その日から、俺は「名無し」になった。
学校に行っても点呼されない。
出席簿のその行だけ、まるで最初から存在しなかったように空白になっている。
確かに俺はここにいる。
授業も受けてる。
なのに、誰も俺を見ない。
視線が俺の輪郭をすり抜けていく
確かに自分はいるはずなのに、誰もが自分を気にしていない。
俺は存在しない存在する人になった。
調べてみると、名前は独立した生物だったらしい。
へー知らなかった。
じゃぁ、自分に名前をつけに行こう。
俺は名前を探しに街へ出た。
道の端にあった雑草に「衂」が座っていた。
カッコいい字だと思ったが、読み方を調べたら「はなぢ」だった。
俺は鼻血にはなりたくない。
他の場所も探してみると、名前になれる文字らしきものがいくつか座っていた。
「鬱」「麤」「贓」「驫」……。
なんか、画数が多い。
どれも強そうだが、テストとかで書くのが大変そうだったからやめといた。
すると、道の向こうからスーツ姿の男が歩いてきた。
胸元の名札にはこう書かれていた。
『名付け庁』
男は俺を見て、こう言ってきた。
「……おや。あなた、名無しですね」
「はい。名前が逃げました」
「またですか。最近多いんですよ、名前の逃亡」
男はため息をつき、なんかパソコンだけど折りたためてタブレットっぽくもなるよくわからない機械を取り出した。
「一応確認しますが、逃げた名前の特徴は?」
「覚えてないけど、自意識過剰でした。」
「ああ、典型的なミエハリーですね。でしたら、ミエハリーなら前科持ちがほとんどですね。だから逃げ出したんですか。」
「前科?」
「はい。過去にも3回程度、持ち主を見捨てて逃げています」
……俺の名前、クズじゃん。
「では、仮の名前を発行します。今日からあなたは…」
男がなんかパソコンだけど折りたためてタブレットっぽくもなるよくわからない機械をなんかよくわからんタッチペンみたいな謎の機械で操作し、俺に向けて画面を見せた。
『候補名:①仮太郎 ②名無し丸 ③ 』
三つ目だけ、何も書かれていなかった。
「三つ目は?」
「空白です。自分で創造するタイプですね。大体の人が失敗しますが。」
空白。
ちょっとカッコいいな。
「……それ、ください」
「いいんですか? 空白は不安定ですよ。下手すると、字が暴走して変形し、一生厨二病な名前になってしまいますよ。
「大丈夫です。現役厨二病なんで。」
男は少しだけ笑った。
「では、発行します。今日からあなたの名前は――」
タブレットが光り、空白の欄に文字が浮かび上がった。
『____』
「……白紙じゃん」
「はい。あなたが最初の一画を入れるまで、名前は完成しません」
白紙の名前。
自分で創造する名前。
なんか、悪くない。
そう思った瞬間だった。
背後から声がした。
「あらら。何してんのん天丼?」
振り返ると、
逃げたはずの俺の名前が、腕を組んで立っていた。
いや、正確には名前には腕はない。
でも腕を組んでいた。
「お前、どうしてここにいるんだよ。」
「決まってんじゃん。新しい宿主探し。」
「で、そっちは?」
「新しい名前を決めてんだよ。」
「お、いいじゃねーかぁ。ちょっと俺っちに手伝わせてくれよぉ!」
「おい!これは俺が決めるんだ!」
「ちょちょいのちょいっと!」
俺の元名前が、名前を決めてしまった。
「どうだ!田中一郎!いいだろ?」
「なんか普通な名前だな。」
…。
すると!田中一郎の文字が、変形を始めた。
「ありゃりゃ!?俺っちの決めたお前の名前が…。。。」
「まさか…。」
「名前が決まっちまった…。」
その日から、俺の名前は「
まぁ、仕方ない。
これからは、この名前と歩むことにしよう。
「ちなみに、俺っちは超イケメンなハムスターの名前になれたぜ〜!」
…は?
THE END!!!
名の残像と厨二病 藍空スピカ@FNW&NEON @_Lapis-Lazuli
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